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臨床行動の評価は自己報告でなく,行動観察でせよ

📖 文献情報 と 抄録和訳

理学療法士は行動医学的なアプローチを実践しているか?認識された実践行動と観察された実践行動の比較

📕Fritz, Johanna, and Thomas Overmeer. "Do Physical Therapists Practice a Behavioral Medicine Approach? A Comparison of Perceived and Observed Practice Behaviors." Physical Therapy (2023): pzad025. https://doi.org/10.1093/ptj/pzad025
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

[背景・目的] 筋骨格系疼痛を管理する理学療法では、生物心理社会的な視点と行動変容の技法を取り入れた行動医学的アプローチが推奨されている。しかし、理学療法士の行動医学的アプローチに関する実際の実践行動についてはほとんど知られていない。本研究の目的は、プライマリーヘルスケアに従事する理学療法士が、持続的な筋骨格系疼痛を有する患者の評価と治療における行動医学的アプローチに関する自身の実践行動を、独立した専門家が患者の診察のビデオ録画で観察した行動医学的アプローチの実践方法と比較してどのように判断するかを調べることであった。

[方法] 前向きコホート研究を実施した。139人の患者の診察における23人の理学療法士の臨床行動をビデオ録画し、独立した専門家が観察し、58の観察可能な臨床行動を含むプロトコルを用いて、理学療法士の自己報告による実践行動と比較した。観察された臨床行動と自己報告された臨床行動の差は、カイ二乗検定とフィッシャーエクセル検定で分析された。

[結果] 行動医学的アプローチは、一般的に小さな範囲で実践されており、観察された行動と比較すると、自己申告された臨床行動の半数は過大評価されていた。観察によると、評価と治療において身体的視点が支配的で、機能的行動分析が行われることはなく、使用された行動変容技法の平均数は0.7であることが判明した。

[結論] 理学療法士が臨床行動において行動医学的アプローチをどの程度実践しているかを認識していることと、独立研究者がビデオ録画で観察したこととの間には、食い違いがあった。

[臨床意義] 本研究は、専門家の臨床行動を評価する際に、自己報告ではなく、観察を用いることの重要性を示している。また、理学療法が健康の生物心理社会モデルを確実に統合するために、理学療法士は臨床実践において心理社会的要因に焦点を合わせる必要があることも示唆された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

言行一致、という諺がある。
その意は、発言した内容と行動が同じで、矛盾が生じていないこと。
これほど単純で、これほど重要で、だがしかし、これほど難しいことはない。

現実を言葉にするとき、そこには数多のバイアスが加わる。
・自身の能力の誇示
・見誤り
・定義の理解の不十分さ
・etc...

つまり、現実を評価者の自己報告に委ねることは、まあ、現実から歪まない評価にとっては望ましくない。
じゃあどうするか?
あるがまま、現実を見れば良い、観察すれば良い、ということになる。
だから、セラピストの評価をする際に、「ちゃんとやっている?」→「はい。」には大きなリスクがある。
それよりも、行動観察する方が確実なのかもしれない。
人の言葉からの判断のみに終始せず、人の行動を見て、是非を下す、共有する。
現実を歪めた先には、何もない。
あるがままの現実を受け止めてはじめて、生長が生まれると信じる。

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