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#090面白い展示ってどんなの?―博物館施設の展示を考えてみる(二)

 前回は展示方法や解説の仕方が面白かった展示の例を紹介しました。今回は、史料は面白かったのに…という展示について紹介します。
 まず一つ目が高槻市立しろあと歴史館で昨年特別展示だった「戦国武将 三好長慶―生涯と人々―」です。戦国武将の三好長慶の生誕500年を記念して、各地で行われた記念展の一つです。こちらはかなり網羅的に史料を集めた意欲的な展示です。

 ただ、かなり網羅的に史料を集めたために、出来る限り展示したいということで展示ケースが史料で一杯でした。そのため、折角集めた情報が過多になってしまっており、相当展示室で文字を読まないといけない展示になっていました。展示のためにたくさんの情報を収集する必要はありますが、全部出す必要はなく、少々貧乏性な感じがする展示に、筆者には思えました。情報を取捨選択することはなかなか難しいかもしれませんが、引き算にする英断が必要だなと感じさせられた展示でした。

 次に紹介するのは大阪商業大学商業史博物館で行われた企画展「河内の豪農と文化的ネットワーク―今米村 中家の学芸事情―」です。こちらは、現在の東大阪市今米の庄屋であった中家の史料のうち、大阪商業大学商業史博物館に寄贈された文学関係の史料の展覧会です。
 この展覧会では、江戸時代の庄屋など、いわゆる地方名望家層がどのような学問を学び、どのような文化形成をしていったか、といったことに注目したものです。中家では、これまで大和川の付け替えに尽力した中甚兵衛が最も注目される人物でしたが、その子孫たちに今回は注目し、彼らがどのような文化的な環境にあったかを紹介する、という初めての試みが行われています。
 この展覧会では、さまざまな文化関係の史料、とりわけ文学関係として俳諧の史料が紹介されていましたが、総ざらえ的な史料の展示のため、その史料の重要性やなぜ展示しているかは、今回の展示からは読み取れませんでした。江戸時代の河内国では、大阪市内や他国の国学者や文学者と交流を持って、地域で文化サークルを作ることが流行していました。そのため、江戸時代の地域文化の中での位置づけや、作品評価などについてまで踏み込んで展示史料を評価してもらえていれば、個々の史料は評価すべき史料のはずなので、なぜこの史料を展示しているのか、という価値づけが出来、観覧者にもその重要性が伝えることが出来たのではないか、と思えました。
 なお、同じ建物内に「アミューズメント産業研究所展示室」というものも併設されており、そちらでは同じ時期に「ボードゲームの歴史」という展覧会をしていました。そちらは、どのようにしてボードゲームが進化していったかの歴史と、個々のボードゲームの評価をされていて、非常に判りやすく、面白い展示でした。

 三つ目として大阪中之島美術館の「岡本太郎展」を挙げておきたいと思います。岡本太郎は言うまでもなく昭和を代表する芸術家ですが、その回顧展が今回の展覧会です。
 筆者は美術については門外漢ですが、展示を見に行って思ったこととしては、岡本太郎の作品が大きいサイズのものが多いのに、展示するハコ、つまり美術館が思いの外小さかったのではないか、と感じたところです。展示品が大きいため、引いて全体像を見たいのに、展示室ではなかなか引いて見ることが出来なかったので、岡本太郎作品と見合わない、美術館の大きさに問題があるのではないか、と思いました。これは、作品もですが、岡本太郎というビッグネームの展覧会ということもあり、来場者も相当多かったことも影響しているのでしょうが、岡本太郎の回顧展をするには美術館が少し小さかったのではないか、という気もしました。
 また、館内撮影が可能であり、各作品の写真を撮影する人が多く、なかなか作品に近づくことが出来ない印象も持ちました。通常だと、キャプションを読み、作品を見て、導線を進んでいくところ、撮影というもう一行程が観覧者に増えることで、より人の流れが滞る印象を受けました。

 今回の博物館、美術館の展示に対する評価は、あくまで個人的な感想ですので、その点はお含みおきいただければと思います。今回紹介した中には知り合いの展示もあるのですが…、出来るだけ面白い、判りやすい展示を見たいと思うのが世の常だと思いますので、気になる点は良い点も悪い点も含め、出来るだけ学んで、評価し、自らの仕事に活かしたいと思っております。

いただいたサポートは、史料調査、資料の収集に充てて、論文執筆などの形で出来るだけ皆さんへ還元していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。