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大腿骨近位部骨折後,6週間で骨格筋量は9%落ちる


📖 文献情報 と 抄録和訳

大腿骨脆弱性骨折後、骨格筋量の大幅な減少が起こる

📕Willey, Michael C., et al. "Substantial Loss of Skeletal Muscle Mass Occurs After Femoral Fragility Fracture." JBJS 105.22 (2023): 1777-1785. https://doi.org/10.2106/JBJS.23.00353
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[背景・目的] 高齢者の大腿骨脆弱性骨折は、身体機能と自立性の壊滅的な喪失をもたらす。骨格筋の萎縮が身体障害に寄与している可能性が高い。本研究の目的は、骨格筋量の変化の特徴を明らかにし、栄養不良および身体機能との関係を調査し、骨格筋喪失の危険因子を同定することである。

[方法] 孤立性大腿骨脆弱性骨折の手術固定術を受けた65歳以上の成人を、この多施設共同前向き観察研究に登録した。骨格筋量は入院後72時間以内に多周波生体電気インピーダンス分析を用いて評価し、6週後、3ヵ月後、6ヵ月後に繰り返した。サルコペニアは付属器骨格筋量指数の性特異的カットオフ値により定義した。Mini Nutritional Assessmentを用いて受傷時の栄養状態を測定した。身体機能はPatient-Reported Outcomes Measurement Information System(PROMIS)の身体機能領域を用いて測定した。線形混合モデルを用いて、骨格筋量およびPROMIS身体機能スコアの経時的変化を評価し、骨格筋量の変化に関連する因子を評価した。

✅ 体組成の測定方法
・InBody S10を使用し、仰臥位で体組成を測定
・手と足に合計8つの電極を付け、6つの異なる周波数で電気インピーダンスを測定
・除脂肪体重、骨格筋量、脂肪量を測定する

[結果] 90名(74%女性)、平均年齢77.6±9.0歳が登録された。受傷時、30名(33%)がサルコペニアであり、44名(49%)が栄養不良のリスクがあるか栄養不良であった。高齢は骨格筋量の低下と関連していた(75歳以上対75歳未満:最小二乗平均[および標準誤差]、-3.3±1.6kg;p=0.042)
受傷から6週間までに、参加者は平均2.4kg(9%)の骨格筋量を失った(95%信頼区間[CI]=-3.0~-1.8kg;p<0.001)。この早期の損失は6ヵ月までに回復しなかった(ベースラインと比較して1.8kgの持続的損失[95%CI = -2.5 to -1.1kg];p<0.001)。栄養状態が正常であった参加者は、栄養不良であった参加者と比較して、ベースラインから受傷後6週までに骨格筋量がより多く減少した(1.3kg多く減少[標準誤差、0.6kg];p = 0.036)

骨格筋量の1kgの減少は、PROMIS身体機能の8ポイントの減少と関連していた(モデルパラメータ推定値、0.12[標準誤差、0.04];p = 0.002)。

[結論] 大腿骨脆弱性骨折を有する高齢者は、骨格筋量および身体機能をかなり喪失していることが明らかになった。ベースラインの栄養状態が十分であった参加者は、栄養不良であった参加者よりも実際に多くの筋肉量を失っており、筋肉量の減少を予防するための介入に関する今後の調査は、栄養状態にかかわらず高齢者に焦点を当てるべきであることを示している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「いやぁ、足が細くなったなぁ〜」
「(入浴時)鏡で自分の姿を見て、嫌になっちゃったわ」

というような話は、臨床上よく耳にする。
また、下肢の腫脹と相殺されて見落としがちだが、筋量は確かにかなり落ちていそうな印象だった。
今回の研究によって、実に9%もの骨格筋量が受傷から6週間の間に落ちることが示された。

そして、この6週間という期間は、まさに集中的リハビリテーション(入院でのリハ)の適応期間。
気になるところとしては、この筋量減少が受傷-手術による不可避な現象なのか、それともリハビリテーション介入によって防ぐ、あるいは軽減させることのできる現象なのか、というところだ。
これを知るためには、ミクロな病態的な側面を明らかにするとともに、介入研究が必要になろう。

まあとにかく、次に「いやぁ、足が細くなったなぁ〜」と言われたら、
「お怪我をされてから6週間で、9%も落ちてしまうみたいですよ。筋トレ頑張りましょうね」と言おうと思う。
筋トレの必要性に関する説明が、また1つ強化された。

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