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ココアの思い出

子どもの頃、大叔母が連れて行ってくれた高級な感じの喫茶店で
ココアを頼んだ時、ただ普通にココアがやってくると思ったら、
それまで見たことないようなキレイな花模様のカップに入れられて
生クリームまでのっていて、すごくびっくりしたのを憶えている。

今は家でも外でもコーヒーを飲むことが多くて、
カフェに入ったものの、コーヒーでも紅茶の気分でもないな…という時、何となくあれば選ぶような遠い存在になっていた。

けれどつい先日、モーニングが始まったばかりの開店早々の喫茶店で差し出されたメニューから、選んだドリンクはココアだった。

そしてやって来たそれは、大きなカップの内と外をまたぐかのように堂々と生クリームが盛られていた。
まだ何となく眠いからか、そのインパクトに驚きながらもぼんやりと、
その豊か過ぎる様子を見つめていた。

こぼれぬようにクリームをスプーンで大事にすくって味わう。
その嬉しさの感覚は、まるで子どもの頃の自分みたいだった。
ココアも熱々で、飲んでもまだ安心な程にたっぷりで、
味もまろやかで優しくて、なんてしあわせなんだよ今……

「わぁ〜💖生クリーム、たっぷり!」

そして熱いうちに大事に飲み終えてから、改めてしみじみ思い返した。
今朝ここへ寄る前に、ずっと前から気になっていた古墳へ行き、頂上に上って、そこから見た景色のこと。

どこまでも広がる海と、グレーに覆われた大きな空。
ぽつぽつと、ほんの僅か雨が降ってみたり、ほんの瞬間だけ光が差し込んだりと気まぐれな天気。
あまりにも雄大な景色を目の前に、一人で立っているのがとても心細かったこと。

このココアで、より味わい深い朝になった。

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