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ぞうのゆめ。

大きな象の夢をみた。
ゆっくりゆっくり
大地に刻印を押すように
四本の脚を繰り出して歩いてゆく。
よくみると体のあちらこちらから
ほろりほろり花をほころばせている。
風がその花たちを遠くへ運んでゆく。
花びらが舞う。
硬い皮膚に刻まれた皺の隙間に、
風に運ばれた植物の種が潜り込んで、
温められて、
象の汗を吸い、
芽を出していた。
象は自分の体から花が咲いていることに
気づいていないらしかった。
あるいはただ、無頓着だったのかもしれない。
そんなことは象には関係のないことなのだ。
花は蝶を呼び鳥を呼んだ。
だから象の背中はにぎやかだった。
みんな大きな象の背中に乗って、
どこかへ運ばれてゆく。
どこへ向かっているのかも分からないまま。
でもみんな幸せなんだな、
ということは分かった。
象の足跡の窪みは湖になった。
小さな銀色の魚たちが群れをなして泳いでいた。
象は、もたらすことしかしない。
でも何も知らないのだ。


文章を書いて生きていきたい。 ✳︎ 紙媒体の本を創りたい。という目標があります。