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クローズドループ脳電気刺激。日本発パーキンソン病者の歩行改善介入


📖 文献情報 と 抄録和訳

歩行-閉ループ脳刺激はパーキンソン病性歩行障害における歩行ダイナミクスを改善する:無作為化対照試験

📕Nojima, Ippei, et al. "Gait-combined closed-loop brain stimulation can improve walking dynamics in Parkinsonian gait disturbances: a randomised-control trial." Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry (2023). http://dx.doi.org/10.1136/jnnp-2022-329966
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[背景・目的] 歩行障害はパーキンソン病(Parkinson’s disease, PD)および関連疾患患者の日常生活動作を低下させる。しかし、薬理学的治療、外科的治療、リハビリテーション治療の効果は限られている。我々は最近、健常ボランティアと脳卒中後遺症患者を対象に、歩行を組み合わせた閉ループ経頭蓋電気刺激(transcranial electrical stimulation, tES)を用いた新しい神経調節アプローチを開発し、歩行リズムの有意な同調と歩行速度の向上を達成した。今回、パーキンソン病性歩行障害を有する患者において、この介入の有効性を検証した。

[方法] 23名の患者を、個々に設定した快適な歩行リズムの周波数で、小脳上の歩行複合閉ループ電気刺激を用いた実際の介入群と、偽の対照群に無作為に割り付けた。

✅ 閉(クローズド)ループ脳電気刺激とは?
・対象者の運動や生体情報をリアルタイムに解析し、その解析結果に基づいて刺激を調整することで、個々人にあった刺激を実施する方法。

🌍 参考サイト >>> site.

[結果] 全患者に対して10回の介入セッションが行われ、歩行速度(F(1, 21)=13.0, p=0.002)と歩幅(F(1, 21)=8.9, p=0.007)がtES後に有意に増加したが、偽刺激後には増加しなかった。さらに、遊脚相時間で測定した歩行対称性(F(1, 21)=11.9, p=0.002)と、すくみ足に関する主観的感情(F(1, 21)=14.9, p=0.001)は、歩行中に有意に改善した。

[結論] 以上の所見から、脳に対する歩行複合閉ループtESは、おそらく歩行リズムを生成する脳ネットワークの調節を介して、パーキンソン病の歩行障害を改善することが示された。この新しい非薬理学的・非侵襲的介入は、PDおよび関連疾患患者の歩行機能を回復させる画期的な方法となる可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

パーキンソン病の病態レベルの問題は、脳の中で起きている。
にも関わらず、理学療法士の介入は四肢や体幹の運動から、脳に働きかけていくという、かなり間接的なものだ。
だが、本丸に直接踏み込んだ方が、効果は大きかろう。

今回の介入は、脳への電気刺激をリアルタイムに行いながら、歩行練習を実施できる。
つまり中枢への介入と末梢からの働きかけを同時に行う。
そして、その効果としても、歩行を改善させるものだった。

日本初の介入方法という点も尊い。
今後もこの技術を用いた介入研究など、注意していこう。
パーキンソン病者への介入に、脳刺激は魅力的に思える。

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