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DXトレンドが後押しする総合系コンサルティングファームの成長に対し、COVID-19が及ぼす影響とは?

2013~19年は、国内における多くの企業が成長フェーズの局面に乗り、特にIT・コンサル業界の成長には著しいものがありました。しかしながら、コロナショックによる景気後退により、市場規模が大きく変動する形相です。
本記事では、近年、DX事業の需要が高まる中での総合系コンサルティングファーム(以下総合系コンサル)の成長に対してCOVID-19が及ぼす影響について言及します。

DXとは

DXとは、デジタルトランスフォーメーションの訳であり、「デジタルシフトのフェーズにおける最終段階」と言えます。

デジタルシフトにおける3フェーズ
1.デジタイゼーション:局部的にアナログ情報をデジタル化する
2.デジタライゼーション:ビジネスモデル全体をデジタル化する
3.デジタルトランスフォーメーション:デジタライゼーションの結果、新たなビジネスモデルが生まれるといった社会的な変革が起こる

また、経済産業省が2018年に発効した「DX推進ガイドライン」では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

DXが注目される背景 

・消費者行動の変容
モバイルシフトによって、消費行動が「アナログ」から「デジタル」へシフトしたことにより、リアル店舗を持つ企業は、デジタルとリアルを統合したビジネスモデルへの変容が急務となりました。多くの企業では、ECサイトやアプリを活用してユーザーとの新たなコミュニケーションのあり方を実現しています。

また、顧客満足度を最大化するため、「DMP」などのインターネット上に蓄積された膨大な情報データを管理するプラットフォームに注目が集まっています。
多数のブランドを保有している「株式会社カネボウ」では、ブランド毎に顧客情報を管理していましたが、クロスブランドでのマーケティング施策を実現するため「DMP」を導入しました。これにより「コスメブランドAを好むユーザーは、実はBも好む傾向が強い」などの今まで見えてこなかったニーズの洗い出しや、オウンドメディア来訪ユーザのカテゴライズ及びそれぞれの分類に属するユーザー数の増減や興味変容などを広告施策の効果検証の指標として活用することが可能となりました。
このように、消費行動の変化に即したビジネスモデルに対応することもDX推進の大きな目的となっています。

・人材不足への対応 
高齢化が進む日本では、生産年齢人口(15歳~64歳まで)IT人材不足をはじめとする労働力不足は今後、益々深刻化していきます。そこで、企業が人材不足に備える対策方法として、「RPA」や「AI」などを活用したDX実現による「効率化・自動化」が挙げられます。

「RPA」とは、バックオフィス業務などホワイトワーカーがPCなどを用いて行っている一連の作業を自動化できる「ソフトウェアロボット」のことを指します。一方、「AI」は、指示内容の遂行のみを行うRPAとは違って学習能力が備わっており、蓄積されたデータの分析結果を基にコンピューター自らが意思決定することが可能です。

国内大手企業90社を対象に2019年夏に実施した調査(日経コンピュータ)によると、2017年に半数の企業が導入に乗り出し、活用継続中であることが分かっています。その中でも。三井住友フィナンシャルグループでは、銀行の営業店で営業担当者が毎朝手作業で作成していた顧客向けレポートをRPAによって自動化し、従来の作業時間から205万時間の削減に成功しています。
ソフトバンク株式会社では、採用の工程で「AI」を活用しています。膨大な時間のかかるエントリーシートの評価においてAIを活用することで、人事担当者の判定を再現しているといえる精度を保ちつつ、約75%の時間の削減に成功しました。

今や、これらの技術は、一定の業界にとどまらず、金融機関、物流、インフラ、メーカー、病院などあらゆる業界で導入され、企業の人手不足解消に寄与しています。今後、企業が永続していくためには、労働力不足を補う必要があり、今後も「RPA」や「AI」は、大いに役立つことが見込めます。

・「2025年の壁」への対応
直接的な背景ではありませんが、近年「DX」が注目されるようになったきっかけの一つとして、経済省が2018年に発効した「DXレポート」があり、レポート内では「2025年の壁」が主張されました。
現在、国内の企業では、既存システムの老朽化、事業部門ごとに細分化されたシステム、過剰なカスタマイズ等の結果、システムの肥大化・複雑化・ブラックボックス化がDX実現の阻害要因となっています。そのような状態が継続した場合に想定される国際競争への遅れや、国内の経済停滞リスクについて、「2025年以降、年間最大12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある」と警告し、このシナリオのことを「2025年の壁」と呼んでいます。この「2025年の壁」にいち早く危機感を持った企業は、既存システムの刷新を図り、本格的なDXに取り組み始めています。

