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腕総軌跡。投球バイオメカニクスとの関連


📖 文献情報 と 抄録和訳

プロ野球投手における腕の軌道、球速、肘関節外反トルクの関係

📕Dowling, Brittany, et al. "Relationship Between Arm Path, Ball Velocity, and Elbow Varus Torque in Professional Baseball Pitchers." Orthopaedic Journal of Sports Medicine 11.12 (2023): 23259671231202524. https://doi.org/10.1177/23259671231202524
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[背景・目的] 現在、ほとんどの投球指導者は、投球中の腕の総移動距離であるアームパスを短くすることを推奨している。理論的には、この組み合わせにより、肘関節の内反トルクを抑えながら、体節のシークエンスを向上させ、運動連鎖を通じてより効率的にエネルギーを伝達し、球速を向上させることができる。仮説:より短い腕の軌道は、球速の増加と肘関節の内反トルクの減少に関連する。

[方法] 研究デザイン:記述的実験室研究。合計182人のプロ投手が、3次元モーションキャプチャ(480Hz)で評価しながら8~12球の速球を投げた。腕軌跡は、投球中にハンドマーカーが移動した距離の合計として算出した。

✅ 腕総軌跡の算出方法、定義
・MKH:非投球側膝関節最大挙上、FC:非投球側下肢接地、BR:ボールリリース
・腕の早期軌道(MKH~FC)、腕の後期軌道(FC~BR)、および腕総軌跡(MKH~BR)を定義した。
・腕の軌道は、ハンドマーカーが移動した距離の合計をcm単位で測定して算出した。

線形回帰モデルにより、腕軌跡、肘内反トルク、球速の投手間関係を評価した。ランダム切片を用いた線形混合効果モデルにより、投手内関係を評価した。

[結果] 投手間比較では、腕総軌跡は肘関節内反トルクの大きさと弱い相関を示した(P = 0.025)。球速と早期(R2=0.788;P<0.001)、後期(R2=0.787;P=0.024)、および総腕軌道(R2=0.792;P<0.001)との間に強い相関が認められた。肘内反トルクと早期(R2=0.962;P<0.001)および総腕軌道(R2=0.964;P<0.001)の間に強い正の投手内相関が認められた。個々の投手において、早期腕軌跡(30.1±15.7cm)と後期腕軌跡(21.4±12.1cm)には大きなばらつきがあった。早期腕軌跡が30cm(11.8インチ)増加するごとに(投手個人の平均範囲)、肘内反トルクは1.29N(β=0.0429)増加し、球速は0.354m/s(0.79mph)(β=0.0118)増加した。

[結論] 投手内比較では、腕の軌道が短いほど肘内反トルクが減少し、球速が低下する。肘関節の内反トルクを減少させる個々のメカニクスを明らかにすることは、コーチやトレーナーがこれらのパターンを修正するのに役立つ可能性がある。臨床的意義:投球中の腕の軌道を短くすることで、肘内反トルクを減少させることができ、これは肘内反への負荷を制限するが、球速にも悪影響を及ぼす。腕の軌道を短くすることが投球腕のストレスに及ぼす影響について理解を深めることは、傷害リスクを最小限に抑えることに役立つ可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

アイデアは誰でも思いつく
それを現実にするかどうかが道を分ける

このような言葉を、たくさん目にし、耳にしてきた。
そして、今回の論文を読んだときに、まさにそう思ったのだ。
今回の研究のアイデア、“腕総軌跡” 、じつは僕は思いついていた。
思いついていたどころではない。
学会発表まで行なっている。

だが、そこまでだ。
論文化するところまでは、いかなかった。
Publish or Perish(出版か死か)
論文化されていなければ、それは研究をしたことにほとんどならない。
なぜなら、研究というのは個人の気づき・発見を学術体系の武器にしていくことであって、引用可能性がなければ、武器にはなり得ないからだ。
その中で、学会発表レベルでは、後世の人間は引用できない、方法の詳細もわからず、再現可能性も乏しくなる。
いやはや、Dowling先生方のアイデアを現実にする力には、脱帽である。

読みたいけれど、まだ書かれていない本があるなら、書かなければならない。
-トニ・モリソン

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