見出し画像

2023ファジアーノ岡山にフォーカス23『 怖さから凄さvs勢いから受け~継続(系属)~ 』J2 第13節(H)vs モンテディオ山形

 22シーズンに4度戦った唯一のチーム。最後の最後で敗れた山形戦。3勝1敗(2勝1敗)ではあるものの筆者の体感や記憶、印象としては、実は全敗ぐらいの感覚であった。むしろ、岡山が、誤審や劣勢の中での難しいゲームが続いた中で、3(2)勝もできたことが不思議というのが、正直なところだ。

 特に22シーズンは、岡山は前への勢いが武器で、相手を上回る攻守でのアグレッシブに戦い、相手陣地でプレーすることが得意なチームであった。前から行くという部分で、カウンタ―にやられるということが、負けパターンだが、山形戦に関しては、徳島戦同様に内容で圧倒されたチームという認識であった。

 しかし、この試合では、22シーズンとは、全く違った印象の内容に感じた。

 山形のサッカーが、「怖さ」から「凄さ」へと変わり、岡山のサッカーは「勢い」から「受け」へとシフトしていた。あくまで、私の印象ではあるが、これがどこから来ているのか、岡山のサポーターの一人としての意見に過ぎないかもしれないですが、全力で挑んでいきたい。

 全文無料公開。スキーやフォローや、購読などをして頂ける記事を目指しています。一人でも多くの方に読んでいただけると嬉しいです。


1、両チーム比較(岡山編)~攻守のバランス~


 13節までとはなるが、22シーズンと比べて、岡山の重心が後にある。22シーズンは、ミッチェル・デュークを中心としたハイプレスは、非常に強力で、強度と運動量を伴った前からの守備により「嵌めて行く」ということができたいたが、今季は少ない。

 ただ、22シーズンは、当然ながらプレス網を突破された後の背後やプレスが効かない相手に対しては、厳しい試合内容となることが多かった。CBの二人が、空中戦に強いタイプという事もあり、スピードを軸としたカウンタ―に弱かった。

 基本的には、ロングパスを軸として、相手陣地内でのセカンドボール回収や回収した選手に寄せて行くことで、高い得点力も実現した。

 こういった特性を持つ岡山が、最も苦しんだのは、「対徳島」と「対山形」だ。

 対徳島では、後方から前方まで、岡山のプレスを無効化するボールキープ力やパスワークに一体性があり、ボールを何処で奪うのかという問題が90分間突きつけられた。勝機があったとすれば、セットプレーやクロスにより、1点勝負に持ち込むことであったが、逆にピンポイントクロスにより、アウェイの試合では敗れ去ってしまった。

 22シーズンは「中盤の奪取力」と「カウンタ―に弱い」という弱点を的確についてきたのが、山形である。正式な公式戦の2勝と無効となった1勝のいずれも、90分間攻められる時間帯が長かった。

 これはやはり、岡山が攻撃に繋げたい前から守備をする時間が明らかに短くなるだけの山形のスピード感のあるボール運びにより、ボールを奪うことが狙えるエリアも狭かった。逆に人数が少ない背後のスペースを速攻で使われるというシーンが散見された。

 一方で、23シーズンでは、前からプレスは弱くなったものの、ここ数試合は、セットするプレス(コースを切る守備の形)を採用して、選択肢を狭めて行くという有馬ファジで見られていた守備の形を採用するようになってきている。これは、対戦相手に応じてではあるが、もしかすると一番成果を上げている守り方と言えるかもしれない。

 藤枝戦でお披露目されたが、山形戦では、隙も少なった上で、効果が及ぶ範囲と参加する人数が増えていた。メイン戦術というよりは、まだ一つのオプションと言えるが、GKからパスを繋いで前に運んで行くチームには、有効と言えそうだ。

 22シーズンと攻撃の最大の違いは、パスを繋ぐ所に力を入れていることだ。開幕戦の磐田戦や金沢戦こそ、繋いで運ぶということができていたが、回すだけに終わる試合も少なくなかった。メインに据えるには、やや完成度は低かった。

 ただ、ここ数試合は、ロングパスの意識が飛躍的に高まった事で、ショートパスが効果的となってきたことで、本来のパスワークが生きてきた。

 4-3-1-2から4-4-2へと転換、後半は状況に応じて、3バックなどに変更するなど、戦う事で、後半勝負の流れを作れている。

 4-4-2のダブルボランチへの転換したことで、14田中 雄大と22佐野 航大が前目でプレーすることで、攻撃に厚み、迫力も出てきた。

 6輪笠 祐士を組む27河井 陽介と44仙波 大志が、ボランチでありトップ下でもあるという感じに自由に動く事で、攻守でのバランスが非常に良くなかった。これは、開幕の時からの大きな変化だ。

