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失行症に対するリハビリテーション介入

📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中患者における四肢失行への介入の効果。ランダム化比較試験のメタアナリシス

📕Ji, Eun Kyu, and Jae Sung Kwon. "Effects of limb apraxia intervention in patients with stroke: A meta-analysis of randomized controlled trials." Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases 32.2 (2023): 106921. https://doi.org/10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2022.106921
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✅ 前提知識:失行に関するミニレビューと失行の種類
・疫学:失行は、認知機能障害による行動障害として起こることがあります。脳卒中患者の約10%が失行を発症すると報告されている(📕Cho, 2011 >>> google sholar.)。
・歴史:失行症という言葉は、1871年にドイツの言語学者ステニンタールが、日常的な道具(フォークやナイフ)を使うことができない失行症患者の症状を表すために初めて使用したものである(📕Pearce, 2009 >>> doi.)。
<失行の種類(🌍 参考サイト >>> site. )>
・観念運動失行(ideomotor apraxia, IMA):時間的・空間的な動き方に異常をきたしており、例えば道具を使わず、金づちを打っているまねの動作をしようとしてもできなかったり、「バイバイ」と手を振っていても、前後や斜めに手が動いたり一定の速度で動かすことができないなど
・観念失行(ideational apraxia, IA):観念運動性失行が単一物品の操作の問題であるのに対して、観念性失行は一連の運動連鎖が必要な行為が障害されるという違いがあります。道具の名前、使用方法も分かるのですが、「紙を折って封筒に入れる」といった一連の動作ができない状態。

[背景・目的] 脳卒中の合併症である失行症は、日常生活動作(ADL)の遂行に困難をもたらす。現在までのところ、失行症への介入の有効性に関する研究はない。我々は、失行症への介入による重症度の軽減とADLの改善効果を評価するためにメタアナリシスを実施した。

[方法] PubMed、Embase、CINAHL、Cochrane Libraryのデータベースを用いて、2021年12月まで失行症に関連するランダム化比較試験(RCT)の検索を実施した。全失行症(TA)、観念失行症(IA)、観念運動失行症(IMA)、ADLのサブグループにおいてアウトカム変数を測定した。質の評価には、Physiotherapy Evidence Database(PEDro)スケールを使用した。

[結果] 5つのRCTが選択され、310人の参加者のうち、155人が実験グループ、155人がコントロールグループであった。効果量分布にはランダム効果モデルが用いられた。失行症の介入方法としては、ジェスチャートレーニング、ストラテジートレーニング(それぞれ3研究、2研究)が挙げられた。サブグループにおけるアウトカム変数の効果量は、TAとIAがそれぞれ0.475(95%信頼区間[CI]:-0.151-1.102;p=0.137)、0.289(95%CI:-0.144-0.722;p=0.191)、と小さかった。IMAの効果量は0.731(95% CI: -0.062-1.525; p = 0.071)と中程度で統計的に有意ではなかったが、ADLの効果量は0.416(95% CI: 0.159-0.673; p = 0.002 )と小さく、統計的に有意だった。

✅ ジェスチャートレーニングとストラテジートレーニング
・ジェスチャートレーニング:他動的ジェスチャー(例:スプーンを使う)、自動詞的-象徴的ジェスチャー(例:挨拶)、自動詞的-非記象的ジェスチャー(例:第2指のみを立てる)からなる、回復的アプローチを用いた。他動的ジェスチャーのトレーニングは、3つのレベルに分かれており、次第に複雑になっていきました。最初のレベルでは、実際の道具を患者さんに見せました。第2レベルでは、使用中の道具の写真が示され、第3レベルでは、道具の写真(絵)が患者に示され、パントマイムを使って表現するように求められた。前のレベルの85%以上(17項目以上)をクリアすると次のレベルに進んだ(📕Smania, 2000 >>> doi.)。
・ストラテジートレーニング:ADLを行う際に失行による問題を最小限に抑えるために、内的・外的支援を行う代償アプローチを用いた。患者がADLを行う際、セラピストは活動参加段階を開始、実行、コントロールに分類し、治療戦略を用いて援助を行った。開始段階では、セラピストが指示(例:絵を使った詳しい説明)を行い、実行段階では、セラピストが援助(例:言語的合図や身体的指導)を行った。最後に、コントロールステージでは、患者が活動にうまく参加できるように、ビデオ録画による実施内容のフィードバックが行われた(📕Donkervoort, 2010 >>> doi.; Moinuddin, 2022 >>> doi.)。

[結論] ジェスチャートレーニングおよびストラテジートレーニングは、失行症の介入としてADLに統計的に有意な効果を示した。したがって、失行介在の有効性については、継続的なRCTによりさらに評価する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

そもそも、失行症の定義についてすら、知らなかった。
失行症の定義、効果的な介入方法、実際の効果量。
今回の論文を抄読する中で、たくさんの知識を得ることができた。

純粋に、知らないことを知ることは面白い。
次に失行症の患者を目の前にしたとき、僕はすぐにこの論文に戻って、孫引き、知識を再構築できるだろう。
勉強とは、極論、「無くさない作業」だと思っている。
いま、この瞬間の経験や勉強を記録し、すぐに引き出せる状態にしておく。
自分の人生のすべてが、積み上がるようにしておく。

失行症について、ほぼゼロだった僕の知識は、少し前進した。
次に、臨床経験や興味深い文献と出会ったとき、今回構築した最前線から、もう少し前に進むだろう。
個人内に、文明を持ちたい。

勉強、勉強、勉強のみよく奇跡を生む
自分を本当に生かしたいと思ったら、
人並み以上の勉強家にならなければならない

武者小路実篤

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