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超長期スパンで投資をしている人たちの話:WOOD JOB!

やらなければならないことはそっちのけで、朝から暇と決め込み、午前中から勢いよく映画を見る。
それがわたしの休みの日の過ごし方である。
だからなのか、やることが一向に片付く気配がない。

先日も朝から完全に映画気分だったので、何を見ようかとNetflixのマイリスト欄を漁っていた。
映画っていくらたくさん見ても、見たいと思うリストは短くなることは一向になく、長くなっていくばかりだから不思議だ。

公開当初、少し気になっていた「WOOD JOB!」を見ようと思ったのは軽そうだったからという単純な理由だった。

大学受験で失敗した平野勇気はチャラ男系に属するやる気ない男子。
周りのチャラ仲間は大学入学後の話をし、自分は浪人すら億劫に思っていた矢先、なんか可愛い女性が微笑んでいる林業のパンフレットを目にして、フワフワしながら1年間の研修に参加する。
ハードすぎる研修で、何度も逃げ出そうとするも、なんだかんだと縁が繋がり、実地研修まで漕ぎ着けていく。
早く終わらないものかと終わりまでの日々をつぶさに数えていた勇気だが、実際に現場へ出たり、村での生活を通して変化していく。

凄いキャスティングだなと、当時のCMかポスターか何かを見て思った。
染谷将太
伊藤英明
長澤まさみ
優香
西田尚美
柄本明 etc

正直、学校とかで流すような、職業に関するチュートリアル的な内容の映画なのかと思ってみたら、全然違っていた。
林業という職業に関しての説明などもきちんと盛り込まれてはいるものの、勇気の成長物語にもフォーカスが当たっておりとてもバランスが良かった。

木を切る際の技術や高所作業、そして山との付き合い方など、林業について知らないことがたくさんあって、どんどん内容に引き込まれて行った。
そして何より、林業が超長期スパンの投資であることにも驚いた。

考えてみれば当たり前なのだけれど、「木」というのは数十年ではさしたる大きさには成長しない。
1世紀単位にも近しい年数を生きて、立派で大きな木になっていく。

つまり、林業に携わる人たちが切っている木は、概ね先祖たちが植林してくれた木々であり、自分たちが植林した木々の立派な姿は見ることができないのだ。

林業の世界にも、切った木の競りがあった。
漁港でやっている風景をテレビで見たことはあるけれど、あれの魚ではなく木のバージョンだ。
余分な枝や木々を間引いて、日光をしっかり浴びて育った木の年輪は綺麗に弧を描き、映画内では1本80万で落とされていた。
あの一本でどのくらいのものに使用できるのか、気になるところではある。

この競りの後、勇気があんなに高く売れるなら、全部切ったらベンツ乗れるじゃん!とチャラ男らしいことを言っていたが、綺麗に一喝されてた。
育ての与喜は怒りながらも、今、全ての木を切ってしまったら、次の世代やその次が苦しい思いをするということを説明していた。
木の成長は人間の成長よりも緩慢であること。
そして自分たちは見ることができないが、立派に育てた木がいつか、後世のためになるということ。
壮大だった。

年金問題や老後の話が多く取り上げられ始めた昨今、投資が注目を浴びている。
自身の老後のため。
子供の将来のため。
自身の資産を育てていくというのが投資だ。

林業は同じ、「誰かのため」という名目で、もっと前から投資をしていたことになる。
自分のためにはならない投資かもしれないけれど、家族のため、村のため、ひいては顔も名も知らない他人のために林業従事者は、投資をしているのだと思った。

ただ「知っている」だけで、知らない職業はたくさんあるのだと思わされた映画だった。
林業という知っているようで知らない職業を知れ、チャラチャラした都会っ子が成長していく過程を見守る。
そしてガチムチの伊藤英明を拝める素晴らしい映画だった。

おしまい

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