見出し画像

100分間に削ぎ落されて際立つ、寡黙なライアン・ゴズリングの「セクシーさ」と「狂気」 【ドライヴ】 ┃ #名画座スプークス

皆様、新年あけましておめでとうございます。
名画座スプークス従業員の伊藤でございます。

本年も、皆様と一緒に素敵な映画ライフを過ごせればと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。 

 #名画座スプークス とは?

幅広いジャンルの動画見放題や、コアファン向けの月単位の月額商品、単品商品などを提供している動画配信サービス、SPOOX

そんなSPOOXで配信されているコンテンツを、SPOOX担当社員であり大の映画オタクでもある社員・伊藤が、「名画座 スプークス」の従業員になりきって、熱量高め・クセ強めに語ります。

※あくまで独り言なので、独断と偏見は悪しからず。

それでは、名画座スプークスに足を踏み入れてみましょう。



2023年、最初にお勧めさせて頂く作品は、ライアン・ゴズリング主演「ドライヴ」です。

主人公ライアン・ゴズリングは、昼は整備工場でメカニックや映画のスタントドライバー、夜は卓越したドライビングテクニックで強盗の逃走を手助けする逃がし屋と2つの顔を持っています。
(…数か月前にも、同じような設定の「ベイビー・ドライバー」のレビューを書きました。この「ドライヴ」、前情報無しに観てこの内容でしたので、アタシ、深層心理で「逃がし屋」なるものになりたがっているのか不安な夜を過ごし中です) 

そんなライアン演じるドライバーが、ある日同じアパートに住む人妻と知り合いやがて恋に落ちるのですが、間もなくして服役していた人妻の夫が釈放されてから、物語は望まぬ先へ進んでいく―…そして最終的には暴力強めのサスペンス方向に舵を切っていく…というのが大まかなあらすじです。 

さてさて、主演のライアン・ゴズリングと言えば、「ら・ら・ぽーと」…失礼、「ラ・ラ・ランド」が近年は印象強いと思いますが、「ナイスガイズ!」の様な少しチャラいアクションコメディーも出来る万能型の俳優です。
私としては2022年、昨年のアクション映画「グレイマン」がここ数年で見たアクション映画の中では抜群に面白かったです。
今回の「ドライヴ」と並び「グレイマン」も寡黙な男として描かれており、いちいちカッコよかったです!

ちなみに、アクション傑作「グレイマン」の話をもう少しさせていただきますと、ライアン・ゴズリング演じる凄腕エージェントであるシエラ・シックスの大切な人が敵に捕まってしまうシーンがあって。
やっとのこさ助け出しに、捕まっている部屋のドアを開けるんです。
その時ドアを開けてオシャレでカッコいい対応をするんですが、このシーンは何度も見入りましたね。皆さんなら、この「オシャレでカッコいい」を、どんな台詞や行動で表現しますか? 

自分なら 、

まずはドアを開けて「パーティー会場はこちら?」と一言。…これは緊迫したシーンの中で「パーティ会場」というワードを使うことでオシャレにふるまう…非常に分かりやすい緊張と緩和の手法ですね。

そして、ドアを開けて「バカンス用の水着なんだけど、試着はこちらでいいかな?」とターゲットに近づく…とこのように、
ウイットでセクシーな、そしてちょっぴりいたずらっ子的……だと伊藤的には自負している台詞で、スマートに助け出すと思います(笑)

 

が、しかし、
ライアン・ゴズリングは違います!!!!

 

人質の部屋のドアが、ガチャと開くんです。
何を言うの?何を言うの~~~!?
静かに入ってきたライアンは、部屋の中に視線をゆっくりとおくります。

何を言うの??ねぇ、何なの~~~!??

