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「淡い青春小説?…だったはずなのにまさかの展開~『人魚姫の椅子』~」【YA⑧】

            『人魚姫の椅子』 森 晶麿 著 (早川書房)
                          2017.1.30読了

瀬戸内海に面する小さな田舎町での話。
海岸で早朝、海を見ながら小説の構想を練るのが日課の高校生・杏。
そしてそこへよく自転車でやってきては、杏と話をして、杏の物語の内容を聞いたりしている同級生の彗斗(すいと)。
 
彗斗は椅子職人の息子で、自分でもこれまでにないオリジナルの椅子を作るべく修行をしています。
杏は何気なくいっしょに朝を楽しんでいる彗斗を、いつの間にか大切な存在になっているのに初めは気づいていませんでした。
 
そんな特別なことがない日常を打ち破ったのが、杏の親友で誰が見ても美しくて人気者の翠(みどり)から、ラブレターの代筆を頼まれたことでした。
かわいい翠のことを頭のなかに描きながら、翠らしい、そして極上の短い言葉で綴ったラブレターの相手が、まさか彗斗だったとは…!
 

ここまでだとよくある青春小説なのですが、この本の内容を、そして著者のこれまでの作品を事前にまったく知らない私は、まさかこれから犯罪ミステリーに発展していくとは予想だにしなかったので、ほどよく裏切られた格好です。
(でもこの本の出版社が、ミステリーを多く出している早川書房だということを念頭に置いておくべきでしたね)
 
杏の書く物語はある種独特のファンタジーであるため、理解するのに時間がかかります。
しかしその内容と実際に起きてしまう事件とリンクしてしまうため、杏も後半には危うく犯罪に巻き込まれてしまいそうになります。
いや、その前に杏の書いたラブレターと杏のとった咄嗟の行動が、事件を複雑にしてしまう(しかし、これは最後にはさほど関係ないと打ち消されるのですが)ため、杏を非常に悩ませる材料となります。
 
 
それにしても、最後は私があまり得意としない残虐性と異常性が招く事件内容だったため、気持ちが悪く、どんなに主人公たちに被害がなくても、すっきりしないエンディングとなってしまいました。(あくまでも私の感想です、すみません)
(犯人はすぐに予想できてしまいますが、途中、あれ?予想に反するのか??と、自分の推理に自信が持てなくなるような書き方は、ちょっとヤラれたなという感じでしょうか。)


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