DXトレンドが後押しする総合系コンサルの成長

DXトレンドが後押しする中、あらゆる企業では、豊富なIT知見なしにDXを実現することが難しいため、DX関連のコンサルティング需要が生れています。では、実際に、DXトレンド下の総合系コンサルの近年の業績を確認してみます。

※総合系コンサル:戦略立案などのいわゆる上流フェーズからシステム構築・運用までのコンサルティングテーマを一気通貫で行っているコンサルティングファームのこと。
「ベイカレント・コンサルティング」「デロイトトーマツコンサルティング」「PwCコンサルティング」「アクセンチュア」など。

・ベイカレント・コンサルティング 
日経コンサルファーム「ベイカレント・コンサルティング」は、売上高330億(前年比35.7%増)、営業利益80.4億(同79.1%増)と大幅な増収増益となっています。

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参照:)国産コンサルファーム「ベイカレント」が好調『DXブーム』で計画超える大幅増益に

好業績に寄与した要素は、DX関連の高付加価値案件の増加でしょう。同社は、創業当初からITコンサルティングサービスに強みを持っており、もともとITコンサルティングサービスが売上の半分以上を占めてきました。そこに「DXトレンド」という新たな追い風が吹いたことで、業績も大きく伸びたと言えます。

・デロイト トーマツ グループ 
「デロイト トーマツ グループ」は、10年連続(2019年時点)で業績拡大しています。メンバーファーム合計業務収入が462億米ドルとなり、現地通貨ベースで前年比+9.4%、金額ベースで同+30億米ドルに達しました。

デジタル分野でのコンサルティング支援については、支援を増強すると共に、グーグル・クラウド、IBM、セールスフォース、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)などの主要なアライアンス・パートナーとの連携が更なる成長に繋がりました。
また、同社は、DXのコンサルティングを手掛ける中で需要が増幅するであろうサイバーセキュリティ分野における新会社「DTCY」を設立し、DX関連のコンサルティングをより多角的に手掛けることのできる体制を整えました。

加えて、人材採用においても積極的な動きを見せています。
19年度においては、YonY+9%増の約31万2,000人の採用を実施しています。

DTCY代表執行役を務める木村氏は、デロイトトーマツグループが今後3年でデジタル分野に400億投資すると表明しており、今後より一層、DXコンサルティング分野での成長を目指すとのことです。

・PwCコンサルティング 
2019年度営業総利益は、現地通貨建てで前年比+7%増、424億米ドルに達しました。
とりわけ、社員の「Digital Upskiling」向上に注力しており、AIをはじめとするテクノロジー分野だけでなく、今後の時代に必須となる「アジャイル」「デザイン思考」「リーダーシップ」などのマインドセットの育成などを積極的に取り入れています。

PwCプロフェッショナル人員数については、業績好調及び(DKコンサルを主とした)事業拡大に伴い、2019年度総人数は前年比+10%の276,005名に達しました。

・富士通
富士通は、DX推進を狙いとした新会社「Ridgelinez」を設立しました(2020年4月事業開始)。従来の富士通グループにおける強みは、「システムの設計や開発」でしたが、「Ridgelinez」では、DXビジネスにおける業務プロセスを「顧客課題の洗い出し」から「開発システムの運用」まで一連のフローでの支援を提供する体制を整えています。

Ridgelinez代表の今井氏(前職:PwC)は「2、3年のうちに200億円規模の会社に成長させ、1000億円前後のインパクトで富士通グループに貢献できるようにしたい」と語っています。サービスの提供においては、富士通内部以外の外部ベンダーのサービス活用を視野に入れています。

【要点まとめ】
・総合系コンサルにおいて、とりわけDX関連コンサルティング分野での成長が顕著
・今後も戦略系コンサルティングファームは、DX関連へ投資
・デロイト トーマツ グループ、PwCコンサルティングなどではファームのプロフェッショナル人員を増員し、「コンサル➡実装」へと着手。一方、大手ITベンダー富士通は、「実装➡コンサル」へと着手。(垣根がなくなってきている)

COVID-19流行がコンサル市場に及ぼす影響

ここまで、総合系コンサルをはじめとしたDX事業推進中企業のDXトレンド下における動向について解説してきました。とはいえ、前述した内容はコロナショックが起きる以前の話です。パンデミック後の詳細な業績結果などは現時点で発表されていません。

