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【読切小説note】可愛い君が愛おしい

インスタグラムで暮らしに役立つ情報を発信したり、やりたい放題好きなことを発信している、すず(@suzu1985)と申します。

最近インスタグラムの新機能のリールを使って、30秒の胸きゅんショートムービーを作成して流したところ、フォロワーさんから

「続編を期待しています」
「CMみたい!本編はいつ公開ですか?」
「きゅんきゅんしすぎて30回は見ました。笑」

などと嬉しいお言葉をいっぱい頂きました。

それから数日、私の元に1通のDMが届きました。
DMを開いてみると、普段から仲良くして頂いているフォロワーさん。
noteの下書きプレビューURLでした。

なにが書いてあるのか覗いてみたところ、これは私1人で独り占めするにはもったいなさすぎたので、こちらに公開することに一瞬で決めました。

そのままの文章でもとってもときめいたのですが、私の妄想をふんだんに取り入れ、更にときめく内容に仕上げました(*‘ω‘ *)


胸きゅんショートムービーをまだ見ていない方は、こちらから先に見てみてください。


ちなみに、こちらの小説noteのおすすめの読み方として1つご案内がございます。

胸きゅんショートムービーを視聴する
②このnoteを最後まで読みきゅんを最高に楽しむ
原作noteと、小説noteを比較しながら
 2度、3度楽しむ(任意)


原作noteと、小説note、両方読んだショートムービーのヒロイン役のめぐちゃんからはこんな感想を頂いています。

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自分で言うのもなんですが、原作noteを見ながら小説noteを同時に読んでいく比較は間違い探しみたいでとっても面白い作業。

フォロワーさんのぽんさんが生み出した作品に、
すずが物語を少しずつ加えていった工程を見ることが出来るので、
お互いの化学反応が手に取るように分かります。

今回の作品はぽんとすず、2人合わせて約12時間の作業時間をかけて作成をしております。
そのため、原作noteのみ有料にさせて頂きます。

みんなに小説noteを有料にしたらって言われたけど、
私は1人でも多くの人にきゅんを味わってほしいと思ったので、
小説noteは誰でも見れる仕様にしております。


これから物語は始まりますが、その前にお願いがあります。

おもしろかった、きゅんしたよ!
と思った方はこちらのnoteに♡をTAPしてお知らせください。

また、ネタバレなしでの感想のシェア、Twitterのリツイートや、インスタへのストーリーや投稿はとっても大歓迎です。

みなさまからの反響は、私がものづくりをすることの意欲に比例しております。

いつもありがとうございます♡


それでは、この短い短いドラマの続きをお楽しみくださいませ。





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「可愛い君が愛おしい」
ープロローグー

+ + + + + + + + + + + 

原作:ぽん  脚色:すず



けたたましいアラームが、女性専用マンションの狭い1Rの部屋に鳴り響く。

私としたことが、アラームが鳴り続けていることに気づかずに、ぐっすりと眠ってしまっていたようだ。

お気に入りの無印良品の時計の針は、AM10:07を指している。
少し気だるい体を起こしながら、キッチンへ向かい冷たい水を飲む。

季節は秋から冬への移り変わり。
冷蔵庫から取り出したペットボトルの水が、身体の芯を刺すように刺激する。


今日は土曜日。
平日週5日制のOL勤務として働いている私には、待ちに待った休日。
私の手帳は悲しいことに真っ白だけど、今日は珍しく1件だけ随分と前から楽しみにしていた予定があるのだ。

が、しかし

最近stand.fmを始めたおかげで、深夜のstand.fmLIVEに参加するのが日課になりすぎた私は毎日若干寝不足気味。
昨日は金曜夜ということもあり、深夜LIVEに長時間花が咲いていた。

stand.fmを始めた一番のメリットは、平日は洋服が散乱してしまう部屋を、誰かの音声を聞きながら心地よく片付ける習慣が出来たことだ。

休日用のメイクをさっと整えた私は、寝ぼけまなこで街へと繰り出した。

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いつもと同じオレンジ色の電車。
いつもと変わらない車窓の景色を眺めながら、待ち合わせの場所に向かう。

