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食の風景「おせち2024」

 今年度が終わる前に、滑り込みで今年のお正月の食の風景、掲載させて頂きます。

 私の「いつもと違う事がしてみたい」という地味な心の抵抗が、例年通り段取りを組み、台所へ詰めておせちや年越しそばの仕込みをする。という気分を持ち上げません。しかし、諸々を経て、作ることにしました。

 作るなら、「おいしい」ものを――今年頂いた美味しいごはんの数々を思い出します。伺ったお店のお台所から生まれた逸品の数々。その手仕事に私は感銘を受けました。丁寧な手仕事。カウンターの場合は客席からも眺められます。お座敷の場合は想像します。出されたお料理を見れば一目瞭然です。目に美しく、全てがおいしい。

 あんな風に心を込めて作ろう。今の自分にできる「おせち」を

 エプロンを身に付け、お料理、開始です。

 今年は乾物を水に浸すところから。干し椎茸と昆布。いい出汁が出るぞ・・・

 レンコンの土をキレイに落として包丁で皮むき、好きなサイズに切る。状態の良いレンコンが手に入ったので、それだけで煮しめは上手くいく予感がしています。

 板こんにゃくは一枚分。スライスして、真ん中に切り込みを入れ、くるっと返して飾りこんにゃくの出来上がり。母に教わった簡単かつ見栄えのいいこんにゃくです。

 煮しめを作る鍋の隣では、年越しそばと雑煮の出汁となる鍋が大きな口を開けています。野菜の切れ端はそちらへ次々と放り込まれてゆきます。これは今年初の試み。ラーメンスープと同じ発想です。野菜が多いと良い出汁がでるものですから。
 このかつら剥き大根の皮もしかり。きれいな冬大根でしょう。捨てる処はありません。なので皮も気持ち厚めに剥いています。刻んで蕎麦出汁へ入れます。

 一年の包丁の成長が試される紅白なますです。私事ですが昨年引っ越しまして、お台所は以前の三分の一程のサイズになりました。こじんまりとした処で包丁を握っています。少しずつ慣れます。成長・・・研いで始めたので及第点とします。自分に優しい。美味しければ良いのです。

 人参、いつもは皮ごと使いますが、今日は皮は出汁の鍋へ向かいました。あれに見えるは職場で役目を終えた柚子ではありませんか。

 今年も紅白なます、柚子風味でございます。酢、砂糖、塩。以上です。

 お煮しめに欠かせない緑色。絹さやを湯がいて半分にカット。いい色ですね~

 戻した板昆布と干し椎茸、あ、竹の子もちゃんと入ってますね。但し人気の里芋さん、今年から作れなくなりましたので、今回は欠番です。お店で美味しそうなの見つけたら、また料理しよう。
 はい、お煮しめ、完成です。醤油味です。優しいお色になりました。香りも良し。冷ましてタッパーに入れ、冷蔵庫へ。

 紅白かまぼこです。私は事前に切って後は都度盛り付けるだけにしておきます。

 鉄のフライパンで出汁巻き玉子を作ります。出汁と塩のシンプルな味付けです。

 厚焼き玉子用のフライパンではないので、いつも鯉のぼり型になります。朝お弁当を作る事が無くなると、目玉焼きやスクランブルエッグにしがちです。久々に巻いたので中が心配です。

ああ、ちょっとスカスカしてる・・・

 気を取り直して鴨のローストをスライス。これはお歳暮として人へ送ったものを味見の為に家へも注文しておいたのです。おせちの仲間にぴったりです。


 こちらはお歳暮で頂いたアワビにございます。高級食材です。おせちの仲間にぴったりです。

 
 さて蕎麦出汁を仕上げて参ります。ここに美味しい山形牛のスライスがあります。あまりにも美味しかったので今年の蕎麦出汁にも使おうと思い、200グラム程冷凍保存しておいたのです。生の状態で見ても美味しそうに見えます。私食いしん坊なので。右はかまぼこと刺身用のわかめです。盛り付けに使います。

 今まで見て来た蕎麦出汁とは違う見た目。ですが今までで一番味わい深い香りが漂ってきます。野菜くずは偉大なのです。そして山形牛は大変美味しいのです。他に下仁田ネギなど入っています。

 大晦日、夜。
 今年もなんだかんだと言いながら、ここまで無事辿り着きました。せっかくなので小さな野菜たちも盛り付けて、完成です。蕎麦には七味。

「いただきます」

 これは・・・なんということでしょう。過去最高の年越しそばを作ってしまったようです。美味しい食材の数々に感謝感激の大晦日でした。


 開けて元日。
 おせちの盛り付けを済ませ、大量の洗濯物を取り込み終えて部屋に入ったその時、遠くから地鳴り――長く揺れました。

仏壇の傍に置くおせち。母の箸。

 日暮れが迫る中、テレビ画面から得られる情報に耳を傾けつつ、近しい人たちの安否確認をして、おせちを頂きました。


こちらは朝のお雑煮


こちらはぜんざい 好物なので隙あらば小豆を炊いて食します


別の日のおせち 少しだけラインナップが変わりました


 何が起こるか分からない人生。いつ終わるとも知れない命。それならば、生かされている間は、前を向いて生きていかなくては。

 そんな年明けを過ごした令和六年の幕開けでした。

 元気に生きてゆくには「食」が欠かせません。美味しいごはんを食べましょう、願わくばすべての人々に、美味しいごはんが届けられますように。今一度原点に立ち返って、自分に何ができるかを考えている、そんな年度末でございます。
 御挨拶が遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます

                        令和六年 いち


                      文と料理と写真・いち

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