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人は努力が大事だと本当に思っているのか?

自己紹介

こんにちは。とある大学でマーケティングを勉強しているゆうです。マーケティングが専攻なのですが、ほとんど心理学を勉強しているようなもんです。(決して遊んでいる訳ではないです笑。マーケティングにおいて人の心や消費者心理を知ることは非常に重要ということ)
そんな私ですが読書が趣味ということもあり、面白いなと思った本に書いてある引用元の論文を読んで紹介するnoteを作りたいなと思っています。(すぐに挫折するかもしれません)
ということで本日紹介する論文は以下に書いておきますので、原文が読みたい方は以下のワードで調べてみてください。
著者:Chia-Jung Tsay, Mahzarin R. Banaji
タイトル:"Naturals and strivers: Preferences and beliefs about sources of achievemen"
雑誌:Journal of Experimental Social Psychology,
※論文には3つの実験がなされていますが、実験1のみの紹介となります

論文の面白いポイント

ということで第一弾のテーマは上述のように努力と才能についてです。
この論文の面白いところは人の潜在意識と顕在意識の違いを丸裸にしてしまう実験結果になったところです。一般的に努力と才能どっちが大事か?という質問をされたら多くの人は努力が大事と答えると思います。しかし本当にそうなのでしょうか。口では努力が大事と言いつつも、心の奥底では才能が重要であると思っている人が多いというのが今回の実験で明らかになってしまいました。結果もさることながらその口で発している言葉と実際に思っていることが違う事を見抜けてしまう実験設計にも注目です。

実験のやり方

まず実験の被験者ですが、年齢も性別も多様なプロの音楽家103人が被験者となりました。被験者は大きな成功を収めた偉大なピアノの演奏家の曲を聞き、後述する様々な観点から演奏を評価します。しかし演奏家の紹介のされ方が2パターンあります。1つ目の紹介のされ方は「演奏家は物凄い努力を重ねてきた人である」と説明されます。この紹介のされ方を以後「努力家グループ」と呼ぶことにします。もう1つの紹介のされ方は「演奏家は生まれつき非常に才能に溢れている人だった」と説明されます。この説明をされ人達を以後「才能グループ」と呼びます。(実際にはもっと詳細に書かれた説明文が使われています。知りたい方は元の論文を当たってみてください)。そして被験者はランダムにどちらかの努力家グループか才能グループに割り当てられます。そして実際にピアノを聞きますが、先程の演奏家の説明とは全く関係なく、どちらのグループも同じ演奏家が弾いた同じ曲を聞かされています。その後、被験者は様々な観点から演奏家を評価します。評価項目は4つあり、それぞれ①他のプロピアニストと比較して才能はどの程度か ②将来成功する確率はどの程度か ③このピアニストを雇いたいかどうか ④逆境への対応力がありそうか の4項目です。これらの項目に対して9点満点(9段階尺度:1全くない~9非常にある)で評価しました。ピアニストの説明文を読んで、演奏を聞き、4項目について評価する一連の流れを同じ曲の別フレーズでもう1度実施しました。その後どちらのグループの被験者も生まれつきの才能と血のにじむような努力がそれぞれピアニストとして成功するために、どの程度重要か先程と同じく9点満点で評価しました。

実験結果

結果①

まず最後に測定されたピアニストとして成功するにはどの程度、才能と努力が重要かという点については、努力の方がピアニストとして成功するには重要であるという結果が出ました。すなわち少なくとも表面上は成功するためには努力の方が重要であると被験者たちは考えているということになります。


統計的な結果が気になる人へ
結果①
努力グループの平均点(M = 7.83、SD = 1.08)
才能グループの平均点(M = 7.08、SD = 1.54)
両群の仮説検定の結果(t(100)= -4.28、p<.001)



結果②(重要)

続いて演奏家に対する4つの評価項目の結果を見ていきましょう。
以下が結果のグラフです。



驚くべきことに4つの項目すべてで生まれつきの才能が非常にあると説明されたグループの方が平均点が高くなっています。またこの結果は統計的に有意な結果となっており、たまたま才能グループの方が平均点が高くなってしまったという確率が5%以下(*の項目)もしくは1%以下(**の項目)であることを示しています。
すなわち同じピアニストが演奏した同じ曲を聞いたにも関わらず、
才能が凄いと説明されたピアニストの方が、努力が凄いと説明されたピアニストよりも音楽の才能があり、将来成功しそうと思われ、部下として雇いたいと思わせ、逆境への対応力もありそうと思われることが判明しました。
何よりも被験者は実験①で才能より努力の方が大事と考えていたにもかかわらず、実験②の結果からわかるように潜在的には才能の方が大事だと考えているのです。
特に逆境への対応力なんかは努力の方が大事そうに感じるんですけどね。それでも才能グループの方が対応力があるように見えるということでかなり意外な結果だと個人的には思いました。

まとめ

さて初めての論文紹介noteということで、文章力、論文の解読の正確性など少し不安な面もありますが、楽しんでいただけたでしょうか。
人は無意識に後天的な努力よりも先天的に才能のある人を評価してしまうというバイアスがあるということが本研究から分かりました。本研究はあくまで人を評価するときの話であって、実際に自分が何かを達成しようとするときはもちろん努力が大事(主観)だと思うので、タイトルの「人は本当に努力が大事だと思っているのか?」に釣られすぎないでくださいね(笑)。ではまた次回のnoteで!




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