2009年のことだ。映画監督を目指して浪人中だった僕は、中野ブロードウェイにあるフジヤエービックで25万円の業務用ビデオカメラを買った。やたらでかくて重くてわけのわからないボタンがいっぱい付いていて。一目惚れだった。買ってから結構使い勝手が悪いことに気がついたけど、しっかり愛して10年くらい使って、購入金額以上の仕事を生み出した僕の相棒だ。

カメラを買って家に帰ると母親から「あそこは面白いところよね。私も昔よく行ったわよ」と言われた。僕にとっては業務用カメラ屋さんがある場所だったが、そうかそうか、そういうところなのかと知ったのはもう少しあとの話だ。ちなみに、フウロも同時期に中野ブロードウェイに行っていたという。レトロおもちゃとかフィギュアを求めて。フウロはもうちょっとディープな人だった。付き合いはじめのころにもらったリアルなクラゲのガチャポン。あれも中野ブロードウェイからの贈り物だ。

さてここはタイ。なのだが、僕とフウロの目の前に忽然と姿を現した建物は、あきらかに中野ブロードウェイの空気感を携えていた。怪しい雰囲気。スーパーマンが見つめる入り口からは、ちょっとイケてない若者が次々と吸い込まれていく。となりに祭壇。すごい世界観。