いつもと明らかに違うのは、今日の私は「仕事」に急かされていないこと。


AM11:50
お昼に差し掛かる少し前、目的の駅に着いた。
毎日の通勤で飽きるほど通っている八王子駅。
私の職場は八王子駅から徒歩8分ほどの場所にある。
今日の八王子駅のホームは平日とは雰囲気が異なり、歩く人々に余裕があるのかゆったりとした時間が流れているように感じる。

そんなことを思いながら、私は改札へと向かう階段をゆっくりと上がった。


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八王子駅から少し離れたカフェで、大学時代のサークルの先輩、朱々花(すずか)さんとランチの約束をしている。

最近年下の彼氏ができた朱々花さんは、久しぶりの”彼氏”という存在に浮かれて私に頻繁に惚気LINEを送ってくる。

なんでも、デートの時にはいつも
“さらっと荷物を持ってくれて、車道側を守るように歩いてくれて”
”誰よりも気遣ってくれるが、束縛を一切しない"
彼氏らしい。

やや妄想癖のある朱々花さんなので、最初はそんな漫画の世界でしか見たことがない素敵な人が本当に現実にいるのか?と疑ったけど、惚気話LINEを見る限り本当のようだ。

甘酸っぱいような恋をして、恋に焦がれている朱々花さんは、少し羨ましいところもある。

今日も私とのランチを終えたあとは、彼とデートの約束をしているらしい。


そんな毎日を楽しく生きている朱々花さんが、今日は私に朱々花さんの友人を紹介してくれるという。

朱々花さんはフリーランスで仕事をしており、顔が広くて素敵な友人がたくさんいるのだ。


「恵理ちゃんと気が合うと思うから」


そう言って今までも、性別を問わずに何人か紹介をしてもらっている。
意気投合をして、朱々花さん抜きでランチするほど仲良くなった人もいる。


朱々花さんには人を見抜く才能がある。


だから今日も私は安心して初対面の人でも会うことが出来るし、これからどんな素敵な出会いが待っているのかとても楽しみなのだ。


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初対面の人とランチをするということで、朝さくっと準備をした割に私の服装はいつもよりも気合を入れてきた。


ニットのセットアップワンピース。
足元はヒールで大人っぽくまとめ、
耳元で小さく揺れているニットのピアスはワンポイントにつけた。

好きなモノを身に着けていったら、全て紺色にまとまってしまった。

お気に入りのニットのピアスは、仕事の日もよく着けている。

最近インスタで知った、人気ハンドメイド作家さんのオリジナルの作品だ。
毛糸を編み込んだリング状のデザインは、空気のようにとても軽い。

可愛いものを身に着けていると、気分も上がるのが女心ってやつだ。


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改札を抜けて、いつもの通勤ルートを歩きながら鞄からスマホを取り出す。
LINEの通知が入っていた。

「先に入ってるね!」


朱々花さんはもうカフェに着いたらしい。

ふと騒がしい気配を感じ、スマホから顔をあげる。

足早に走っている人や、ぱらぱらと傘を開きだす人が見えた。


雨だ。 


家を出たときは晴れていた。
天気予報も見ずに出てきたので、傘は持っていない。
ペデストリアンデッキの屋根のかかった端の方まで行って、宙に手を差し伸べて雨粒の大きさを確認してみる。

