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【小説】たかいたかーい(高い他界)1016文字

 最近僕は肩車にはまっていた。バカは高いところが好きというが多分あっている。そして僕はこの高いところが好きというバカみたいなこだわりのせいで死ぬことになるとは思っていなかった。

「肩車してー、お願いお願い!」
「しょうがないなー。肩車してあげるよ!」
「やったー!」

 この人は通称ノッポさん。身長が5mぐらいある。本当に人間かどうかは分からない。 この人の肩車はとても面白いのだ。普通の人じゃ絶対に味わえないような感覚を味わえる。見える景色というのも全く違う。

「それじゃあ肩車するよー! せーの、よいしょーー!」
「ガツンッ!!! ぐしゃぐしゃ!!!」
「あれ今なんか変な音したな。大丈夫かーい」
「ちーん」

 ノッポさんに肩車をしてもらったのだが、高すぎておもいっきり天井に頭をぶつけたらしい。なんと天井を突き破って次の階層に頭が出ていた。
 早速救急車で病院に運ばれることになった。

「いっせーのせ! あっやべ、患者落としたわ」
「ま、いんじゃね」

 病院に運ばれるまでにかなり雑な対応をされていたのだった。そして病院について医者に診てもらうことになった。どうやらノッポさんも来ているらしい。

「これは結構危険な状態かもしれないですね。知らんけど。まあ見るからに頭がぱっくり割れてしまってますね。知らんけど」
「そいなら僕も知らん知らーん」

 ノッポさんは逃亡してしまった。これから一体僕はどうなってしまうのだろうか? 早速が命が危ないということで緊急手術をすることになった。

「いやワシ手術とかよくわからんしなー。まあ適当にやっとけばいいんでしょ。頭の中かき混ぜとく?」

 そういうとヤブ医者は適当に手術を始めた。ものすごく雑に手術を行っている。

「いやこれやっちまったかもしれんな。とりあえずいろいろ変なものを使いすぎちゃった。しかもこれなんか死んじまうかもしれん。というよりもう死んでね。それに医療費たかいたかーい」
「ぽくぽくちーん」

 どうやら僕は死んでしまったようだ。あまりにも短すぎる人生だった。僕はそのまま身体から抜け出した。
 僕は一体このままどこへ向かっていくのだろうか。魂がどんどん空高く上っていった。

「ここはどこだろう?」

 ものすごく眩しくて青い光景が広がっていた。そう、宇宙空間の一歩手前ぐらいまで魂は上っていて地球を見渡していた。

「あっ、たかいたかーい」

 やはり高い場所って素晴らしい。死んでなお、世界の美しさを味ったのであった。

~おわり~

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