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気付いたら夏至を過ぎていた


気付いたら夏至を過ぎていた。
夏至が訪れる前あれほど意識していたというのに。

夏は暑くて苦手。汗をかくのは嫌いだし、薄着が好きではないし、顔の周りを虫が飛ぶのは不快な気分になる。何より犬がバテてしまってかわいそう。でも日が長いのは好きだ。かなり好き。夕方になっても明るい夏は、「まだ遊んでていい」と調子に乗れて嬉しいし、好きな人の誘いには迷いなく着いていける気分になる。短い夜は秘密の時間になる。過ぎ去る途中に寄り道しているような短さの夜。交わした言葉はガラスのようにキラキラ光って、私はそれをこぼさぬように、見失わぬように胸に抱いたまま眠る。目を固く固く閉じて、眠る。夢と見紛うよう自分に仕向ける。もしあなたが、私とのやりとりをすぐに忘れて、すぐに日常の浅瀬にザバザバと歩みを進めて、すぐに別の夢中にしがみついてもいいように。2人のものだね、なんて傲慢な幻想は抱かない。

うつくしい短夜はやがて去っていく。短夜は冬への帰路に着いてしまった。ああ切ない。行かないで短夜。でもね夏は、茹だるような夏は、全てをもみくちゃにして過ぎていくから。口を半開きにしながら悪臭漂う渋谷橋を渡っている間に。足首に溜まった靴下が蒸して痒くなっている間に。今はただ、地図アプリを見ながら進んだら予想外の坂道に出会したり、深く黒い夜道でふいに花の馥郁とした香に吸い寄せられていたい。それだけでわたしはうつくしさを吸い込んでいる。


真反対のあなた(冬至)へ。

私は未だ醜く、あなたに膨らませられ押し潰される心を抱えているのでしょうか。きっと人生には迷っていますね、多分私は不明瞭を生きるさだめなのだと思う。明確な落ち着きより不明瞭な危うい光を追いかけたいのだから。新しい靴が足に馴染んでいることを祈ります。
あなたはうつくしく、私にとっては時折毒になる。ある時突然変異した私の細胞は、あなたのうつくしさを分解することができない。目を逸らそうかと思いましたが、結局は身体がだめなので気づきました。
冷たい炭酸とビタミンいっぱいのジュースを飲んで朝を迎えます。
例え浮かれた気分を太陽もろとも奪われて、夜明けが遅刻しても、きっと熱い紅茶は美味しいものね。

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