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運動処方における心血管系評価の推奨


📖 文献情報 と 抄録和訳

臨床運動処方に役立つ客観的心血管系評価の推奨: 運動生理学者と理学療法士の専門家によるコンセンサス

📕Gower, Bethany, et al. "Recommendations for objective cardiovascular assessment to inform clinical exercise prescription: An Exercise Physiologist and Physiotherapist expert consensus." Journal of Science and Medicine in Sport (2023). https://doi.org/10.1016/j.jsams.2023.07.004
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[背景・目的] 運動は心血管系の健康管理に有益である。心血管系機能の客観的評価は、労作症状の有無、安全で効果的な運動プログラムに必要な機能的・生理的閾値の特定に役立つ。本研究は、臨床運動サービスを提供する専門家の臨床的意思決定を支援するために、心血管系機能の評価について専門家のコンセンサスを得ることを目的とした。

[方法] デザイン3ラウンドのe-デルファイ法。方法専門家である運動生理学者と理学療法士がe-Delphiに参加するために募集された。専門家には、安全で効果的な運動処方のために必要と考えられる客観的な心血管評価をすべて挙げてもらった。その後のe-Delphiラウンドにおいて、専門家は各項目の重要性を評価し、その主張を支持する根拠を提供し、他の人の評価と根拠を再考して自分の立場を変更または再確認した。これらの結果は、循環器専門医と循環器評価に精通した経験豊富な運動生理学者との協議のもと、著者らによって臨床ガイダンス文書にまとめられた。

[結果] 31名の専門家がe-Delphiに参加し、14名が3ラウンドすべてを完了した。最初に40の客観的評価が提案された。第2ラウンド終了時までに6項目がコンセンサスに達した(安静時および運動時の心拍数、安静時、運動時、回復時の血圧、ピーク時の運動誘発性主観的運動強度)。第3ラウンドではさらに1項目(運動時酸素飽和度)がコンセンサスに達した。

■ 推奨❶:心拍 Heart Rate
運動開始の安全性を確立し、運動刺激に対する心拍数反応を評価するために、安静時および運動中に心拍数を測定すべきである。運動負荷は、安全な運動強度の処方を目的としたレベル以上であるべきである。

■ 推奨❷:血圧 Blood Pressure
運動開始の安全性を確立し、運動刺激に対する血行動態反応を評価するために、運動前、運動中、運動後に血圧を測定すべきである。血圧反応が適切であることを確認するために、運動検査刺激は運動処方または参加に予想される強度の範囲に及ぶべきである。運動後の血圧をモニターして、血圧が許容レベルまで回復していることを確認することが重要である。

■ 推奨❸:主観的運動強度 Rating of Perceived Exertion
主観的運動強度評価(RPE)は、個人の運動強度の知覚を示すものであり、様々な運動強度にわたって評価されるべきである。RPEは、監視下および監視外の環境における運動強度のモニタリングや処方に用いることができ、心拍数が運動強度を正確に反映しない可能性のある個人(心拍数をコントロールする薬を服用している人など)には特に有用である。

■ 推奨❹:運動時の酸素飽和度 Exercise Oxygen Saturation
酸素飽和度は、心肺機能の指標として、また運動誘発性のオキシヘモグロビン脱飽和の可能性を検出するために、運動中に測定される。標準的な測定法として推奨されるが、重篤な肺疾患/機能障害を併発している場合や、呼吸困難が存在する一部の心疾患での使用を支持するエビデンスがある。

[結論] 研究によるエビデンスがない場合、専門家パネルの集合的な経験と洞察は、エビデンスギャップを知らせることができる。CV評価が必要とされる実際の現場において、これら7つの評価の実施可能性を判断するためには、さらなる研究が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「どのくらい疲れましたか?この中で当てはまるところを指さしてください」

主観的運動強度を測ること。
エルゴメータ、トレッドミル、有酸素運動後の慣例。
ここは、毎回測られるところであろう。

心拍数を測ること。
こちらも慣例的にされている。

だが、血圧、酸素飽和度、これに関してはいかが?
毎回、しっかりと計測した上でできているだろうか。
そう自問すると、『Yes』ではないと思う。

じゃあ、測られる指標と、測られない指標、その差は何?
開けっぴろげに言えば、『労力(手間)』の影響が大きいと思っている。
主観的運動強度を計測するのは「楽」です。問いかけに答えていただくだけなので。
心拍数を測ることは「楽」です、機械で運動中に測る仕組みがありますので。

血圧、酸素飽和度。
これに関しては、まず道具を持ってきて、計測して(特に血圧は時間がかかる)、記録する。
これは「手間」です。
「おいおい、そんな『手間』のために、測ったり、測らなかったりするんかい?」
ここは、現実に起こっていることと、正直に向き合いたい。
理念的には、全部測った方がより良いことは、誰しもが知っている。
だが、そうしていない場合が多いことも、現実ではないか?
どうですか?
その現実の理由と、向き合う必要があると思っていて、それなくしては、現実が変わることはなさそうだ。

さて。
極論、医療とは、いやすべて仕事とは、「手間」との戦いであるとすら還元できないか?
だって、手間がかかるから、勉強するのが大変なんでしょう?
その集団が見れる単位数の上限があるのでしょう(法律は別として)?
やる集団とやらない集団の差が生まれるのでしょう?

いつの日だったか、子どものおもちゃを買いに行ったときのこと。
店員さんが、おもちゃの管理について、妙に細かいことを言ってきた。
店員:「ビーズは、何か入れ物に入れてあげてくださいね」
店員:「それから、入れ物は『浅い』ものにしてあげてください」
僕は、理由が気になったので聞いてみた。
:「どうしてですか?」
店員:「子供って、ちょっとのことで、やったり、やらなかったり、するんですよねぇ。」
これは金言である。
人生とは、手間との、面倒との戦いであって、その勝利者は、人生の勝利者だ。

コンセンサスは示された。
僕は、手間に負けたくはないのだ。
手間に打ち勝って、少しでも質の高いリハビリテーションを!、心よりそう思っている。
まずは、血圧計と酸素飽和度測定装置を、エルゴメータ脇に設置する努力から始めたい。

『もう無理!』って思ったらやめるべき
『面倒臭い!』って思ったら続けるべき

峰不二子

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