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D2Cビジネスの落とし穴とは何か?P&G、スタバ事例研究

D2Cが主流だ。今後のD2Cプレーヤーのためにも、P&G流+スタバの事例で研究と考察を記録しておく。D2Cには課題や乗り越えるべき壁が多い。

特にスケールする際の注意点、店舗展開など、一見効率が悪そうなビジネスにも着手必要な場合もある。これを乗り越えれば果実も大きい。

まずはマーケティングに関して、P&Gマーケティングを研究する。

マーケティングの全て

マーケティングを学ぶならP&G。グローバル消費材でトップリーダーだ。

洗剤や化学品を、様々な価値観や、インダストリーに対して提供して収益を上げている。

P&G 流のPurpose Driven Marketing

Purpose Driven Marketing を実施するためには、

What needs to be trure「何があればできるのか?」から考えて、資源不足を補う計画は何かを上層部へ訴え、資源獲得に動く

これをP&G内部で推進していくのがマーケターの役割。

「予算獲得からプロダクト作り」まで、幅広い役割で、部署横断的に活動し、採算にも関係するため重職だ。スタートアップなら当たり前に聞こえる話だが、グローバルな大企業ともなれば、プロセスの多さは計り知れない。

結果、P&Gのマーケティング出身者は希少人材になるのでしょう。

P&G 流のカスタマージャーニー

下記はマーケティングイベントMixerにて公開されたP&G流のマーケティングジャーニーの一連の流れ。

・顧客は何を必要としているかのニードジェネレーション
・初期での購買検討
・顧客を掴んで離さないエンゲージ
・店頭やカタログで評価検討(Battle to Win!)
・知人や友人からの SNS や口コミ
・実際の購買の瞬間を演出(Magic Moment!)
・プロダクト購入後の消費者との関係構築
・ユーザーのロイヤリティ向上

という一連のカスタマージャーニーがわかり易くなっている。永久保存版クラスのノウハウ。

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カスタマージャーニーを元にしたP&Gのマーケティング大全。マーケティングはこれで全て語れる。一枚でスッキリわかりやすい。

D2Cの課題:オフライン流通とブランドの両立

D2Cが昨今のトレンドだが、D2Cには限界もある。

ネットでの販売だけではリーチできる顧客層が限られるため、リアルなプロダクトを販売する企業は、リアル店舗やオフラインにも接触面を広げないと、販売台数やユーザーへのリーチが不足してしまう。

一方で、リーチを広げすぎて希少性が減ると、D2Cの肝であるブランド性やロイヤリティにも悪影響が出る。広げすぎも、狭すぎもダメという課題が残る。

コレがD2Cのジレンマだ。直販も良いが間接的な販売も時には必要だ。

D2Cはビジネスは狭すぎるとキャッシュアウト、広げすぎると価値毀損する。また、在庫管理、出荷、カスタマーサポートなど、売れていない時期は手弁当で配送可対応、それが限界になるとアウトソースの必要がある。

しかし、リソース不足で外注するも、中途半端な売れ行きだと採算が合わない問題が発生する。(そこまで売れれば良いのだが、そもそもここまで来れないのがほとんど)

当然、倉庫業務の3rd Partyは大量に捌くためにデザインされており、小ロット・多品種の少数配送には向いていない。これもD2Cのサプライチェーンの壁だ。(幾つか解決するサービスがあるがまだ高い、Robotizeを望むばかりだ)

この両立を補完し、採算が良く効率的なリアル店舗やオフラインサービスを提供するにはどうしたら良いのか?

P&Gのパンパース事例にヒントがある。可愛い顔して良い仕組みがあるのだ。

D2Cのリアル店舗進出における課題

ウェブを主流としたプロダクト販売事業では、

<メリット>
・顧客データ・口コミがダイレクトに事業者に届き
・商品やサービス改善に即繋げられる
<デメリット>
・数が出ない
・リーチに限界(顧客層、地域、世界展開 etc)

一方で、小売業や流通経由での商売だと、

<メリット>
・数が出る
・リーチが拡大(顧客層、地域、世界展開 etc)
<デメリット>
・利益率低下
・プライスコントロールに限界
・ブランド毀損の恐れ
・顧客データが取れない
・直販店舗出ないと顧客の声が直接聞こえない

となる。ここにD2C事業者のジレンマ「沢山売りたいけど、直販では限界有り問題」がある。そのため、安易に戦略なく流通や小売店舗展開はしてはいけないのだ。

この課題解決のためにP&Gではパンパースの商品パッケージの中に、個別のQRコードリンクを入れて、アプリでスキャンすると、顧客へポイント提供をする「ポイントプログラム」を提供。

