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社員の満足度調査ではなく、意識を調査する

前回の記事

社員の意識調査を実施し、データを集める

業績をアップしたい会社や経営者が中期経営計画を立てて、社員たちの
モチベーションを上げていくにはどのようにすればよいのでしょう。

社員を巻き込んで行くには、バスの行き先を経営者が勝手に決めるのではなく、バスに一緒に乗っている社員たちに確認する。すなわち聞くことです。

 皆の意見を聞くなどというと、何だかリーダーらしくないとか、頼りないと感じる経営者もいます。
サーバントリーダーという言葉をご存知でしょうか。
アメリカのマネジメント研究・開発・教育を行うロバート・グリーンリーフが提唱したリーダーシップ論です。
 サーバント(servant)とは使用人や召使いをいい、組織に奉仕するリーダーという意味です。カリスマ性や強いリーダーシップがあるわけではないのに、組織が成長し部下がやる気になるのがサーバントリーダーで、
後継社長にとても向いたリーダーシップのあり方ではないかと
思っています。

満足度調査を行わない理由

そこで、まずは社員が会社や仕事、上司などに対して、どのよう感じているのかについてアンケート調査を行います。
「従業員意識アンケート10個の質問」です。

従業員意識アンケート10個の質問

一つだけ注意しておきたいのは、タイトルを見てもおわかりのとおり、
「満足度(ES)」アンケートではなく、「意識」アンケートとしている
点です。
よく、魅力ある職場づくりのために、従業員のESアンケートを実施しましょうという話はありますが、「満足度」というバイアスがかかってしまい、要求や要望、願望ばかりの回答になってしまうのです。
また、アンケートに回答した後に、自分が期待するような(満足度が上がるような)改善がされないと、かえって不満を募らせつことにつながってしまいます。
「意識」というニュートラルな言葉を使ったほうが、
「どう感じているのか?」についての率直な声を集めることができます。
たった一言の違いですが、集計されるアンケート結果は大きく異なるものとなりますので、十分注意してください。

 質問の中で、「Q7当社に一体感(社員の心が一つになる)はあると思いますか?」や「Q8あなたは当社の将来についてどう思いますか?」について、ネガティブな回答が多いのは、先の「課題」や「誤解」を見ていただければ、想定内。
こうした、一体感や将来への期待感を上げるために必要なこととして、中期経営計画が必要であること、そしてその目標は従業員皆で作り上げていくことが必要であることを社内で共有するわけです。
 なお、10個の質問を集計し、社員の35%以上が何らかの不満を感じている項目がある場合は、改善の必要があります。
例えば、「Q6あなたは仕事の量が多くてきつすぎると思いますか?」の
問に35%以上が「イエス」と回答した場合は、人員計画の見直しやDXを
活用した業務効率の改善を実施する必要があるでしょう。

 あるいは、「Q2あなたは当社において成長/自己実現できていますか?」との問に「ノー」という回答が35%以上であれば、キャリアプランや研修制度など改めて制度設計が必要になるでしょう。

社員の意見を取り入れた中期経営計画の作成

サーバントリーダーとして、社員がやりたいことを実現するための
中期経営計画での作成は、これまで何十社も実施して、
非常に高い効果を実感していただいております。

もちろん、100%すべての会社で有効というつもりはありませんが、
社員を巻き込んで作り上げていくことで、カルチャーをより浸透させていったり、エンゲージメントを高めていったりする効果もあります。

 何をするのかというと、20XX年までに社員が
「やりたいこと」「実現したいこと」「チャレンジしたいこと」を
どんどん拾い上げていくのです。
ポイントは定量目標ではなく、数値化できない定性的な目標としている
ところです。
中期経営計画なのに数値目標を立てないの?」と驚かれます。
もちろん実現するために数値を積み上げていく必要はありますが、
まず社長と社員の間で意見を出し合い、共有すべきなのは
数値化できない部分なのです。

実際に採用されたユニークな中期経営計画


 中期経営計画を作るための具体的な方法は、後で解説します。
ここでは、少しユニークなもの。社員との間で盛り上がるテーマを
いくつかご紹介しておきましょう。
 

①「将来の働く環境」


 テーマでいうと、一番盛り上がるのが福利厚生です。
 ランチ補助や家賃補助、住宅手当、宿泊施設、社員旅行や親睦会などなど、さまざまな福利厚生がありますが、ユニークだったのは女性社員からの提案で「パウダールームや大きめの更衣室が欲しい」というものでした。
なかなか男性の経営者からは出て来ない発想ではないでしょうか?

②「将来のポスト」


 次に盛り上がるのが、将来のポストです。若手の社員からすると、現状ではポストは埋まっていて、さらに課長や部長のポストを作るのは難しいものです。
「じゃあ、子会社を作って、そこの社長になりたい」とか、その子会社はどのような事業がいいのか、子会社を5つ作って新たに社長を5人輩出しようなど、様々な意見が交わされます。皆とてもワクワクするテーマですね。
 

③「将来の待遇」


 そして、もちろん給与や待遇も重要です。基本的には業界平均の給与を
ベースにどれぐらいが適切なのかを議論しますが、これもまるで
自分ごとのように様々な意見が飛び出します。
 

④「自社の歴史」


 歴史は過去の出来事ですが、
「将来どのような歴史を刻んで行きたいか」についての話も
中期経営計画につながるテーマです。
 ほかにもグローバル採用や就職ランキング10以内、
あるいは下請けからメーカーになりたいなど、実用的なものもありますが、社史や沿革には載らないようなユニークな意見もあります。
 例えば、「地元の花火大会のスポンサーになりたい」や「会社としてボランティア活動に参加したい」、「ローカル番組でよいのでCMを出したい」などたくさんのアイデアが出てきます。

定量目標は社長と幹部で決める


 そして、こうして出てきた様々なアイデアの中からどれを採用するのかを決め、実現するためには、いくら必要で、
そのためにやらなければいけないことは何か? 
ということについて経営者や幹部が考えていく必要があります。
 つまり、ここから先は定量目標を定めて行く必要があるのですが、
計画自体は個々の社員から出たアイデアですので、実現に向けて自らも
仕事へのモチベーションを高めることができます。

このように、社員を巻き込んで仕事に対する意義や目的、そして達成感も持ち、中期経営計画を「自分ゴト」として考え、行動できるようになります。そして社長自身も目標とする会社の成長や組織の成長を達成できる
中期経営計画を立てることも有効です。
 


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