投球動作における筋シナジー
📖 文献情報 と 抄録和訳
男子大学生野球選手の野球投球動作における上肢筋シナジーの個人間差
[背景・目的] 投げることは、狩猟や捕食者に対する防御のために進化してきた人間の基本的な運動行動である。現代人においては、正確な投球は多くのスポーツで必要とされる重要なスキルである。しかし、野球の投球動作における筋の時空間的な連動性については、十分に解明されていない。本研究では、野球の投球に関わる筋シナジーを明らかにし、その時空間的パターンが個人間で共有されているかどうかを明らかにすることを目的とした。
[方法] 本研究には、10名の大学野球選手が参加した。投球時に同側の上肢13筋から筋電図活動を記録した。非負行列因子分解法を用いて、投球時の運動モジュール構成と時間的活性化パターンを抽出し、その後、k-means分析を用いて、抽出した運動モジュールをその類似性に基づいてクラスタリングした。
[結果] 各選手について、4つの運動モジュールが抽出された。
また、個人差のある筋シナジーは見られなかった。
[結論] これらの結果から、長年の練習によって獲得された熟練した野球の投球動作は、時空間パターンに多少の違いはあるものの、個人間で共通する4つの基本的な筋シナジーで構成されている可能性が示唆された。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
タイトルにもしたが、いよいよきた。
近年、筋シナジー関連の研究が急増しており、文献抄読でもいくつか扱った(⬇︎ 関連 note✨参照)。
筋シナジーとは多数の筋の活動に見られる協調構造を意味しており、端的に言えば複数の筋の同時活動のことである。
つまり、複数筋に指令が共同入力された運動、と言える。
筋シナジーは、歩行において多く研究されており、脳卒中によって筋シナジーにどのような影響が及ぶか、という部分も研究の光が当たっている。
いずれ、投球動作にもその光が当たるだろうな、とは思っていたが、いよいよきた。
その内容は、Module1→4にかけて、投球動作中の筋活動として納得できるものだった。
これが、どのように治療に生かされるのだろう。
それは、歩行における筋シナジーの治療への生かし方をみると参考になる。
フェーズごとの筋シナジーモジュールをFES(Functional Electrical Stimulation)としてプログラミングして動作練習を行うのだ(📕Ferrante, 2016 >>> doi.)。
投球動作においてこの介入方法が可能になれば、『上級者の筋シナジー』を学習しやすくなるかもしれない。
面白くなってきた。
⬇︎ 関連 note✨
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