見出し画像

自社の5年後を引っ張る人材を採用

前回の記事

課題 将来を見据えない近視眼的な採用になってしまう

 

 カルチャーに関する項目に入れた人事評価制度を導入したことで、
徐々にカルチャーフィットしない人、旧来のやり方に固執する
幹部たちへの評価が下がっていきます。

 例えば100人の従業員がいて、徐々にカルチャーが
浸透していくことで、そのうち6割がカルチャーフィットするようになるとカルチャーにフィットしない人たちはだんだん居づらくなります。

 さらに、新卒採用も含めてカルチャーを重視した採用を進めていくことで、カルチャーフィットする人としない人の割合が6対4から7対3へと
近づいてくると、カルチャーに合わない社員は次々と退職していきます。

 また、例えば10人の幹部がいて5人がまだカルチャーフィットしないのであれば、カルチャーフィットした幹部を新たに5人増やして10対5という
構図をつくることで、意思決定が大きく変わります。

 そして後継者が目指している会社のあり方や将来像を理解しない、
理解しようとしない従業員や古参幹部たちは、少しずつ会社を離れていくことになり、従業員や幹部、会社にとって必要な人材の入れ替えは、
ある意味作為的に組織を作り変えることにつながります。
 
◯他社から幹部を引っ張ってこない
 次の段階で必要となるのが、新たな人材の獲得です。しかし、辞める
従業員の中にはトップ営業パーソンも含まれているかもしれないことから、そうした人材の補填のために、同じように営業スキルの高い人材という
視点だけで採用活動を行っては意味がありません。

 まず、優先すべきはカルチャーフィットであり、その上で営業スキルの
高い人や将来の幹部候補を計画的に採用していく必要があります。
 そうはいっても、「こういう人が何人欲しい!」と思ったときに、すぐに探してきて自社に雇用できるものではありません。従って、まずは
「採用計画」が必要となります。

退職した幹部の代わりになる優秀な人材を見つけてスカウトするという方法もありますが、実際には他社から営業部長などの幹部を採用しても、
新たなカルチャーにフィットせずに、結局うまくいかないこと
多いものです。つまり、人材補填のために、スキルや肩書を優先して
採り急ぐなど近視眼的にならないことが大切といえます。

 現在の幹部候補生を育成することも含めて5年先を見据えて
「将来このポストに就く人材」をシミュレーションしてみて、
もし社内に適切な人材がいなければ、採用活動を通じて将来のポストを
埋めていく作業を早い段階から行っていくことが必要というわけです。

解決策①後継者を中心に採用計画のプロジェクトを推進する

 バスの「空席」を埋めるための採用プロジェクトですから、当然人事部に丸投げというわけには行きません。

 これまで、新卒採用や中途採用を人事部に任せていたような場合でも、
社長直下の採用プロジェクトチームを立ち上げる必要があります。
何しろ、カルチャーフィットした人材、5年後に必要な人材の人物像に
ついて、もっとも熟知しているのが社長自身だからです。

 社長が採用活動の先頭に立ち、自社の目指すカルチャーやパーパスについて改めて確認し、適切な人物像をプロジェクトチームで徹底して
共有します。

 プロジェクトチームの中で持ち上がる疑問や質問に対して、真正面から
答えることで、採用担当者も改めて自社についてより深く、より正しく理解できるようになるわけです。
プロジェクトチームには、社長に加えて社内のトップ営業パーソンを
ナンバー2に据えておくと、後に説明するダイレクトリクルーティングに
おいて、採用の入口となるファーストコンタクトがうまくいく可能性が
高く、さらに都心から地方の中小企業に転職し、移住してもらう必要があるケースでは、社長自らの言葉で「いっしょに頑張りましょう」と伝え、
クロージングにもっていくことはとても重要です。
 

◯リファラル採用頼みだと良い幹部候補は見つからない


 リクルーティングには、転職サイトなどに広告を掲載する一般公募、
人材紹介会社の活用、社員の紹介などリファラル採用、ダイレクトリクルーティング、SNSなどを使ったソーシャルリクルーティング
などがあります。
 現状では、転職サイトや人材紹介会社を利用している企業は多いとは思いますが、優秀な人材の多くは都心部の大手企業や外資系企業を選ぶ傾向に
あり、優秀な人材を獲得する手法としてはあまり適切とはいえないと
考えます。

 紹介会社の場合、給与に対するインセンティブが発生するため、大手企業を紹介したほうが紹介会社にとってはメリットが高いものす。また求人サイトからの応募は、地方の中小企業の場合、たとえ最終面接まで進んだとしても、大手企業に採り負けてしまう可能性が高いのです。
 また、地方の中小企業でけっこう多いのがリファラル採用です。求職者にとっては知人からの紹介なので信頼ができますし、紹介者がカルチャーについてきちんと理解をしていれば、求職者も入社後のイメージがしやすく、高いモチベーションで入社するため、入社後のミスマッチが起こりにくいのが特徴です。
 ただし、一般社員には有効だと思いますが、将来の幹部候補となると、現実的にはなかなかよい人材に巡り会えない点はデメリットです。
 

◯欲しい人材に直接アプローチする


 私は、地方の中小企業が将来有望な幹部候補を獲得するには、ダイレクトリクルーティングやソーシャルリクルーティングが最適だと思っています。
 改めてダイレクトリクルーティングとは、人材データベースに登録している求職者に対して、企業の側からオファーを出していく採用方法です。スカウティングのように紹介会社や人が介在する場合もありますが、まったく紹介者を介在しない方法もあり、中小企業でも直接アプローチするチャンスがあるのが特徴です。
求職者は自身の経歴やスキルなどの情報を事前に公開しているため、
一定のスキルを持った人材、自社で活躍してくれそうな人材に対し、
直接アプローチすることができます。これまでなかなか出会うことが
出来なかった優秀な人材と地方の中小企業をつなぐ採用システムなのです。

 また、コロナによるパンデミック以降、都心から地方で働くことを希望する求職者も増えており、そうした情報もオープンになっているため、「地方だから」という理由で断られたりミスマッチが起きたりする可能性も低くなる点もメリットといえます。
 

◯大手に比べて地方の中小のメリット


 しかし、都心の大手企業に勤めている優秀な社員が地方の中小企業に転職してくれるのかと、心配する向きもあります。
 しかし大手企業に勤めている人は、何千人といる社員の1人に過ぎませんから、悪く言えば会社の歯車の1つであり、自分はいつでも代替可能な存在にすぎないと感じています。
 実際に地方の中小企業に転職してきた人たちの話を聞くと、大手企業と比較した際のバリューは、なんといっても「自由度が高い」「やりがいがある」「自分の責任で実現できる範囲が広がる」とうい前向きな回答が多いものです。これはまさに、中小企業が求める人材ともいえます。
 もちろん、現状の採用環境は、まだまだ東京一極集中が続いていますが、日本人材機構という政府関連機関も地方企業への人材マッチング促進事業を実施し、大企業社員が地域でのネクストキャリアを構築するための支援を行っています。そういう時代背景もあって、一昔前よりも地方の企業における人材獲得のチャンスはずいぶん増えてきたように思います。
 だから、何が何でも都心で働きたい層と、地方の中小企業でもっとやりがいのある仕事に就きたいと考える層で今後はさらに二極化していくことは間違いないと考えています。

次回もお楽しみに。



















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?