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短編小説Vol.18「失恋の近道」

城島まことは、青春の最終章を過ごしていた。

名門校の高校3年生、サッカー部の一員でありながら、その日々は女遊びという名の快楽に彩られていた。
友人は多いが、その背後では嫉妬の眼差しも存在した。 

男子校という特殊な環境しか知らない彼は、異性を対等な人間としてではなく、ある種の所有物として扱う節があった。
すでに進学先も決まり、全身全霊でぶつかる何かもどこにもなく、生活に刺激を求めていた。
そして、賭け麻雀という別の逃避行にも身を投じていた。

彼の生い立ちは、一見すると恵まれているように映った。
しかし、その幸運から得られる恩恵は、まことにとっては魂を満たすものではなかった。

一方、苑子は異なる世界の住人だった。
彼女は高校2年生で、近くの女子校に通っていた。
もの静かで控えめな性格だが、その可愛さは私立学校界隈で隠れた話題となっていた。
彼女は顔を見られることを避け、SNSはせず、友人のインスタグラムを通じてのみ外界とつながっていた。


二人の関係はまことが女性を勲章のように扱う生活に疑問を抱き始めた頃に始まった。

ある日、まことは学校を抜け出し、繁華街で麻雀を楽しんだ帰り、友人たちと合流することになる。
この集まりには、近くの女子校の生徒も合流していて、偶然にも苑子も含まれていた。

彼の目の前には、もの静かでありながら、その存在感だけで空間を明るくする苑子が座っていた。
彼女は時折、小さな笑顔を見せるたびに、まことの心は強く引き寄せられる。

食事が進むにつれ、彼らの間には初対面とは思えないほどの心地よい空気が流れていた。
それは、互いに異性としてではなく、一人の人間として真剣に向き合っているからこそ生まれる、特別な雰囲気だった。

まことは、この夜、苑子との出会いが自分にとって特別な意味を持っていることを感じ取っていた。
彼女と再び会うためには、今、勇気を出さなければならないと心に決めていた。

食事が終わりに近づくと、まことは少し緊張した面持ちで、苑子に向き直った。
彼の心臓は、これから言おうとする言葉の重みで早鐘を打っていた。

「今日は本当に楽しい時間を過ごせました。こんな僕ですが、もしよければ、また一緒にどこかへ行きませんか?」
まことの声は少し震えていたが、その眼差しには純粋な願いが込められていた。

苑子は少し驚いた表情を見せた後、静かに微笑んで頷いた。
そして、彼女は小さな声で、しかし確かな意志を持って、「はい、いいですよ」と答えた。

その瞬間、まことの心には大きな安堵感が広がった。
彼は、自分の中に新たな感情が芽生えていることを実感し、それがこれまでにないほど温かく、貴重なものであることを感じ取っていた。

苑子が携帯を取り出して、連絡先を交換する間、二人の間には新たな約束の始まりを予感させる、言葉にできないほどの喜びが満ち溢れていた。
まことは、苑子の連絡先を手に入れた瞬間、これまでに感じたことのない充実感と幸福感に包まれた。
彼にとって、この出会いはただの偶然ではなく、自分自身を見つめ直すきっかけとなる重要な出来事だったのだ。

彼らが店を後にするとき、夜の帳が静かに街を覆い始めていた。
しかし、まことの心の中には、苑子との新たな始まりへの希望が、明るい光として輝き始めていた。

後日、2人だけで再会する。

彼が選んだ食事の場所は、街の喧騒から少し離れた、温かな灯りが漏れる小さな居酒屋だった。
店の中に足を踏み入れると、ほの暗い照明が心地よい雰囲気であった。

苑子は、隅のテーブルに静かに座り、控えめに笑みを浮かべていた。
彼女の姿は、まことがこれまで出会ってきたどの女性とも異なり、何か神秘的な魅力を放っていた。
そのことをまことは再認識した。

彼は、彼女の静かな存在感に引き込まれるように、自然とその場の雰囲気に溶け込んでいった。

食事が進むにつれ、まだ会って2回目にも関わらず、彼らの間には自然と会話が生まれた。
苑子の声は小さく、しかし彼女が口にする言葉一つ一つには、重みがあった。
まことは彼女の言葉に耳を傾け、自分が今まで経験してこなかった種類の興味を感じ始めていた。

その夜、彼らは街の灯りが煌々と輝く中、長い会話を交わした。
まことは苑子に対して、これまでにないほど真剣に自分の思いを伝えようとした。
彼は、自分の中に渦巻く感情の変化に気づき、戸惑いながらも、その新たな感覚に心を開いていく。

苑子との別れ際、まことはふとした瞬間に彼女の表情に心を奪われた。
彼女の瞳は、夜空に浮かぶ星のように輝いており、その深淵な輝きは彼の心の奥深くに刻まれた。
彼は、彼女との出会いが自分の内面に大きな変化をもたらしたことを感じ、苑子に対する深い感謝と尊敬の念を抱いていた。

告白の瞬間、まことは自分の心の底から湧き上がる真実の感情を苑子に伝えた。
彼の声は震えていたが、その言葉には確かな決意が込められていた。

ただ、彼女の静かな拒絶は、まことにとって予期せぬ打撃だった。
が、同時にそれは彼にとっての新たな始まりでもあった。

その夜、まことは一人、街を歩いた。
街灯の光が彼の影を長く伸ばし、彼はその影と共に、これまでにないほど深い自己反省に耽っていた。
彼は失恋の痛みを感じながらも、それに全力でぶつかることで得られることがあると、ひしひしと感じていた。
彼の心には、この社会に対する新たな希望の灯がともり始めていた。

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