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北欧でも進化する「キモノ」の表現

スウェーデンで近代的な「キモノ展」が開催され、日本が誇る民族衣装である着物の進化が気になっていたところ、HUFFPOSTの「ミス・ユニバース日本代表の“伝統衣装”に批判続出」という記事を見つけました。画像にリンクが貼ってあります。

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「せめて左前はやめて欲しかった」

いやほんと、その通りですよね。2021年のミス・ユニバース世界大会での日本代表のファッションがこれです。記事を読んでみると、ミス・ユニバース世界大会の決勝がイスラエルで開かれ、日本イスラエル国交樹立70周年を記念して、イスラエル人デザイナーのアビアド・ヘルマン氏がデザインしたそうで、「歓迎とお祝いの気持ちを込め、原宿ファッションと着物を融合させたというピンクベースの衣装には、きらびやかなスパンコールがちりばめられ、袖部分には日本国旗があしらわれています」とのこと。

にしても、海外の人にとって、これが伝統的な日本の着物と勘違いされないかと、日本人としては気が気じゃありません。

海外にいると、こういった、日本文化が誤解されるんじゃないかという場面によく遭遇します。まさしく1月までスウェーデンのヨーテボリで開催されていたキモノ展「Kimono: Kyoto to Catwalk」もそんな感じです。

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スウェーデンでは、ストックホルムの「ボロ展」に続いて、キモノ展も開催されました。このところ相次いで注目される日本文化。北欧にやってくるということは、欧州ではもうほとんど出回ったことを意味します。

この「キモノ展」は、ロンドンで展示されて世界のセレブたちに影響を与えた日本の着物展:V&Aミュージアム「Kimono: Kyoto to Catwalk」がそのままスウェーデンにやってきたものです。日本人も知らない着物の歴史を解説しています。

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キモノは日本の民族衣装を超えて、世界のファッションシーンのインスピレーションになり、独自に進化しています。日本人としては、日本の伝統的な着物とは一線を画した表現に複雑な印象ですが、それだけ注目されるキモノの進化や表現の仕方にはとても興味がありました。

キモノ展「Kimono: Kyoto to Catwalk」の紹介文はこんな感じです。

「着物は実にアイコニックな衣装です。日本人にとっては祖国の文化を体現するものであり、日本人以外の人にとってはとてもエキゾチックなものです。何世紀にもわたって、着物の形が変化していないということは、着物は時代を超越した不変のものとして認識されているからです。本展は、そのような不変なものという認識に挑戦し、衣装は流動的で近代的であることを表現しています」

明治維新と同時に日本の文化が世界に発信され、ジャポニズムが大きな注目を浴びました。スウェーデンの有名な画家であるカール・ラーションの家には「日本の部屋」があり、浮世絵や刀や日本人形が飾られています。貿易も飛躍的に増加し、ニューヨークからニュージーランドにかけて、着物はトレンドとなりました。20世紀初頭には、ヨーロッパのデザイナーたちは着物の直線的なラインとドレープに大きな影響を受けはじめ、着物ファッションは世界に広がっていきました。

キモノ展の展示品は、日本の歴史的な着物から、近代的でモダンなキモノへと移り変わっていきます。残念なのは、現代の日本で着られている着物の展示がほとんどなかったことです。

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展示品は着物らしいものもあれば、かなりかけ離れたものもあります。着物と呼んでいいのか、という意味不明なものも。

これを面白いと思う人と、邪道でついていけないと思う人と、意見が真っ二つに分かれますが、これを面白いと思える人は、海外暮らしを楽しめます。オペラの蝶々夫人の衣装もオヤ?って感じですが、いかが思われますでしょうか。

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現代の日本では、日常的に着物を着ている人はほとんどいません。着物と言えば、結婚式やお正月や卒業式など、特別な時に身につける衣装であり、日本の民族衣装として誇りを持っています。

また、着物はTPOに合わせた格付けがはっきりしています。留袖、訪問着、付下げ、小紋、紬、振袖。TPOに合わない着物を着ていくと、着物警察と呼ばれる人たちから陰口を叩かれます。それが面倒で着物離れが進んでいるとも言えますが、それくらい日本では着物を着るには知識が必要です。

とはいえ、若い世代では着物を着崩している人もいるし、最近ではデニム着物が人気になっています。はじめてデニム着物を見た時は、これどうなの、と思っていましたが、着物専門店のさが美さんも売り出していることから、徐々に市民権を得ているようです。下記の画像はさが美さんのサイトにリンクしています。

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ファッションや文化は、進化してこそ未来があります。特に海外に浸透させたい日本文化は、コアな部分を20%残し、残りの80%は現地のライフスタイルに合わせないと受け入れてもらえないといいます。

「邪道だわ」と思いながらも、北欧でも変化していくキモノを楽しく見ていきたいと思います。

ちなみに北欧でいう「KIMONO」とは、バスローブや前が合わせになっている服のことです。日本の着物を知らない北欧人は、「KIMONO」と聞くとこういう服をイメージするでしょう。

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日本では着物離れが心配されていますが、キモノは海外で進化を続けています。着物を伝統として表現するのではなく、ファッションアイテムとしてとらえることで大きく飛躍し、さまざまな方向に進化するキモノ。これからも目が離せません。

でもやっぱり、正統派の着物がいちばん美しいと思います。この美しさを理解できる海外の人はどれくらいいるんでしょうね。画像は「美しいキモノ」のサイトからお借りしています。

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