 …

 ……右目のウィンク一撃。そして無言。

 ビビビビっ。
電気が走りました。なんてカッコいいんだ!!!!淡々と寡黙にミッションをこなし、その中で何度も死線 を潜り抜けてからの、ファイト一発、ウィンク一発!
自分が同じ立場なら、どんなにスマートな台詞で助け出せたとしても、その後つらつらと、ここまでどれだけ大変だったかを、恩着せがましく語ります(笑) 
しかしその一連の所作を、流れる様にクールに決めるライアン。


話が長くなりましたが、その色気をこの「ドライヴ」も感じる事が出来ます。 

寡黙で淡々と「逃がし屋」というドライビングテクニックをこなします。序盤、クールでセクシーなライアンの日々をザっと紹介すると、
人妻であるキャリー・マリガンと出会い、そして惹かれあうシークエンスに向かいます。 
この序盤の一連の流れの中で、「グレイマン」の先述のシーン同様、ライアンはほぼセリフを語らず、表情、視線だけで表現するんです。

カッコよくセクシーな漢の要素の1つに、「ミステリアス」さがあると思いますが、多くを語らず所作で魅了するのは、正にミステリアス!!!! 

そしてこの作品、100分という尺で無駄なくコンパクトなんです。状況説明や心情の変化など、なるべく余計なものは削ぎつつ成立させていきます。 

…とはいえ、二人が接近する様相は削ぎすぎじゃないか?どんだけフォーリンラブ??と鑑賞中のスマホに突っ込みまくりましたが(笑)、それでも許容です。
何故なら、自分みたいな画面にうるさくものを言うタイプでもウットリとしちゃうような、夕日と音楽のドライヴシーン
ここがもの凄く美しくて、あっという間の恋仲状況も気にならなくなります。画作りと音楽のチョイス、監督のセンスを堪能できます。  

しかしここから、キャリーの人妻で、マッチョなアウトロー役のオスカー・アイザックが出所してから、物語は大きく動いていきます。
元が、「逃がし屋」。犯罪を背にした主人公ですから、破滅的なストーリーへ向かう事は誰でも予知できると思います。
 

が、この作品の凄みはその語り方 です。
犯罪スリラーシークエンスに進んだ瞬間、途端に緊張感のあるグロ表現へと変わります。
グロテスクな表現は賛否があると思います。人によっては何故あんな表現をするの?と思う方も多いでしょう。結果、それが必要かどうか、日課の半身浴を40分しながら考えたんですが、分かりませんでした。

ただ、あそこで作品のトーンが変わった事で、私にとってこの映画が印象的なものになったのは確かです。そして、美しいドライブシーンがより鮮明になった事も確かです。

あの、寡黙で決めるとこはきめる、セクシーでクールなライアンすらもそのグロテスクなトーンの中で内なる狂気を開花させます
短い表現の中で二面性を見せられた事で、最初は視聴していて戸惑ってしまうかも知れません。しかし、そうする事で、善悪だけない、「人の複雑な感情」を表現出来ているんだと思います。 



さて鑑賞後、作家性の強い作品だったなと思い、監督を調べました。
デンマークの監督「ニコラス・ウィンディング・レフン」。
もう少し調べてみるとこの作品は、ただのアクション映画にはしたくなく、登場人物の内面を丁寧に描きたいという心情の元、ライアン自らが監督にオファーをして作り上げた作品という事でした。 
そして、監督もカンヌ国際映画祭にて、この作品で監督賞を獲得しています。納得の逸話と受賞です。
どことなく北野映画の雰囲気を感じるところもありました。 


「優しさ」と「狂気」―。
 

これを、短い尺で映像的にも、心情的にも綺麗に纏めた良質な作品でした!

本作品はアカデミー賞にはノミネートされなかったのですが、その事で「ナイスガイズ!」で共演したラッセル・クロウが、なんでじゃ!とぷりぷりご立腹だった様で、それも何となく分かります。 

皆さんも視聴して頂き、ラッセル・クロウの気持ちになって頂けばと思います!(笑) 

「ドライヴ」は、SPOOXにて絶賛配信中です!

■前回までの名画座スプークスはこちら

■SPOOXで配信されているそのほかの洋画作品もぜひチェックしてみてくださいね!


#名画座スプークス


この記事が参加している募集

おすすめ名作映画

映画感想文

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!