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消費の形を根本から変えて ファストファッション業界に挑む 注目のスウェーデンアパレルブランド

環境に最も悪い影響を与えている業界

毎年1000億以上の衣服を生産し、その約60%が製造されてから1年以内に焼却またはゴミとして捨てられているアパレル業界は、世界の温室効果ガス総排出量の8%を占めていると言われます。トレンド期間を短くして大量の衣服を短期間に売りさばくファストファッションは、生産過程での低賃金労働者と環境の両方にかかる問題に対して責任を負おうとしません。

アパレル業界は今や製造時の環境への影響を低減するだけでは不十分であり、さらに消費に対する態度も問われています。その現状を解決すべく新しいビジネスモデルが切望される中、注目されているスウェーデンの新鋭アパレルブランドを紹介します。

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ASKET 「ミニマムへの追求」

創業者のJakob DworskyとAugust Bard Bringéusはストックホルム経済大学の同級生です。従来の衣類のサイズシステムに問題があると考えていたふたりは、衣類ブランドASKETを創業しました。

2015年にタイムレスで誰にでもフィットする「理想のTシャツ」を作るクラウドファンディングを立ち上げ、本質へのこだわりをていねいに紹介しました。Tシャツはシンプルだからこそ、その本質まで無駄を削ぎ取り、素材と縫製に細心の注意を払い、販売過程の無駄をなくし、フェアトレードな価格を打ち出しました。

クラウドファンディングでは目標額の4倍の資金を集め「理想のTシャツ」プロジェクトが始まります。素材から縫製まで、世界中で最も高い品質と技術力を持つメーカーを見つけて必要最小限のメンズ用ベースラインの衣類を製造し、2019年には4500万クローナ(約5億3千万円)の売り上げを伸ばすまでに成長しました。

理想のTシャツのコンセプトは3つ

1、誰にでもフィットする15のサイズ

身長の違いで丈の長さがフィットしないニーズに応えるため、通常のXS、S、M、L、XLの5サイズそれぞれに、ショート、レギュラー、ロングの3つ丈の長さを入れた15サイズを提供。

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2、タイムレスなデザイン

何度か洗濯したらダメになるTシャツではなく、洗うたびに着ごこちがよくなり、何度でも何年に渡ってでも着られ、ワードローブの基礎となるTシャツを目指します。

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3、品質がよくフェアトレードな販売

世界で最も品質の高いコットンを使い、優れた専門知識を持ち労働条件もいいメーカーで製造。仲介業者や広告なしにオンラインのみで販売することで、同質のTシャツをハイエンドのアパレルショップで買うよりも半分以下の価格で提供します。

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消費の現状を変え、本当に必要な服だけを提供する

労働力と貴重な資源によって製造される衣料品は今その価値を失っています。現代のファストファッションを代表するアパレル業界は常に新しいものが作られ、捨てられています。業界は人や環境に大きな影響を与える安価で寿命の短い衣類を販売することにより、持続不可能な過剰消費を生み出しているのです。

地球を犠牲にして必要以上に服を買い、あまり使わずに捨てられている現状を変えることを目指しています。「私たちの使命は、その短い消費を終わらせることです」と提唱するASKETは「環境に優しい」という言葉は使いません。なぜなら、現在北欧だけでも「環境に優しい」とアピールしているアパレル企業は60社近くあり、本当に正しい取り組みをしているのかを知ることは不可能だからです。

搾取的で操作的なアパレル業界は環境への取り組みだけでは不十分で、消費の全体像を変える必要があります。ASKETは高品質でタイムレスな衣料品を、季節ごとではなく長く着続けられるように製造ます。そのため、世界で最も品質の高い素材や、最も技術力の高い縫製メーカーを見つけ出し、仲介の入らないオンラインのみで販売することで適正価格を実現しています。

「ファストファッション業界に責任を負わせるために、消費者を目覚めさせたい。われわれが目指すのはワードローブの削減なのです」

人々を挑発した唯一の広告の影響力

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ある日、”FUCK FAST FASHION!”という巨大な壁に描かれた言葉が、通り過ぎる人々を挑発しました。必要以上の服を欲しがるよう人々の購買欲をそそるファストファッションを酷評し、ポエティックな文面で「騙されるな」と訴えかけた広告は世間の注目を浴びました。写真をインスタにあげると、通常は700-800のイイネがつくところ、その写真には4400のイイネがつきました。この投稿は狙い通りネット上で炎上し、ソーシャルメディアとインフルエンサーにより、ASKETはその知名度をますます高めていきます。

25種のベーシックアイテムを世界の最高品質で製造

フィット感と素材の選択、コストと環境への影響に透明性を持たせた「完璧なTシャツ」を成功させたASKETは急速に成長し、現在のコレクションはシャツ、コート、ジーンズ、ニット、アンダーウェアなど25種類にまで増えています。コレクションはすべて常に着用できる高品質のベーシックアイテムのみで、季節ごとのコレクションは作りません。ジーンズの素材には日本の福山デニムが採用され、イタリアのメーカーで縫製されています。

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新しい挑戦「インパクトレシート」

ASKETの新たな挑戦は、衣類にかかる環境コストを全て明らかにすることです。購入した際に発行されるレシートに、衣類にかかる環境コスト、つまり排出されるCO2、必要な水の量、製作に使われるエネルギー量を提示します。

「インパクトレシートを立ち上げることで、私たちは衣服の真の生産コストを理解し、顧客や業界全体に環境債務について考えるよう促したいと思っています。環境への影響を認識し、買い物をなるべく減らし、長く衣類を着用するべきなのです」

「インパクトレシート」の発表を記念して、ASKETはTシャツ、オックスフォードシャツ、チノ、ニットウェアをはじめ、最も売れている衣服のCO2、水の使用量、エネルギー消費量に関する情報を提供します。

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スウェーデン政府は「SDGs(エスディージーズ)」の達成をアパレル業界にも託し、ファッションと繊維産業の持続可能を実現する国を挙げたプラットフォームも立ち上がっています。持続可能とサーキュラーエコノミーにおいて、スウェーデンを世界の最前線に据えるため、着々と活動が行われています。これからもスウェーデンの動きが注目されます。

画像出典 ASKET

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