ここからは、COVID-19流行後のコンサル市場の動向について私なりの見立てを建てていきます。

①短期的にみるとオファー自体の数は減少するものの、長期的にみると引き続きDXコンサルティングの需要は伸び続ける
COVID-19の流行や経済活動の停止により世界経済は短期間で深刻な景気後退に陥り、国内においても、2月~5月の4カ月連続で「景気動向指数」が低下し続けている状況です。
不景気になると、モノやサービスが売れ残り、企業の業績は悪化します。とりわけ、コンサル市場は不景気に弱い市場なため、しばらくの間、景気後退による影響を大きく受けることとなりそうです。
現段階で以下のような事例及び報告がなされています。以下は(FINANCIAL TIMES July 2,2020 より)抜粋した内容です。

・米アクセンチュアでは、1.1万人のうち900人をリストラ(全世界のアクセンチュアの人数は51.3万人)
・英国における主要コンサルや4大会計事務所は、3月時点よりパートナーの給与を20~25%減給中
・世界におけるコンサル業界規模は2020年度に前年比-20%(金額にして1300億ドル)で縮小予測
(FINANCIAL TIMES July 2,2020 より)

ただし、コンサルティングサービスの中でも「DXコンサルティング」に関しては、需要の拡大が望めます。
というのも、冒頭で前述した「DXが注目される背景(消費行動の変化)(人材不足への対応)(2025年の壁への対応)」は、パンデミック以前と変わらず今後避けられないトピックであり、かつ、迅速な対応が求められているためです。
実際に、消費行動の変化に応じてビジネスモデルの再構築ができないままであった企業は倒産にまで追い詰められました。その二の舞を踏まないためにも、「マーケティングツールの導入」やデジタル上などでユーザーとの「コミュニケーションのあり方」を変革していくことが重要となっています。
また、COVID-19の流行が、フレックス制度やリモートワーク導入など働き方改革に更なる拍車をかけたことから、オンライン会議サービスなどのクラウド環境構築の問い合わせが急増しており、今後もDXコンサルティング需要は伸び続けることが予想できます。

以上のことから、短期的には景気後退の影響によりオファー自体の数は減少するものの、長期的には、DXコンサルティングがコンサル市場を牽引していくと見ています。

②大打撃を受けた業界を中心にオファーは減少傾向、一方で、好調なクライアント企業のプロジェクトに尽力
COVID-19の流行による不景気のダメージの度合いは業界によって様々です。好調となった業界としては「Eコマース」「ドラックストア」「インターネット回線」「電気ガス」「運輸配送」等が挙げられます。一方「観光」「飲食」「小売」等の業界は大打撃を受けているため、広告宣伝費やコンサルフィーの予算は削減傾向となります。
そのため、総合系コンサルは、ダメージを受けていないもしくは好調な業界をクライアントとして新たな価値提供をすることで、この不景気を耐えていくこととなるでしょう。

COVID-19流行がコンサルタントのキャリアパスに及ぼす影響 

最後に、切り口を変えて、COVID-19の流行がコンサルタントのキャリアパスに及ぼす影響について言及します。
コンサルタントにおける従来のキャリアパスとしては、「他のコンサルティングファームへ転職する」「事業会社へ転職する」「起業する」「地方企業向けコンサルタントに転職」など主に4つが挙げられます。いずれの道に進むとしても、ポストコロナにおいては、今まで以上に「スキル向上」に勤しむ必要があります。なぜなら、リモートワークが主流となりプロセスに重点を置いた評価実施が難しくなっており、評価の手法が成果主義へと転換しているからです。

そのため、自身の「スキル向上」にどれほど努力をつぎ込むかによって、今後のキャリアにおける選択肢は大きく変動します。オンラインリテラシーや情報のアップデートを積極的に行い、コロナ時代に必要なスキルを磨くようにしましょう。

前述したキャリアパスの他に、「フリーランス」という選択肢があります。一口にフリーランスと言っても働き方の形態は多岐に亘りますが、パンデミック後は、特に「副業」としてのフリーランスの需要が増加しています。
個人が副業を始める背景としては、「外出自粛による余韻時間の増加」「経済面における将来の不安」等があります。一方、企業側にとっては、「人材リソースを変動費として確保(コスト抑制)」「新たな知見の確保」等のメリットがあります。実際に「Yahoo!」は、副業人材の獲得に乗り出しており、事業戦略のアドバイザーやエンジニアなど約100名を副業として募集しています(7月15日より募集)。同社は、これまで関わる機会のなかった人材を受け入れることで、新たなサービスや事業の創出に繋げたいとしています。
「Yahoo!」以外にも多くの企業で上記のような傾向が強まってきており、今後も、拡大していくことが予想されます。それに伴い、コンサルタントは「個人」として価値を発揮する機会が増えてくため、いずれのキャリアを選択するにしても自身の「スキル向上」に、今まで以上に貪欲に向き合う必要があるでしょう。

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