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世代間別の目標嗜好性。肯定増加型 or 問題回避型

📖 文献情報 と 抄録和訳

よりポジティブに、あるいはよりネガティブに?成人期および老年期における感情目標と感情調節の戦術

📕Wolfe, Hannah E., Kimberly M. Livingstone, and Derek M. Isaacowitz. "More Positive or Less Negative? Emotional Goals and Emotion Regulation Tactics in Adulthood and Old Age." The Journals of Gerontology: Series B (2022). https://doi.org/10.1093/geronb/gbac061
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[背景・目的] 身体機能や認知機能が低下しているにもかかわらず、高齢者はより高いレベルの感情的幸福を報告している. 動機づけの説明では、目標の違いが感情調節行動の違いを通じて情動の年齢差をもたらすことが示唆されているが、感情調節戦術の使用における年齢差の証拠は一貫していない。感情調節の戦術(すなわち、戦略の実行方法)は、より大きな年齢差を明らかにする可能性がある。具体的には、本研究では、高齢者が積極性追求戦術と否定性回避戦術のどちらに依存するか、また目標が戦術の使用を変化させるかについて検証した。

[方法] 成人寿命サンプル(年齢18-90、N = 211)は、4つの目標条件(ただ見る、情報を探す、肯定を増やす(肯定増加型)、否定を減らす(問題回避型))のいずれかに割り当てられながら、3つの異なる感情調整課題を行った。ポジティブ探索、ネガティブ回避、ネガティブ探索の3つの戦術を、ポジティブ、ネガティブ、ニュートラルな刺激に関わる時間を比較することで測定した。

[結果] 目標指示は、戦術の使用と感情的な結果に影響を与える場合があるのみであった。その代わりに、若年成人は一貫して肯定的探索戦術を好み高齢成人は否定的回避戦術を好む傾向がみられた。

[結論] 高齢者は、積極性よりも消極性の回避を特徴とする。目標の操作によって、これらの加齢に関連した傾向が修正されることはない。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

強みに光を当てるんだ。
良い部分に光を当てるんだ。
その方が人のモチベーションは高まる。
結果的に、行動を促し良い帰結を生む。
だって、僕がそうだから!!!

間違っちゃいない。
決して間違っちゃいない。
だけれども、それは思い込みだ。
特に、最後の一行「だって、僕がそうだから!!!」はいただけない。
お前がそうだからといって、万人がそうというわけではない。

今回の研究を見ると、高齢者と目標を共有する際の第一選択は、肯定増加型よりも『問題回避型』を選択した方がいいのかもしれない。
何かを得る目標よりも、何かを避ける目標に。

✅ 目標設定の例:身体活動量
■ 肯定増加型
「身体活動量を増やすことで、健康寿命が延長し、楽観的な心が得られ、良好な歩行能力が得られます。それを目標に頑張りましょう!」
■ 問題回避型
「身体活動量を増やすことで、死亡リスクを減らし、うつ病を回避し、転倒を防げるかもしれません。危険を避けるために、今から運動を頑張りましょう!」

スライド2

問題回避型の目標は、ただ相手に恐怖や畏怖を与えるだけで、行動を促さない。
そう、思っていた。
でも、それは完全に僕の思い込みであったようだ。
問題回避型の目標を好み、その目標の方が心に浸透しやすく、行動につながりやすい人もいる。
若年者は肯定増加型を、高齢者は問題回避型を好む傾向がある。
目標提示の第一選択は、世代間別に選択されるべきかもしれない。

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