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【感想】引きこもり課題のあるご家族へアプローチする記事を拝見して

リンクを貼らせていただいた記事を拝見して、日々の現場での実践の中で感じることも交えながら少し書いてみよう思い、キーボードを叩いています。

はじめに助言を受けて、最終的にお母様が選択された行動をリスペクトします。
今まで、お母様なりにご家族の均衡を保ちながら、これが今自分が出来るbetterだと信じて家族を守ってきたのではないかと思うのです。

そんな中で、妻として、母としての自身を支えてきた行動や考えを手放しアクションをされた。そしてそれも必ずしも吉と出るかは分からない。怖かったと思います。

ですが、その一歩がなければ家族内の新しい関係性、出会いもなかったでしょうし、それぞれの人生への新たな展望も浮上してくることはなかっただろうと思います。

私もこの記事のご両親とお子様のような世代の人達と接する機会が現場の中でこれまでもありましたし、今もあります。
と言っても、事情は各世帯異なるため、一律に同じように語ることはできません。

本当に家族ごとに、様々な歴史、ストーリーがあることをこうした仕事をさせていただき、学ばせていただいています。

ただ、これからのご両親、そしてご本人の生活、人生を考えると世帯を分けて生活できるステージを目指していくことを応援したいと思う点は、どの世帯に対しても共通しています。


私自身は今現在で言うと、上記のようなご本人、ご両親双方の自立といった方針が立てられた中で、紹介いただき関わりをスタートさせるような部署で支援の役割を担っています。

その中では、この記事より半歩進んだ状況からスタートはするのですが、このお母様の覚悟、そして勇気をどれだけ持ち続けられるのかというところに関しても、それぞれの人生を回復していくにあたっては障壁があるように感じています。

『ご家族は、一度の覚悟だけではなく、ここから暫くの間何度も何度もお子様との関係に関して、この記事のお言葉を借りるとするならば「親をおりる覚悟」をしなければならないのだろうな』
と。

そのために費やす精神的な負担、エネルギーを思うと頭が下がります。
まして8050問題と表現されるような世帯の中では特にご両親はあとどのくらい子どもと一緒にいられる時間が残されているだろうか?と現実的な不安感も大きいだろうと想像します。

立場を変わることはできないけれど、どうしたらその思いを支えることができるだろう?とわたしはわたしの日常(仕事)において自問自答しているところです。

自立のためにご本人も、家族も覚悟を決めて、世帯を分けるための取り組みを始めたからと言って、これまで長年作られてきた双方の人間関係もすぐにシフトするわけではありません。
これは、実際に関わりの中で体験することが多い感覚です。

ご本人の立場からすると、これまで何かあった時の感情の捌け口や相談先は両親でした。それを今後は、まだ素性もあまり分からない第三者にしていく。
それは簡単なことではないでしょう。関係性が乏しい初期については特に、私たちが思うほど簡単なことではないと思います。

その想いも汲み取りながら、私たちは少しずつ互いを分かち合いながら信頼を得ていかなければなりません。ご本人も、両親以外の人間を受け入れていくと言う勇気が育くまれることが要求され、葛藤をしながらも少しずつ私たちを受け入れようと努力することが必要とされます。

ご両親の立場から言っても、「親」という立場から距離をとることが求められるかと思います。

自分自身も望んだ方針だとしても、
『お子さんには健康でいてほしい』
『元気でいてほしいし』
『辛い思いをなるべくしないで欲しい』

など、強く願いながら手を離すご両親が多いように思います。特にお母様の方がその思いは強いと感じます。「自立する」ということが、痛みを伴う過程を踏む必要があることを頭のどこかでは分かっていても。

特に精神障害を抱えるお子さんに対しては、再発のリスクも過去の経緯からどうしたって考えてしまうかと思います。

そんなところから、いざ実際に世帯を分けてみた時に、ご両親の役割を再定義し、これまで両親が担ってきた役割の一部を支援者が引き継いでいくようなプランを一緒に考えたとします。
それでも今までの生活水準と比べご本人の生活にギャップがあったり、本人から「辛い」「大変だ」などとメッセージがあればやってあげたいと思いのが本音でしょう。

結果として物理的には離れていても、実際の精神的なものや生活の距離感は今までと同じとなり、それは支援方針とも相まってしまうような状況が起きてしまうのです。
今までの「子である」「親である」という関係に違いに依存してしまっているような状態です。

頭では分かっていても、新しい距離感と今までの距離感との間にジレンマを感じる方もいれば、無自覚な方にやってしまわれる方もいらっしゃいます。


文中にもある

「誰に対しても自助自立を強要する、ここ30年来の社会的排除の結果、親子が運命共同体になってしまい、孤立して生きることを受動的に選択せざるを得なかったのだと思います。『相互扶助』や『共生』ではなく、『自己責任』を強いられる社会は、弱者には非常に苦しい。社会から退去せざるを得ず、“命のその日暮らし”をするしかない親と子が、どれほどいることか」

 社会から孤立した生活を長年にわたり維持してきた8050の親子に、無理やり外側から介入し、生活を変える支援を押し付けることは暴力的な側面がある、と注意喚起する。

AERA dot.紹介記事より

記事の中盤にありました、この文章にはとても打たれるものがありました。

先ほど書いたようなジレンマに対して、私たちはもちろんご本人へも、ご家族へもアプローチをします。
新しい立ち位置、役割を生きてみれるように。

ですが、こうした社会的背景というものも改めて念頭に置き、そこから関わらせていただいている家族という一つのグループを理解し関わらなければと思いました。

そして、末尾に紹介されている別の家族の話も大変べん急になりました。

支援者の明石さんが長男さんとの関係性に関して最初は拒否されたところから始まりながらも、関わり続け、「どうやって快適に引きこもれるか、一緒に考えようよ。」という言葉をかけたところ「僕は親の家でなんか暮らしたくない」という長男さんのお気持ちを引き出した。

上手く言えないんですが、このさり気ないやりとりが、今のわたしには凄いなと。
「うわー、痺れるわ」と心の中で言ってました。

長男さんはこれがきっかけで、長男さんの人生が動いていく。記事ではさらっと結果が述べられていますが、そこから今の生活を手にするまでも、きっと様々なプロセスがあったことと思います。

お父様やお母様はどう思ったのだろう?
今の長男さんの暮らしをどう思っているのだろう?
実現にあたってどんな支援をしたのだろう?

とかですね。

最初の家族への支援も含めて、明石さんの言語化されていないニーズを拾い出し、本人様を、ご両親がハッとして、新しい行動を選択できるような関わりに力不足も感じますが挑戦していきたいとこの記事を拝見して、力をいただきました。

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