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こころのちからになる話

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現代を舞台にした作品メイン集。小説、戯曲風、詩も。読後の爽快感と、ちょっとだけ心が温まるようなお話を目指してます。
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#ヒューマンドラマ

こころのちからになる話4 おばあちゃんの手作り品

陽菜(ひな)は、おばあちゃん子の12才。編み物や身の回りのものを作るのが得意なおばあちゃんをとても尊敬している。誕生日が来るともらえたニットのセーター。お手製の花のオブジェが付いたハンドバッグだっておばあちゃん製だ。

お父さんやお母さんからもらえる誕生日の日の特別なお金ももちろんうれしいが、冬になると、おばあちゃん製のセーターを、必ず学校に身に着けていく。市販製のものしか着たことのない今どきのお

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こころのちからになる話2 社長、子ども食堂の料理を作る

江平徹(えひらとおる)は、誰にも言えない悩みがあった。彼はただ今、業績絶好調になっている新しい企業の社長だ。自分の得意分野を活かして、並みの会社員よりもたくさんのお金を稼いだ。彼は自分の幸運に感謝し、また、新たなアイディアを駆使して人のニーズをつかむことにも長けていたので、そこそこの評判も得ていた。

彼の悩み。それは、お金を得ることにまったく喜びを感じなくなってしまったことだった。贅沢と言えるか

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こころのちからになる話1 ゴミ拾い革命

ゴールデンウィークのことだった。佐竹仁(さたけひとし)は家族を連れて、10連休にインドネシアへ渡った。目当てはとあるビーチ。妻の麻美(あさみ)も、14才になる娘の裕子(ゆうこ)も大喜びでついてきた。

佐竹は家族でホテルを出て、人でにぎわう浜辺に着いた。まだ太陽は高く上っていて、海に光が反射してまばゆい。

「さあ、泳ぐぞー」

佐竹はトランクスタイプの海パン姿で、麻美と裕子に声をかけた。

「ち

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