短編小説 「いつもの真っ赤なりんご飴」
夏の夜が花火の光で生き生きと彩られる中、俺は汗ばみながらも頭にタオルを巻いて、祭りの賑わいの中心でりんご飴の屋台を切り盛りしていた。この時期限定の営業、一個六百円という価格にもかかわらず、手に取るお客さんの列は絶え間なく続いている。
「いらっしゃいませ!熱い夏にぴったり、甘~いりんご飴、いかがですか?」
子供たちがキラキラとした目でりんご飴を指さし、わくわくしながら親にねだる姿は、見ているだけで心が温かくなる。しかし、そんな微笑ましい光景の裏で、俺の心には一つの大きな疑問が常に渦巻いている。
「ただ、飴をまとったりんごを、なんで六百円も出して買うんだろうな」
りんごを丁寧に飴でコーティングしながらも、俺はこの疑問を抱えて独り言を漏らす。
「世間では野菜の値段が高騰しているだの、ファストフードの値上げが話題になっているだのと騒いでいるのに、普段なら一個百円で手に入るりんごを、なぜ六百円も出して喜んで買うんだ?」
だが、そんな俺の心の声を知るよしもなく、お客さんたちは一つ一つのりんご飴を笑顔で選んでいく。中でも、お揃いの浴衣を着たカップルや、手をつなぎながら歩く家族連れは、その選択に特別な喜びを見出しているようだ。
「これ、毎年の夏祭りの楽しみなんですよね。子供の頃から変わらない味がいいんです」
そんな風に話すお客さんを見て、俺はふと考える。このりんご飴が、ただのりんごに飴をかけただけのものではなく、人々にとって特別な意味を持っているのかもしれない。それは、夏の一瞬の楽しみであり、大切な思い出の一部として、彼らの心に残っているのだろう。
「だがしかし、俺にはまだ理解できない。これはただのりんご飴だ」
そんなことを思いながら、俺はまた一つ、りんご飴を丁寧に作り上げ、次のお客さんに手渡した。
そんな言葉を聞くたび、俺は少し考えさせられる。
夜が更けるにつれて、屋台の灯りが周りを柔らかく照らし出す。俺はまた一つ、りんご飴を手に取り、熱い飴液にくぐらせる。
「いらっしゃいませ、りんご飴、まだありますよ!」
俺がりんご飴を売る理由は、ただ生計を立てるためだけだ。しかし、この小さな屋台が、誰かの大切な思い出作りに少しでも寄与していると思うと、なんだか……悪くないとも思える。
「ただのりんごに六百円か...でも、これが人を笑顔にできるなら、俺はこの屋台を続ける価値があるってことか」
俺は自分の仕事に、ほんの少しだけ誇りを感じながら、次のお客さんを笑顔で迎え入れた。
時間を割いてくれてありがとうございました。
屋台がでてる時は迷わずチョコバナナを選びます😃
コアラのマーチ付きで青いチョコバナナ好きです😁
みなさんの好きな屋台をコメントで教えてください🙇
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