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短編小説 「森の中の宿命、赤と青の交錯」


日が暮れ始める中、森の奥深くで赤ずきんは晩ご飯の材料のキノコを探し続けていた。あれから8年「お使い事件」から時間が経ち、彼女はもう小さな少女ではなく、成長した20歳の大人の女性へと変わっていた。その美しい瞳にはかつての無邪気さの影が残る一方、強くたくましい意志も宿っていた。
とはいえ、この日の彼女には少しの焦りが見え隠れしていた。なぜなら、夜が来る前に必要なキノコをまだ手にしていなかったからだ。

日暮れとともに、森は更に静寂を深めていく中、赤ずきんが木々の間を縫って進むと、目の前に一筋の光が照らす場所に、美しい鮮やかな朱色のキノコがいくつもそびえ立っていた。
そのキノコの鮮やかな色合いに目を奪われ、思わず手を伸ばそうとしたその瞬間、「それは、毒キノコだ」という低く深い声が背後から響いた。

手を止めた彼女が振り返ると、木の影から現れたのは、背が高く毛深い、鍛え上げられた体を持つオオカミだった。その瞳は深い青で、赤ずきんの瞳をとらえて離さない。
言葉を話す青い瞳のオオカミ、彼女は直感で理解していた。

この森でのオオカミの存在は、あの「お使い事件」のオオカミ。赤ずきんの中で、過去の記憶がふとよみがえる。あの日、出会ったオオカミの瞳。その瞳は、今目の前にいるオオカミにどこか似た雰囲気を持っていた。

赤ずきんは息をのみ、しばらく彼の瞳を見つめた後、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「あなたは…」

オオカミは彼女の言葉を打ち消すように手を挙げ、「父が迷惑をかけた。本当にすまなかった…」と静かに告げた。
彼女の直感は正しかった。その青い瞳の中には、かつての出来事に、絡む繋がりが秘められていた。

オオカミはしばらくの沈黙の後、深々と頭を下げながら言葉を紡いだ。

「僕はウルンという名前。君と君のおばあさんに悲しい思いをさせたあのオオカミの息子です」

そして彼は、赤ずきんの手の方を指差し、警告の言葉を続けた。

「そのキノコ、炎獄茸という。美しい朱色の帽子をしているが、触れると皮膚がただれ、地獄のような激痛が走る毒キノコなんだ」

赤ずきんはキノコを指差すウルンの手に目をやり、彼の真剣な表情と言葉に、彼の警告が真実であることを感じ取った。

「ありがとう、ウルン。あなたが止めてくれなかったら、私はキノコに触れていたわ。教えてくれてありがとう」と彼女はやさしく微笑みながら言葉を返した。

赤ずきんの微笑みを受けて、ウルンの頬には照れくさいような紅潮が浮かんでいた。

「助けるのは当然…」と彼の言葉はどこか遠慮がちで、その眼差しは戸惑い混じりだった。彼女の純真な笑顔、輝く瞳、心のこもった感謝の言葉。

その一つ一つが、ウルンの心の中で深く響き、彼の感情を揺さぶりはじめていた。




時間を割いてくれて、ありがとうございました。

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