すっかり灰色になってしまった空を、恨めしげに見上げた。


ーーめっちゃ雨降ってるじゃん…


数日前の平日の朝も、私はここで同じように空を見上げていた。
その時は小雨だったし職場までは走ると数分の距離なので、諦めて走った。

でも、今日は結構降っている。
約束のカフェまでは傘なしでは少し遠い気がする。


ーーどうしよう、困ったな…。
どこかで傘を買おうか…。


折角気合を入れて履いてきた紺色のヒールの布には、幸い防水スプレーを吹きかけてある。
ヒールに落ちては弾けていく雨粒を見つめて考え込んでいた。





その時、視界が急に透明のフィルターがかかったようにぼやけた。




連日の寝不足で頭がぼーっとしているのかなと一瞬考えた。


が、どうやら違うようだ。


驚いて一歩後ずさる。


目を瞬いてよく見ると、それはぱっと開かれた


「ビニール傘」だった。




「はい!」




聞いたことがない爽やかな男性の声が、雨の音に混じって上から落ちてきた。

声がした方を見上げてみる。



そこには私と同じ年くらいの、おしゃれで優しそうな男性が傘を持って微笑んでいた。


彼はすっと、私の胸の方に傘を差し出してきた。

私は脳内思考停止のまま、慌てて両手で傘の柄をつかむ。

突然のことに固まる私に、彼はこくりと頷く。

それにつられて私もこくり。

彼は最後にニコッと笑い、
くるりと踵を返すと
降り注ぐ雨の中を何も言わずに走り出した。

私は突然渡された傘をさしながら
彼の後ろ姿を呆然と見送ることしかできなかった。




この一瞬で起こった出来事に、
混乱した頭をなんとかフル回転させた。




ーーえ?ちょっと待って、こんなことある?
まるでドラマか映画のような…


「待って!」



お礼を言っていない事に気が付き、慌てて叫んだ。

すでに彼の背中は人混みに紛れて見えなくなってしまったし、
私の声も雨の音でかき消されてしまった。

普段は履かない7cmの高さのヒールではとうてい追い付けないし、なんだか心拍数も上がっていて走れそうにない。


気付いたら、なんだか顔も熱く火照ってしまっていた。


ーーカッコよすぎる。。



彼の爽やかな笑顔にあてられた私は、
赤くなった顔を隠すように傘を差した。


私は朱々花さんとの待ち合わせのカフェへと
わざとゆっくりと歩きだした。






+ + + + + + + + + + + 

「可愛い君が愛おしい」
ーエピローグー

+ + + + + + + + + + + 





ーーちゃんと笑えてた?




土砂降りの八王子商店街を走りながら、先ほどの自分の行動を思い返す。

毛先まで滴る冷たい雨が、雫となって火照った頬をほどよく冷やす。

まだ、心臓が大きく高鳴っている。

横断歩道のメロディー音よりも、
体内の心臓の音の方が僕には大きく聞こえた気がした。







ーーカッコよくできた?



背負っていた真っ黒のリュックを傘がわりに頭にのせ、あの子の目にどう映ったのか、そればかり考えて走っていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



フリーランスの仕事を始めてもうすぐ2年になる。

いつもは朝早くから八王子駅近くのコワーキングスペースで、平日土日関わらず仕事をしている。
珍しく今日は、そこで知り合ったフリーランス仲間の友人と一緒に、仕事前にご飯をすることになったのだ。



今朝は少し寒かったので、いつにもなく布団の上で毛布にくるまりながらTwitterを開き、みんなの他愛もない休日の朝のつぶやきを流し読みしていた。

昼まで時間があるので、久しぶりにゆったりとした休日らしい朝を過ごした。

コーヒーをハンドドリップで淹れて、優雅な朝を演出してみる。

しかし、なんとなくリモコンの電源を押したTVでは
相変わらず今日も、くだらない芸能スキャンダルが流れている。

画面の片隅に映る天気予報を目を細めて確認してから、
いつもよりゆっくり家を出た。



八王子駅に到着すると、周りを見渡してしまう癖がついてしまっている。

平日の朝にいつも見かけるあの子を

身体が無意識に探す。


肩より少し長い髪は、柔らかくウェーブしており

髪をかき分けてある彼女の右耳には、いつも丸いリングのピアスが見えている。

金属性ではなさそうな柔らかな印象の材質で、耳元で軽やかに揺れている。
ぱっちりした意思の強そうな目元が可愛らしい。

平日の朝にいつも見かけるので、この辺りで働いているのだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


彼女に初めて出会ったのは、今から1ヶ月ほど前。
10月にしては朝から気温が高い日だった。

満員電車に揺られ、車内の息苦しい空気を吸って気持ち悪くなってしまった僕は、電車から降りるとすぐに新鮮な空気を取り入れたくて深呼吸をした。


ふと目を横にやると、まだ2歳くらいの小さな男の子が
改札に向かう階段の下でひっくり返って泣いていた。

その子のお母さんが、ベビーカーを片手に男の子に声をかけている。
その子は何か不満なことでもあるのか、わざと母親の声をかき消すように泣き叫んでいた。
周りの人間は心配そうにちらりと横目をやるけど、ほとんどの人はあからさまにうるさそうな顔をむけたりして、男の子と母親を避けながら歩いていた。