 この試合での44仙波 大志の活躍は、まさに4-4-2の今の形になった最大の恩恵と言えそうだ。

 また、ロングパスの意識が高かった大きなポイントとして、7チアゴ・アウベスの復帰もあるだろう。18櫻川 ソロモンの高さや強さ、7チアゴ・アウベスのスピードや決定力。ここをシンプルに活かしていくという意識が高まり、後方でのボールロストが減ったことも大きい。

 5柳 育崇と23ヨルディ・バイスの位置を逆にした点も地味に効果を上げている。5柳 育崇の寄せる守備の判断の悪さや体をぶつけての守備対応時のファールの多さが懸念点であったが、左SB(左CB)の43鈴木 喜丈が、左サイドに蓋をしてくれることで、そういった守備対応が減った事で、自陣でのファールも減った。

 その分、左足でのキックが増えた5柳 育崇の左サイドへのパスは新たな弱点になりつつあるので、2高木 友也とコンビを組むときは、やや心配な点かもしれない。

 勝ち点3こそ掴めていなかったが、間違いなくこの2連勝に繋がっている。改めて、整理してみると、岡山の成長が見て取れた。


2、両チーム比較(山形編)~速攻からポゼッションへ~


 22シーズンの山形は、前線にボールを運ぶのもゴール前にパスやクロスを入れて行くのも非常に速かった。長めのパスが多いはずなのに、まるでポゼッションサッカーのチームと対戦しているかのようなパスの成功率。それなのに、ロングパスを主体とした攻撃のような速さも併せ持っている。

 「スペースで受ける」ことと「スペースへ出す」という2大テーマが山形の超攻撃的なサッカーを支えていた。

 出し手と受け手の意志疎通がスムーズな上に、パスの形も明確にあり、後は、どう速く正確に判断して、パスを出せるかだ。

 言ってしまえば、22シーズンの山形のサッカーは「AIカウンタ―」。イメージ的には、人間離れした高速での判断と正確さを合わせもったサッカーなのだ。

 「そんなん防げないやん!!」という声が聞こえてきそうだが、まさにその通りで、22シーズンの山形との対戦での試合内容をよくよく振り返ってみると・・・

 「守った」ではなく「守れていた」といった表現がしっくりくる。言い方を変えると、結果的にプレーオフ以外の対戦では、岡山が勝てていたが、山形の攻撃を抑える事ができず、なんとか辛抱して、守ったことでの1チャンスをものにしてという勝利であったのだ。

 そういった内容の勝ち方であったために、ある種の確率の収束で、その内容がプレーオフで結果として出てしまったのだ。チームとしての調子は、間違いなく落ちていたが、22シーズンを振り返れば、内容的には全敗に等しい。ただ、岡山が個の力や勝負強さなどで、3勝(2勝)できていたといえ、内容と結果が別物であると感じた。

 そう考えると、サッカーの難しさや魅力、怖さ。そういったものを強く感じる22シーズンの内容と結果の対戦であった。

 23シーズンの山形は、どうであるのか?岡山戦を見たのみで恐縮であるが、23シーズンの山形は「足下」や「人」で受ける傾向が強いサッカーとなっていた。クラモフスキー監督が退任して、渡邉 晋 監督が就任した影響かもしれないが、大きな変化だ。

 先ほど、AIカウンタ―と評したスピード感のある攻撃の形は、ほぼなくなっていた。

 ただ、22シーズンのようなサッカーをするためには、スピード・運動量・決定力のあったディサロ 燦シルヴァーノやプレーオフで、岡山の守備を無力化したスルーパスを出せる視野の広さと技術をもった山田 康太、超攻撃的なサッカーをSB離れしたマルチなタスクをこなしていた半田 陸の退団は、やはり痛かったと見るべきか。

 23シーズンの岡山もそうだが、組織的戦えていたとしてもやはり主力選手が1選手でもいないだけで、影響は計り知れない。替えの利かない選手達が抜けたことで、人間離れしたAIカウンタ―の実現や再構築を図っていたが、J2のレベルが高いことで、僅かな隙をも見せれないJ2の怖さの前に苦戦していた。

