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デジタルシネマカメラ『VENICE 2』を語る(前編)

ソニー広報部のYIです。一般にはあまり知られていませんが、ソニーの業務用カメラは、業界では知る人ぞ知る製品として、プロの様々な映像制作現場を支えています。今回はその中でも映画撮影で使われるデジタルシネマカメラの最新機種『VENICE 2』にフォーカス。前編では歴史や名前の由来、実際にこのカメラで撮影されたコンテンツなどを紹介します。
後編では『VENICE 2』の開発や販売に携わるメンバーに直撃インタビュー!込められた熱い思いをお伝えしたいと思います。


システムカメラとシネマカメラ

皆さんは「ソニーのカメラ」と聞いて、何を思い浮かべますか?
一般的に量販店などで見る機会の多いミラーレス一眼カメラ「α™(Alpha™)」だけでなく、ソニーは業務用のカメラやプロフェッショナル機器を多数開発しています。その製品はハリウッドなどのシネマ撮影から世界中の放送局まで、幅広い映像制作の現場で使用されています。

放送局で使われているのは「システムカメラ」 (System camera)。たくさんのアクセサリーがつくのでその名前がついています。
ソニーと放送業界は1950年代から関わりがあり、放送局の街頭録音で使用されたゼンマイ式ショルダー型テープレコーダーの開発からその歴史が始まっています。

TVの放送では高画質はもちろん、放送事故やミスの許されない​正確なオペレーションが求められます。
ソニーの放送業務用機器は、高い品質と実績で業界のスタンダードとして、日本だけでも300局以上、さらには世界中の放送局でお使いいただいています。

システムカメラ『HDC-F5500』 
これぞ、業務用カメラ!と言いたくなる機能美です

そして、映画制作で使われるのは「シネマカメラ」(Cinema Camera)。
放送業務用とは全く別の種類のカメラです。
ソニーでは映画制作用のカメラを「CineAlta(シネアルタ)」というサブブランド名で2000年から展開しています。

映画の"Cinema"とイタリア語で「最高」を意味する"Alta"から名付けられました

そこからマイルストーンとなる複数のカメラの発売を経て、2018年にデジタルシネマカメラ『VENICE』を発売し、それに続く『VENICE 2』を昨年11月に発表しました。

現在、ソニーではシネマのような印象的な表現を特長とする映像制作向けカメラ群を「Cinema Line」(シネマライン)と称して幅広く展開しており、その最高峰が『VENICE 2』です。

左から『VENICE 2』『VENICE』『FX9』『FX6』『FX3』

モデル名『VENICE 2』の秘密

「VENICEってイタリアの地名ですか?」とよく質問をいただきます。
先の『HDC-F5500』にあるように、従来の業務用カメラではモデル名に数字や文字列の組み合わせが使われてきており、とても珍しいからです。

『VENICE』の由来はカリフォルニア州ロサンゼルス西部のVenice という地名です。映像制作の世界的中心地、ハリウッドがある西海岸で活躍するカメラとなることを期待し、お客様に親しみを持って呼んでもらえるようにという想いをこめて名づけられました。また多くの映画作品が撮影されたイタリアのベネチアを参考にして作られた街という点で、映画と深くゆかりがある名前というのも決め手でした。

さまざまな作品の舞台となってきたVenice

実は発表の直前まで別の名前が考えられていましたが、当時のプロジェクト統括者が「覚えやすく、お客様に愛される名前にしよう」という声をあげてこのモデル名に決まりました。

発表当時、地名を冠したモデル名は注目を集め、記事やお客様からも「こうした名前を待っていた!」など好意的な評価を多数いただきました。
発表日当日のイベント中からお客様が名前を呼んでいて、あっという間に浸透していったのを今でもよく覚えています。
そして、この名前を引き継いでさらに愛着を持ってもらえれば、ということで、続く『VENICE 2』が生まれました。

桁違いのスケール感で制作されるデモリール

シネマカメラではどんな画(え)が撮れるのか?というのが、お客様の最大の関心事です。実機で撮影したデモ映像(社内ではdemo reel=デモリールと呼ばれます)が、いわば名刺代わり。映画撮影マーケットを狙う最上位、フラッグシップモデルである『VENICE 2』ではハリウッドおよび世界のトップクラスの映画制作者に納得いただける最上級のデモリールが必要でした。

そこで、これまでソニーで映画ビジネスに長く携わってきた人脈をフル活用し、「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」などの作品で知られる英国/全米撮影監督協会(BSC/ASC)の撮影監督 ロブ・ハーディ氏に制作を依頼。デモリールという枠を遥かに超える、短編映画のような「VENEZIA」が完成しました。

「VENEZIA」はイギリスで撮影され、繊細な映像美を見せる内容ですが、全く作風の異なるデモリールもあります。
こちらはジョージ・R・R・マーティン著のファンタジー小説シリーズ「氷と炎の歌」を原作としたテレビドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」(Game of Thrones)などの作品で知られる全米/カナダ撮影監督協会(ASC/CSC)ロバート・マクラクラン撮影監督によるドキュメンタリー調。ダイナミックな空撮も含めて、アメリカやカナダの大自然をとらえた内容となっています。
このように監督による作風の違いが顕著に表れているのも興味深い点です。

こうして満を持して発表した『VENICE 2』がいよいよ近く発売します。
後編では開発者のインタビューを中心にご紹介します。どうぞお楽しみに!


2022.4.8 追記:後編を公開しました!

執筆:広報部YI



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