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モニュメンタリティ

(概要)
社会の変動期に呼び覚まされる、共同体の文化的アイデンティティです。社会を秩序つける文化的な価値規範が流動化していくとき、永遠性を目標とした「モニュメンタリティ」という超越的な観念が呼び起こされ、形象化されていきました。20世紀になると、モニュメンタリティは、貴族的かつ階級的な価値として排斥され、攻撃の対象ともされ、「バウエン」などの新しい考え方を生み出していきました。

(バウエン)
ドイツ語で建てることを意味します。万人が等しく恩恵を受けえるものとすべく、今一度「建てること」の意味を問いただすことから始まりました。近代建築の特徴は、機能主義や合理主義という言葉で説明される場合が多いですが、「モダニズム」という精神は、すべてを計量化・数値化しようとする、客観性を求める意志として集約できます。バウエンという考え方の根底には、その精神が躍動していました。


雲の鐙 

(本文)
「はじめにナポレオンありき」と歴史家ハーンス・カール・ニッパーダイが書いたように、ドイツの近代化はナポレオンによる領邦体制の解体・再編を契機としていました。哲学者ヨハン・ゴットリープ・フィヒテの演説「ドイツ国民に告ぐ」はナポレオンの支配に対して国民の奮起を促し、国家統一を希求する民族ナショナリズムの意識を生み出しました。普仏戦争に勝利し、それまで小国乱立の状態にあった地域がドイツ帝国として統合されたのは、ずいぶん経った1871年のことでした。

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