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curry menu archive 16 シンガポールカレー

16皿目はシンガポールカレーです。

シンガポールには、ヘッドフィッシュカレーという魚の頭を使ったカレーがあるようです。

ヨシフジはこれを再現すべく市場へと向かいましたが、魚の頭のみでは販売していなかったために断念。
代わりに真鯛を買いつけました。

用意された食材からはシンガポールというよりイタリアやフランスの香りが漂います。

アクアパッツァなんかで白ワインをきゅっといきたい雰囲気です。

今回のシンガポールカレーはシンガポールの歴史や文化の要素は全く扱わず、フィッシュカレーという要素だけを抽出して、あとは全てアドリブで創作したそうです。

『ゆりねとフライドフィッシュのカシューナッツカレー、豆カレー、アップルミントとバジルの梅ミンチ、ぬたライタ、山芋のマスタードオイル漬け、じゃがいもとそら豆のサブジ。』

当時のインスタに書かれていたメニューです。

写真下部の棒状のものが真鯛のフライドフィッシュです。
真鯛を使っているのに、メニューに名前がありません。それならば安価な別の何かでよかったような気がしますが意図は不明です。

刺身でもいける天然物の真鯛を贅沢に切ってカリッと揚げています。
このカレー私も食べましたが、フライドタイ、激うまでした。
新鮮なタイをカリッと揚げても怒られない時代が来たんだ、という謎の感動がありました。

フライドフィッシュといえばかつてシンガポールを植民地としていたイギリスの名物です。
ゆりねとカシューナッツを使うことで食感豊かなカレーに仕上げました。安定の豆カレー(ダルカレー)とセットでカレーは2種です。

アップルミントとバジルの梅ミンチは、フレッシュミントと梅で爽やかなひき肉料理に。カレーとの相性は抜群でした。

ぬたライタは、酒飲みにはお馴染みのぬた(わけぎの酢味噌和え)とヨーグルトを合わせたものです。
ライタを知らない人は、うげえ、と思うかもしれませんが、酢味噌とヨーグルトのフュージョンはスマッシュヒットでした。

山芋のマスタードオイル漬けはあえてごろっと山芋をカットすることでいもいもしさを残しつつマスタードでピリッと仕上げました。
izonのカレーは基本的に辛くないので、ワンポイントの辛味だったのだろうと思います。

じゃがいもとそら豆のサブジはおふくろの味という感じのスパイス入りの素朴なマッシュポテトです。
日本の定食でいうと、おからとか芋の煮っころがしのようなポジションでしょうか。

わかめとローズリーフとブルーベリーを合わせた何かを作ったようですが、これには珍しく失敗しています。
めちゃくちゃ不味かったということで当然お客さんには出せず、ブルーベリーのみが単独でサブジの横に添えられています。
ヨシフジのフレッシュフルーツにこだわる執念が感じられます。

一通り紹介してきましたが、シンガポールカレーの裏テーマは、「和定食のシンガポール解釈」のような気がしてきました。

シンガポールは第二次世界大戦中、日本軍が占領していました。
占領後、日本軍が太平洋へ進軍する要衝として機能した(SFC提督の決断調べ)という風に記憶しています。
終戦後、シンガポールはイギリスへ返還されました。
イギリス⇒日本⇒イギリスの順番です。

殿様が毎日食べた真鯛を使ったフライドフィッシュは日本風イギリス料理です。偶然の符丁だと思いますが、シンガポールの歴史と関係がありました。

『お頭つきのヘッドフィッシュカレーをやろうとしたけど、お頭がなかったから仕方なく揚げた(名無し)』というストーリーに、アドルフ=アイヒマンの裁判を記録したハンナ・アーレントのいう凡庸な悪を想起するのは私だけでしょうか。

坂本慎太郎さんの『未来の子守歌』という曲の中で歌われている『恐ろしい仕組み』啓発カレーなのではないか、とか、仕方がないので真鯛を揚げるのは、童謡『やぎさんゆうびん』の、本能に抗えず手紙を食べてしまう悲哀のループカレーなのではないか、とか思ってしまうわけですが、こんなことを考え続けると頭がパンクしますのでそろそろ寝ます。

シンガポールカレーを食べた記憶のある方からのコメント、ご連絡をお待ちしております。
リアルな感想が発掘できれば随時追記予定です。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
つづく。

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