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鉄は熱いうちに打て。術後1週間の容量依存的な効果

📖 文献情報 と 抄録和訳

大腿骨近位部骨折手術後の退院における理学療法の頻度、期間、種類の影響:英国全国連動監査データの二次分析

Goubar, Aicha, et al. "The impact of the frequency, duration and type of physiotherapy on discharge after hip fracture surgery: a secondary analysis of UK national linked audit data." Osteoporosis International 33.4 (2022): 839-850. https://doi.org/10.1007/s00198-021-06195-9

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

🔑 Key points
- 術後1週目の理学療法の追加は、大腿骨近位部骨折手術後の退院までの日数短縮と関連していた。
- 大腿骨近位部骨折患者のケアの質を評価するための新たな指標として、術後1週間における7日間の理学療法サービス(> 2h/day)を検討することが必要である。

[背景・目的] 大腿骨近位部骨折術後1週間の理学療法と急性期病院からの退院との関連を検討すること。

[方法] UK Physiotherapy Hip Fracture Sprint Auditのデータを,2017年5月と6月の大腿骨近位部骨折患者5395人の病院記録とリンクさせた。交絡因子と死亡の競合リスクを調整した比例オッズ回帰を用いて,患者が術後第1週に理学療法を受けた日数,その全体期間(2時間未満,2時間以上,30分単位)および種類(モビライゼーションのみ,モビライゼーションと運動)と30日間の急性期病院からの退院の累積確率の関連を推定した。

[結果] 退院の粗オッズ比および調整オッズ比は、理学療法1日追加で1.24(95%CI 1.19-1.30)および1.26(95%CI 1.19-1.33)、2時間以上と2時間未満で1.34(95%CI 1.18-1.52)および1.33(95%CI 1.12-1.57)、30分間の追加理学療法では1.11(95%CI 1.08-1.15)と1.10(95%CI 1.05-1.15)であった。理学療法の種類は退院との関連はなかった。

[結論] 年間375人の患者が入院する英国の平均的な病院では、現在のサービスを増やすことで、すべての大腿骨近位部骨折患者が術後1週間に6~7日間理学療法を受けることができれば、456日のベッドデーを節約できる可能性がある。術後1週間に少なくとも2時間の理学療法を7日間提供することは、大腿骨近位部骨折後の急性期医療の質を示す重要な指標と考えられる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

何にでも、ゴールデンタイムがある。
よく知られるところでは、脳血管疾患の運動麻痺の改善は大部分が発症3ヶ月以内に起こる(📕Ramsey, 2017 >>> doi.)。
また、脳構造の変化(📕Ishihara, 2021 >>> doi.)、筋の活性化(📕Woods, 2021 >>> doi.)、利き手の発達(📕Takeuchi, 2022 >>> doi.)にまでゴールデンタイムがある。
変わりやすい時期と、変わりにくい時期。
紅くなるまで熱せられた鉄が、そのときにだけ形を変えうるような現象が、人間の身体にもある。

そして、今回抄読した論文は、運動器疾患(大腿骨近位部骨折)患者においても治療のゴールデンタイムがある可能性を示した。
気になるのは、その仕組みである。
脳血管疾患リハ効果のゴールデンタイムの仕組みは「脳の可塑性」という観点から納得できる。
では、運動器疾患におけるゴールデンタイムの仕組みは何だろう。
残念ながら、この論文のIntroduction、Discussionにはヒントはなかった。
個人的な仮説としては、
- 創傷治癒プロセスとの関わり
- 早期筋力の回復
- 早期関節可動域の回復
- リハにより代謝傾向が変化する(異化→同化)
- リハ開始による患者心理の変化

などが考えられた。
これから、勉強を進めていこう。

運動器疾患患者へのリハビリ効果、そのGolden Time Windowを捉えたい。

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