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書籍『直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足』

ジェレミー・デシルヴァ (著) 
赤根 洋子 (翻訳)
出版社 文藝春秋(2022/08発売)‏
単行本
440 ページ


内容説明

 人類は地面に手をついて歩く共通祖先からチンパンジーと分かれ、二足歩行になった…だが今、その定説を覆す証拠が続々と見つかり、人類史のイメージは大きく変わろうとしている。なぜ人間だけが直立二足歩行動物として生き延びたのか。気鋭の「足首専門家」人類学者が、古人類学のレジェンドから現代人の歩き方まで、研究現場を訪ね歩いてたどり着いた、「二本足が人間に人間性をもたらした」真実とは?生き生きとした筆致で新鮮な驚きを次々に与える、科学という営みの魅力に満ちたノンフィクション!

紀伊國屋書店webサイトより

目次

第一部 二足歩行の起源
 第一章 人間の歩き方
 第二章 Tレックスとカロライナの虐殺者と最初の二足歩行動物
 第三章 「人類が直立したわけ」と二足歩行に関するその他の「なぜなぜ物語」
 第四章 ルーシーの祖先
 第五章 アルディとドナウ川の神

第二部 人間の特徴
 第六章 太古の足跡
 第七章 一マイル歩く方法は一つではない
 第八章 広がるホミニン
 第九章 中つ国への移住

第三部 人生の歩み
 第十章 最初の一歩
 第十一章 出産と二足歩行
 第十二章 歩き方はみな違う
 第十三章 運動がつくりだす長寿物質
 第十四章 歩けば脳が働きだす
 第十五章 ダチョウの足と人工膝関節
 結論 共感するサル

解説「定説をもくつがえす明るい語り口」更科功

本書「目次」より抜粋


レビュー

 第一部で、人類の系統における直立二足歩行の起源を、化石記録に基づいて考察する。第二部で、人類という種を定義づける諸々の変化(脳の巨大化、子育て法の変化など)が二足歩行によって初めて可能になったこと、人類がそれらの変化のおかげで誕生の地アフリカから地球全体へと広がっていったことを説明する。第三部で、効率的な二足歩行のために必要となった解剖学的変化が現代人の生活(赤ん坊の最初の一歩から、加齢による間接痛まで)に与えた影響を考察する。結論部で、四足歩行と比較して二足歩行には不利な点が数多あるにもかかわらず、なぜ人類はそれを乗り越えて生き延び、反映することが出来たのかを検証する。

序論より抜粋

 本書368~422頁は「注」の解説となっており、実質本文は350頁程となります。
 これは著者が、人間を人間たらしめている「源(起源)」は「直立二足歩行」にあり「直立二足歩行」こそ「人類の証明」であるとし、そのことを理解するために必要となるのは「自然界への問題駆動型にしてエビデンスベースのアプローチ法、つまり、(中略) 【科学】である」という立場を選択したことに起因します。
 既存の科学的データ(主に「骨」に関するデータ)を出来る限り網羅、利用しつつ考察を進めてゆく手順を踏むわけですけれども、それにより読者は著者と共に「人類の起源」を探ることとなるため、なかなかにスリリングな読書体験をすることとなります(未解決事件の調査・捜査は楽しい)。
 
 各章冒頭の引用文も知的、且つ読者の想像力を掻き立て、記し出すとキリのないくらい面白い情報満載です。
 また個人的には「序論」にて語られる、「二足歩行する他の動物を自分たちの仲間と見なす人間の反応に関する情報」がくさびとなり、読了するまで、人間の持つ単純な反応(動物的な反応)に対する興味が広がり続けました。

 微生物の類から、菌類、植物、昆虫、爬虫類、魚類、鳥類、哺乳類、変な哺乳類(人間)について網羅的に調べていると、変な哺乳類の(どうやら二足歩行に起因するらしい)「脆弱性」と「無駄」を嫌というほど思い知らされるに至りますけれども(自分の「notoの記事」はまさにそれでしかない)、しかしその生物としての「脆弱性」と「無駄」こそが、変な哺乳類に大きな脳と繁栄(というか「必要以上の増殖」と「破滅への暴走」)をもたらした最大の特徴でもあることを考えると、なんとも「感慨深いなぁ」と思ってしまうのでした。
 
 人類のこれまでの歩みをちょっと乱暴に要約するなら、
 「直立二足歩行を何らかの要因により意図せずに選択 → 身体的な構造及び能力が劣化し協力しなければ生き残れなくなる → 必然的に助け合うこととなり脳が発達。身体的な脆弱性を補うための道具の制作と使用、農耕と定住、自分たちに脅威をもたらす自然の破壊と自分たちに都合の良い(安全を確保可能な)巣作り、および拡大(簡易の住居~都市建設へ) → しかし三層構造となった脳の深部(脳幹と基底核)、所謂いわゆる「本能をつかさどる」部分を自らの意思(大脳新皮質)により掌握することは叶わず、それぞれの個体の欲望を満たすために仲良く協力しながら破滅へと向かって元気に暴走中」
 といったところでしょうか。
 ※極めて稀に、大脳新皮質を最大限に活用し自然の一部として慎ましく生きることの出来る人々も(奇跡のように)存在します
 
 「直立二足歩行」を行動の旨とする哺乳類は人間のみであり、これほどまでに自然(地球=母体)を破壊しバランスを崩す動物は、人間のみ。
 であることを踏まえて考えるなら、この未解決事件「直立二足歩行の変な哺乳類暴走事件」の「闇」は、深い
 


 

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