僕は声をかけて手伝おうと、近づいた。


「大丈夫ですか?」



僕より先に声をかけた女性がいた。

「危ないので端に移動しましょう、ベビーカーを運んでも?」


母親は泣きそうな顔をして、頷いた。

母親が小さな男の子を抱き上げ、女性がベビーカーを持ち上げて階段を上る。

男の子はまだ泣いているが、母親の腕の中で少し落ち着いたように見える。


「このまま改札まで持って行きましょうか?」

「いえ、そこまでは… あ、でも…ありがとうございます」

「大丈夫ですよ」

女性はにっこりと微笑んで、やっと泣き止んだ男の子に手を振って去っていった。

母親はぎゅっと男の子を抱きしめながら、彼女の後ろ姿を見送っていた。


あれからというもの

彼女のその時の笑顔が、

僕の頭の片隅から離れなくなってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー





ーー今日は土曜日、いるわけないな。



早々に探すのはやめて、ふと周りを見渡して気づいた。
傘を差した人たちが歩いている。
雨は昼過ぎからの予報だったのに、既に降りだしたようだ。


数日前にも、予報より早く雨が降りだした事があった。


あの日、あの子は空を見上げて困ったような顔をしていた。

勇気を出して自分の傘を貸してあげようかと考えていると、あの子は意を決したように雨の中を走って行ってしまった。

すぐに決断出来なかったことが悔やまれる。


ーーいい大人になってこんな些細なことに悩んでいるなんて、
僕はなんてチキンな男だ。。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


そんなことを思い出しながら、今日の目的地をGoogleマップで検索する。

すると、改札を出てすぐのペデストリアンデッキの屋根付近で、
女の子が立ち止まっているのが目に入った。

こちらからは後ろ姿しか見えない。
よく見るあの子とは少し雰囲気が違う女の子だが、
どことなく背格好が彼女に似ている。


ーーいや、でも土曜の昼前にこんなところにいるはずもない。



すぐに妄想をしてしまう自分に、自分自身で恥ずかしくなった。


女の子は傘を持っておらず、空を見上げ、雨雲の動きを確認しているようだ。


長い髪が風に揺れている。


耳元の丸いリングがちらりと見えた。






ーーあの子だ!




心臓がトクンと跳ねた。


僕は急いで傘を開く。

彼女が走り出す前に、今度こそ計画を実行しなければならない。


あれから何度も頭の中でシミュレーションをしたのだ。


風に吹かれた雨で

少し濡れてしまっている彼女の前へ一歩近づく。


シミュレーション通りに、

開いた傘で彼女を包み込むように、


優しく差し出した。


彼女は驚いたように傘を見つめたあと、

一歩後ずさった。



「はい!」




声が上ずったかもしれない。


焦りながらも、会社員時代に営業で培った得意の笑顔を顔面に貼り付ける。


印象は悪くないはずだ。


彼女は目をパチリと瞬いて、僕を見上げた。


目があった。




ーー可愛い…



その瞬間、完全に脳ミソがショートした。


いつもなら次々と浮かぶはずの気の利いた言葉が、全く出てこない。


完全完敗である。


が、もう後には引けない。


心の中で舌打ちをしながら、
”爽やかと評判の笑顔”だけはしっかり作って、
傘を彼女の方へぐっと差し出す。


彼女は大きな目をパチクリさせながら、傘を両手で受け取った。


僕が無言で頷くと、彼女も無言でこくりと頷いた。



ーーよし、やった!!




そのまま僕は、雨の中を走り出した。


少しずつ強くなる雨足は僕には関係ない。


もう僕の中は達成感で一杯だ。



雨の中を走りながら考える。



月曜日からどうやって彼女に話しかけようか作戦を練らねばならない。


いや、そんなことよりまずは、


僕は今カッコよくできたのかどうか。



それが重要だ。





聞いてみよう。





今日僕が待ち合わせをしている相手に、



女性としての率直な意見を。



朱々花さんと



まだ出会ったことのないその友人に。








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