 しかしながら「AIカウンタ―」のような高速でなくなったことで、「ポゼッションサッカー色」が強くなった山形が、また違った強さを手にしつつある。

 それもそのはず「AIカウンター」を体現していた主軸選手が残っている訳で、そのチームを抑える事は簡単ではない。サッカーの基本は止める蹴るであり、そういった部分に忠実になった山形は、復調の兆しを見せて、連敗も止めることに成功し、勝利も掴んでいたことからも、いかにチーム状況や選手に則したサッカーを選択肢で、戦うことが重要か改めて、感じた。

 今思い出しても、22シーズンの山形のサッカーが、いかに凄かったのか、そして、そのサッカーを体現していた選手もいかに凄かったのか。そして、その主軸が複数人残って、新戦力が加わった山形が、ここ数試合の岡山のように噛み合って来た時に、どういったサッカーを体現できるのか。

 この試合では、岡山が勝利したが、次の対戦の時には、全く別チームになるのが、サッカーであり、22シーズンでは、お互いに意識したシーズンだったが、23シーズンの2戦目はどうなるのか。楽しみでもあり、怖さもある。

 それが、サッカーだ。


3、怖さから凄さと勢いから受けへ~継続(系属)~


では、そのチームが激突したこの試合を簡単ではあるが、考察していきたい。

 22シーズンと23シーズンの両チームの戦いの大きな相違点としては、22シーズンの岡山の後方には比較的スペースができがちで、山形のサッカーもスペースをどんどん突いていくというサッカーであったこともあり、基本的にサンドバックのようにスルーパスやクロスを危険な位置に出されることが多かったが、当然「人」ではなく「スペース」へのパスであったので、成功率こそ伸びなかったが、それでも岡山の守備のベクトルが、背後に向く事が多かった。

 ただ、今季の山形は「スペース」ではなく「人」で、パスを出し入れするので、岡山の選手が、前を向いて守備をすることができるというのが、22シーズンと23シーズンの大きな相違点と言える。

 そして、山形の攻撃は「跳ね返す」守り方をする浮き球ではなく、足下へのパスでの攻撃であるので、岡山の守備は、インターセプトや囲い込んで「奪う」という事が必要となってくるが、中盤でボールを奪い切れる選手が少なく、どちらかと言えば、22シーズンの様に攻撃的な選手が多いため、今季の岡山は一貫して、なかなかバイタルエリア(ゴール前の辺り)でボールを奪えない。

 そのため、今季も岡山は、バイタルエリアでのパスワークでの崩しやドリブルにかなり弱いというか、シュートの形を作らせてしまう傾向もある。

 確かに、90分間では、ずっと攻められている様な「怖さ」が、22シーズンと比べてないが、なかなかボールを奪えない、シュートまで行かれるという単純な「凄さ」という点では、今季の方が、山形は優れているように感じた。

 実際に岡山の選手が「人」に対して、寄せたり囲い込んで奪おうとするが、細かいパス交換やワンツー、ターンなどで局面を打開されて、奪えないという事が何度もあった。

 この山形の攻撃の22シーズンの「怖さ」を武器に、6位に滑り込んで、プレーオフで岡山を破った様に唯一無二のサッカーであったが、23シーズンの「凄さ」を感じるポゼッション色が強くなったサッカーでも「怖さ」もやはりある。

 一方で、岡山もここに来て、「ロングパス」と「ポゼッション」の使い分けの判断が良くなってきている。

 「勢い」を武器に戦って来た22シーズンと比べて「受け」の意識も強くなっている。

 よって、23シーズンの13節での両チームの戦いは、攻撃の「安定感」の山形と、守備の「安定感」の岡山という構図の戦いであった。

 ただ、ハイプレスが、ほぼスタンダードとなった今のサッカー界において、ポゼッションサッカーや攻撃的なサッカーで、勝ち続けるのは簡単ではない。

 山形が、高い理想をこれからも追い求めて行くのか。それともある程度守備を意識しつつ、繋ぐ事からリスクを避けてのロングパスをも取り入れた岡山のような戦い方にシフトするのか。今後を左右するポイントとなることは間違いない。

 少なくとも筆者にとっては、両チームの進化と変化を大きく感じた試合で、特に山形の変化には、全く別のチームの様にも感じた。それこそ、新潟のようなサッカーのイメージに近い。

 この試合の山形には決定機も多く、それを山形の選手が決めていれば、違った結果になっていかもしれない。「怖さ」と「凄さ」という強さの指標の表現としたが、山形は、渡邉 晋 監督体制となっての変化と進化の途中であり、岡山以上の決定機の多さがあった試合であり、岡山は結果以上に、やはり重く受け止めて、本日の町田戦に向けて準備しないといけないと強く感じた。