・顧客のデータを直接取得
・顧客接点を強化

により、顧客へ直接アプローチを実現。既存流通を経由したB2C事業では、とても良い仕組みだ。課題はこのポイントシステムへのCVRをどう挙げていくかに尽きる。

この戦略の肝は店舗を経由して、数を出すこと、ユーザーとの接点は直接デジタルでエンゲージすることの両立にある。

このようなポイントシステムアプリ単独で開発できない会社も多いはずなので、どこかの企業がSaaS化してくれるのを待つばかりです。

一方で、店舗の広げ過ぎによるブランド提供の価値毀損、つまり、オフライン強化しすぎの落とし穴もある。

ここで、オフラインリアル店舗かつ、ブランド構築に奮闘したスタバの事例で考察する。

スターバックス再生物語

スタバも一時期、拡大路線に走った。

その結果、残念ながら、ブランドが崩れ、店舗を縮小。再建をCEO自らリーダーシップを発揮・実施した過去がある。

このスタバ再生物語からは、マクドナルドや、その辺の珈琲屋にならず、3rd Placeたるスターバックスブランドを維持することの重要性を学べる。

超絶勉強になるので、ブランド構築×マスアプローチが必要な人は読んでおくと良い。自分のスタバ体験の肌感とあうはずだ。

スタバのケースで注目すべきは、CEOシュルツの次の言葉だ。

“There is no secret sauce here. Anyone can do it.”
・組織としての仕組みを備え
・どこのお店でも高品質のコーヒー
・高品質のスタッフからのサービス体験

これがブランド構築の肝にある。

この裏側では競合を念頭においた、管理されながらも積極的な多店舗展開があり、クオリティコントロール徹底にある。

結局、消費財ブランドとは、単に良い物を売るだけではなく、それを広める必要がある。これにコミットしたのがシュルツのリーダーシップだ。

逆に言えば、良いアイデアを持ちながら、展開できずに、競合(特に大手の2番手戦略)に負けてしまう起業家も多い。

・基本的に1年以上継続勤務が「アルバイト採用の基本条件」
・フランチャイズをしない
・垂直統合を進める

など、「良い会社」は、一本筋が通っており、その筋に合わせて様々な仕組みを構築している。言われればその通り、No secret で、単純な話だ。だが、これを維持するから、凄い訳だ。

スケールと国際化の課題

また、スターバックスの国際化に際しての、大分古い事例だが、下記のような背景がある。

1999年に中国大陸に進出して以来、中国の40以上の都市で500店舗以上を展開し、オシャレなカフェとして中国人の生活にも浸透しているスターバックス。グローバルスタンダードとして世界中のスターバックス店舗で統一された内装、商品メニュー、サービス等を中国でも提供すると同時に、中国人の消費者心理に合うように中国流にカスタマイズしたサービスもうまくミックスし、成功を収めている(

中国では現地に併せて、ローカルティーなども販売された。

国際化の最も大きな課題は「何を」「どこまでローカライズ」し、自社のポリシーを貫くかが課題だ。

現地化比重を高めると、短期的な成長には寄与するが、中長期的に見たときに企業のアイデンティティを失う可能性もある。

スケールしていくには色々な課題と落とし穴がある訳だ。投資家は拡大をすぐに求めるが、慎重な仕組みかと組織が必要になる。

そして最重要なのは、自分たちが広めたい価値観・文化・一本通った筋は、何になるのかを徹底することにある。

スターバックスの場合は「強みを生かす」というよりも「強みを作り上げていく」プロセスに重要な示唆があったのではないか。

米国事例でもあるが「富裕層をターゲットとする」=「ブランドの確立」とはならない。単なるニッチで終わったり、あるいは競合模倣されるためだ。

その意味で、成長=多店舗展開、立地店舗が、ブランドの構築に寄与する場合もある。

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Consumer is BOSS

P&G流の製品開発・マーケティング開発でのキーワードは、「Consumer is BOSS」だ。上司よりも顧客の方が上ということが明文化されている。

改めて、口コミや顧客の声が重要になる。そういう意味でクラファンはコメントが直接届くこともあり、Product market fitにも、製品改善にも大いに役に立つ。

SNSでのテキストマイニングや、アンケートなどの定性情報だけでなく、店舗での消費者行動(カメラや導線)や、顧客の買い物カゴに何が同梱されたのかなど、ますますデータの時代になりそうだ。

まとめ

D2Cブランドでスケールをする際にはよくよく注意しないと、落とし穴があることがわかる。焦って拡大路線に走らず、仕組みと価値観を整えよう。

コレがマーケティングストラテジストの役割だ、一見何をしているのか分からない戦略家たちは、この重大な意思決定に寄与している。(だから邪険に扱わないでねw)

P&GのようなQRコードなどの仕組みの場合もあるし、スタバ直営店舗のような高品質高サービス体験のクオリティコントロールの組織化が重要になる場合もある。

自社のサービスやプロダクトに応用して、D2Cブランド体験を広げて、ニッチからいつの間にかメジャーになるブランドが、日本から沢山増えて欲しいという願いを込めて記載しました。


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