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連載小説『香港の男』

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「例えば、香港に住んでいたとする」 大学生の頃、寮で知り合った先輩は僕にそう語り始めた。そしてその後も「香港の男」は僕の中に潜み、何かをずっと待ち続けている。それは空虚?それとも… もっと読む
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連載小説『香港の男』chapter one

連載小説『香港の男』chapter one

chapter one: 香港的一個男人

「例えば、香港に住んでいたとする」
彼は話し始めた。

「何度も話そうとして、何度もやめた話だ。でもこの切り出しであれば、うまく伝わる気がする」

彼はそう言って、宙に浮かべていたコーヒーカップをソーサーの上に戻した。そして今度は置いたカップを指で回して、意味のない音を立て始めた。彼はいつもそうして前置きを作ってから何かを話し始める。

◯彼は僕より

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