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#091面白い展示ってどんなの?―博物館施設の展示を考えてみる(三)

 今回は博物館施設で展示以外での貴重な体験などについて触れたいと思います。
 ちょうど年明けから小学3年生、4年生が昔のくらしと道具について学習するので、筆者もお手伝いさせてもらっていた博物館施設で面白い体験をさせてもらった経験があります。ろうそくなど電機が無い時代の照明具の明るさを体験するというもので、ろうそくをそのまま火をともす場合,
シェードを付ける場合、ろうそくの下に水の入った皿を置いた上でシェードを書付ける場合、のろうそくで3パターン、灯明皿で先のろうそくと同じ3パターンの、合計6つの場合を実際に行ってみて、どのくらいの明るさが得ることが出来るのか、という実験を行いました。ろうそくはそのままの灯より、シェードを付けた方が、シェード内で光が反射してシェド全体を明るくするためより明るくなり、ろうそくの下に水を入れた皿を置くと下に対する反射も強まってより明るくなります。灯明皿も同様の結果でした。灯明皿は、油をサラダ油を使用し、灯心にはティッシュペーパー1枚をこより状にねじったものを使用しました。ティッシュペーパーに火をつけるとあっという間に燃えてしまうのではないか、という印象をお持ちの方がいるかもしれませんが、こより状にすることで、そのねじられた部分をあぶらが上がってきて油のみが燃えるという状態になるので、灯心が簡単に燃え尽きることはありません。油がねじられた部分を上ってくることを毛細管現象というそうです。その毛細管現象をうまく活用したのが灯心です。
 このような、実際にやってみないと当時の状態が判らないことは沢山あります。筆者の所属する施設でも、このあかりについての体験は面白いので、そのまま毎年やっています。

 このように体験して学習するということの効果は非常に高く、子どもらも楽みながら実体験として学べ、各地の博物館施設でも様々な体験学習をおこなっています。有名なところでは、日清のカップニュードルミュージアムのオリジナルカップヌードル作りなどは、非常に好評でかなりの予約待ちという話をうかがいます。

 このような専門性を生かした博物館施設はいろいろあり、京都では俵屋吉富の「京菓子資料館」や虎屋の「菓子資料室」などは、見ているだけでも非常に楽しめます。あるいは、金沢にある森八の「金沢菓子木型美術館」は干菓子用の木型に特化した博物館施設です。例として挙げたこの3つの博物館施設は和菓子に特化したもので、現地で主菓子と抹茶などをいただける喫茶店も併設されており、実際に味わって体験することも出来ます。

 筆者が最近たずねたところで面白かったのは、兵庫県たつの市にある「揖保乃糸資料館 そうめんの里」です。こちらは素麺の「揖保乃糸」 についての博物館です。素麺の歴史と、製品として出来るまでの工程について詳しく説明されています。こちらもレストランが併設されており、実際に揖保乃糸を食べて、その味を体験することが出来ます。素麺というと夏場の冷たいものだけを想像されるかも知れませんが、こちらでは素麵を使った「素麺寿司」や揚げ蕎麦のように揚げた素麺にあんをかける「揚げ麺」、あたたかい「温麺(にゅうめん)」などもあり、また夏場は屋外で流しそうめんの体験も出来るようになっています。

そうめんを延ばすたいけん学習が出来る。
昔の作業の様子なども写真で展示されている。

 このように、ただ見るだけの博物館施設だけではなく、体験することで多くの知識や経験を持ち帰ることが出来る施設もたくさんあります。特に筆者は食べることが好きなので、今回は口に入るものばかりをご紹介しましたが、それ以外にものを作る体験なども出来る施設もたくさんあります。
 ここまで3回にわたって博物館施設の展示などについて紹介しましたが、博物館施設を難しいもの、敷居の高いものと思わずに、より判りやすく、子どもにも楽しめる施設は各地にあります。これを機会に、気軽に子どもと体験して学ぶ施設として活用されるのもいかがでしょうか。





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