休日はお好み焼きで
まだ私が子供だった頃の話。
休日は決まってお昼頃に目を覚ます私は、リビングから漂ってくる匂いでその日の昼食が何かを嗅ぎ分けていた。
お決まりとなっていたパターンが野菜たっぷり塩ラーメン。
その次に多かったのがお好み焼きだ。
お好み焼きの日は、甘くて香ばしいソースの匂いで目覚め、先にご褒美がもらえたような気がして、いつもよりちょびっとテンションが上がっていた記憶がある。
一番下に敷かれた二枚の豚肉がカリカリによく焼けていて、その内の一枚はペロンと剥して豚肉だけで食べることが好きだった。
今思うとお好み焼きとして焼かれているのに、なんて勿体ないことしてんだって感じるのだけれど、当時はそれが私にとってのお好み焼きの一番美味しい食べ方だったのだ。
そんな休日の食卓は、家族だんらんってわけでは無かったけれど、母がお好み焼きを用意し、父が寝っ転がってテレビに流れる吉本新喜劇を見て、二人いる兄のどちらかは部活だったりバイトだったりで、どちらかは私と同じように昼頃に起きて一緒にお好み焼きを食べた。
そんな日常が二十歳頃まで続いた。
が、父と母が離婚してその日常は突如として途絶えてしまった。
それから十年程が経つ。
離婚当時も既に私は大人であったし、その後すぐに家を出て結婚したし、この記事を書こうとするまで思い出すことも無かったのだけれど、もう二度とあの平凡だけど愛おしい時間を過ごすことはできないのかと思うと、やはり少し寂しいものがある。
なので私は少しでもあの時の気分に浸りたいと母にラインしてみた。
「昔よく休日はお好み焼き作ってくれとったやんな?」
「そうやで。でも高校生の時に『お好み焼きばっか炭水化物で太るからやめて』って怒ってたやんか。そっからもう作らんかったで?」
……そうか。あの平凡だけど愛おしい時間を遮ってしまっていたのは父でもなく母でもなく、思春期真っ只中の私だったのか。
そう思うと寂しいだなんて一瞬でも暗く考えてしまった自分が可笑しくって笑いが込み上げてしまった。
いや、紛れもなく寂しいものもあるのだけれど、また新たに、平凡だけど愛おしいものはきっと増え続けているんだろうな。
そう思えた。
お好み焼き、何年も食べてないなあってなって思い出したことをつらつらと。
明日は休日。
お好み焼きを食べようか。
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