 一方で、岡山の得点も23シーズンにはなかった形で、今後もそういった得点を増やして欲しい。そういった素晴らしい2ゴールであった。

 岡山にとっては、大きな1勝であり、山形にとってはもったいないというか悔いの残る敗戦となったかもしれない。

 それにしても清水に引き分け徳島にせよ、この試合の山形のサッカーにせよ、まだまだここから大きな動きがあることは間違いなく、山形や徳島が大型連勝して、一気に浮上してくる可能性や、逆に岡山が残留争いに巻き込まれてしまう可能性も否定できない。

 実際に岡山がもし勝ち点を取りこぼしてライバルチームに勝ち点を献上していれば、残留争いに真っ只中というか、そこをどうしても意識してしまう順位だった可能性もあった。

 だからこそ、この試合の岡山にせよ、山形にせよ、結果に一喜一憂する中でも如何に前向きに戦えるか、諦めずに戦えるか。両チームとも昇格を目標にシーズンをスタートしたチームであり、このまま下位や中位に留まることは、両チームも受け入れられない気持ちは強いはずだ。

 本当に何かを手にするまでは、何もない。厳しいリーグであると改めて、22シーズンに4回戦って山形相手だからこそ強く感じた。

 22シーズンから継続性を持ってスタートしたように見えた両チームだが、明らかに「系属(ある事が他の事に関係していること。)」昨年とはサッカーは違う部分が多いが、継続して伸ばせている部分もある。

 それをどう形に結果に繋げるかが、今後に問われて行くこととなる。


4、2連勝で改めて感じたこと~ゲームの作り方~


 接戦の試合をものにするためには、やはりGKのセーブや体を張った守備が必要不可欠であると感じた。

 この試合でも1堀田 大暉のセーブがなければ、2-4ぐらいで負けていたゲームだ。勝つためには、守備を安定させなければならない。

 その上で、やっぱり良い攻撃ができる。

 岡山の2連勝のアンケート結果を見ても、1堀田 大暉が、ゲームを作った。

 そう言っても過言ではない。

 他の選手が得点をいくら決め手も相手にそれ以上決められてしまっては、どんな選手もヒーローになれない。

 秋田戦と山形戦の勝利だけではなく、ACLの浦和レッズの勝ち方を見て、僅差の試合でのGKの存在感は、凄いと改めて感じた。

12節 秋田戦 のアンケート

13節 山形戦 のアンケート


5、試合雑感


 15本山 遥のボランチ起用は、今後に可能性を感じた。6輪笠 祐士と15本山 遥の両名が揃う事で、岡山の懸念材料であったバイタルエリアでの守備能力やダブルボランチのどちらかが、ポジションを離れて対応にいっても守備に定評のある両選手のどちらがいることで、今までと同じ堅さがあり、新たな勝利の方程式になりえると感じた。

 後は、やはり43鈴木 喜丈のSB(CB)離れした前へボールを運ぶ巧さは、異常だなと。22シーズンの岡山みたいに前に6人ぐらいかけないと、2人以上で囲い込むというシーンは限定的となり、プレスをかける対戦相手からすれば、単純に寄せるだけではなく、絶妙なボールコントロールで、ターンをしてかわすようなボールコントロールやキープを許してしまう。リスクが高いプレーだが、ほぼ局面を打開できている。彼のボールキープやボール運びは、パス交換で打開するぐらいの効果があり、まさに一人で二役分のプレー価値があり、誰が見ても巧い選手で、かつ対人守備も強い。本当に良い選手であると改めて感じている。

 そして、この試合でなんといっても44仙波 大志。ゴールも凄かったのもあるが、この試合の44仙波 大志は、気持ちとプレーで勝負出来ていた。ターンでDFの裏をかくプレー、強引に道を切り開くドリブル(テクニックがあるので奇麗なドリブルに見えた)で突破を試みたり、積極的にシュートやスルーパスを狙っていた。こういったプレーを安定してできれば、出場機会も増えていき、結果に繋がる。後は、守備強度の高いチームに対して、どこまで、このプレーをできるかも気になる所でもある。

 最後に、今季の岡山というチームは、ミスが多く、サッカーの完成度や組織力という部分では荒いチームかもしれないが、気持ちで戦えるチームである。そこは変わらない岡山の強さでもあると、より強く感じている。点差が開いても劣勢でも、足が攣っても走り切る。どんなスコアでも選手や監督が変わっても岡山の武器である。

 これからも、この気持ちで戦える選手達が、自信を持ってプレーできるように、チームとして戦えるように、本当に微力ながら選手とともに戦う気持ちで、応援していきたい。

文章・画像=杉野 雅昭
text・photo=Masaaki Sugino

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。