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慢性疼痛と脳体積

📖 文献情報 と 抄録和訳

日本人高齢者集団における慢性腰痛と脳局所萎縮の関連性:久山町研究

📕Asada, Masako, et al. "Association between chronic low back pain and regional brain atrophy in a Japanese older population: the Hisayama Study." Pain (2022): 10-1097. https://doi.org/10.1097/j.pain.0000000000002612
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[背景・目的] 慢性腰痛症(Chronic low back pain, CLBP)は、障害を伴う生活年数の主な原因となっています。近年、CLBPが中枢神経系の変化と関連していることが報告されている。本研究では、日本人高齢者を対象に、CLBPと脳局所萎縮の関連を検討することを目的とした。

[方法] 2017年から2018年にかけて、65歳以上の地域在住者計1106名が脳磁気共鳴画像検査と健康診断を受診した。脳磁気共鳴画像の解析にはFreeSurferというソフトウェアを使用した。慢性疼痛は、3ヶ月以上の主観的な痛みと定義した。

[結果] 参加者は、慢性疼痛の有無と主に痛みに苦しむ身体部位によって、「慢性疼痛なし(no chronic pain, NCP)」群(n=541)、「CLBP」群(n=189)、「腰以外の身体部位の慢性疼痛(other than the lower back, OCP)」群(n=376)の3群に分類された。CLBP群では、社会人口学的、身体的、生活習慣的要因およびうつ症状を調整した後、腹外側および背外側前頭前野、後部帯状回、扁桃体の脳容積がNCP群に比べ有意に小さかった。また、Query, Design, Estimate, Contrastインターフェースにより、左上前頭回が有意なクラスターとして同定された。NCP群とOCP群では、疼痛関連部位の脳体積に有意な差は認められなかった。

[結論] 本研究は、日本人の一般高齢者集団において、CLBPは疼痛関連領域の脳体積の低下と関連していることを示唆するものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

痛いときって、どうなると思う?
天に向かい、両手を突き上げ、開放的なガッツポーズをするだろうか。
いや、むしろ逆だ。
痛いときは、『縮こまる』
萎縮する。

そして今回の研究の結果を見ると、それは脳においてもそうであるらしい。
腰痛に限らず、慢性疼痛を有する者は、脳が萎縮することが明らかとなった。
何かに侵害を受け続けるというのは、まことに害である。

痛みをはじめとした侵害刺激は、何かを「無くす」「ブレーキをかける」「鎮圧する」作用を有する。
プラスのものをゼロに近づける。
出る杭を打つ。
害を除く、という意味合いにおいて、それは尊い営みなのだろうけれど。
その作用だけが強すぎると、人間はどこまでも萎縮し、小さくなってしまうだろう。
ゼロからプラスに向かう矢印を強めるために、何ができるだろう。
それは、赤信号を青信号に変えることで、慢性疼痛を軽減・消失させ、活動への勇気づけをすることだ。
きっと、僕たち理学療法士には、それができるだろうと思うし、期待されていると思う。
そのためには、・・・。勉強である。

赤信号をわたろうとしたこいつがワルイよ
ムリヤリ渡ろうとすれば事故にあう 幼稚園児でも知ってるぜ
赤は「止まれ」だ

スラムダンク

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