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【スタートアップ向け】4年間運用して実態とズレた評価制度をブラッシュアップしたNOINの事例共有

労務の専門家ではない人が人事制度の見直しをする時の参考に

こんにちは、ノインの土屋です。さて今回は、2021年10月より実施した評価制度のブラッシュアップの話です。元経理の私が、4年間のスタートアップの働き方を見ながら、評価の見直しをしていった過程をnoteで公開したいと思います。

以前Coral capitalで行ったバックオフィスの情報共有会で、同じ悩みを抱えている方非常に多かったのを感じました。やってることのレベルはまだまだ初歩ですが、同じ悩みを抱えているスタートアップの経営者の方やSBOの方などの参考になれば幸いです。

人事制度は永遠のベータ版

この見出しの言葉検索したらYahoo CEOの宮坂学さんにたどり着いたのですが、宮坂さんの言葉なんでしょうか?わかる方いたら教えてください。

あたりまえのことが当たり前にできてないのがスタートアップです。本来の意味ではないかも知れませんが、この思想は大事だなと思いました。最初から完璧にできなくてもいいので、スタートアップらしく、プロダクトみたいに高速にPDCAを回していきたいと思いました。

そもそも評価に関する業務の優先順位を上げたのは、2021年4月から賞与と先日公開した信託型SO(ストックオプション)の制度を導入したこと、そして社員数が50人を超えたことにあります。評価による報酬の変動の要素が強くなるのであれば、当然評価への期待度は高まります。


また社員数が50人を超え、育成の優先順位が上がってきています。社員の生産性を10%上げることができれば5人採用したのと同じです。育成の根幹は評価システムなので評価制度の改善に着手することにしました。

とりあえず優先順位をつけてすぐ変えられることから変える

まずは重要なところに絞ってざっくり改善していきます。まだ直したいことはありますけど、一気に全部直さなくていいと勝手に決めました。今回目指したことは以下の通りです。

・評価シートを実際の評価に近づける
・目標設定の方法のレベルアップ
・評価システムへの解像度を上げる

そもそもなぜ目標設定が重要か

適切な目標は成長角度を上げます。図解するとこんな感じ。

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それを支えるのが上司との目標設定であり、そのツールとして評価システムと評価シートが存在します。

人事評価制度における車輪の再開発はしない

「評価制度 作り方」で検索するとこんな言葉が出てきます。

「まずは、自社の企業理念や現状の課題を再確認し、どんな評価制度を導入したら良いかを検討する。」「まずはどんな人を評価するのかを議論し、評価項目を社内で設定する」

これは2年前に私が陥っていた勘違いなのですが、評価制度そのものをオリジナルで作らなきゃいけないと考えはじめると、結構きついです。HRに明るくなかった2年前の自分は、自社にあった評価制度を検討作るのってなんか大変そうと後回しにしてしまってました。

しかし、評価制度に関する本を数冊読む中で気づいたのは、この領域セオリーあるじゃん!ってことです。そもそも評価制度そのものはかなり研究が尽くされていて「型」があることがわかりました。人事企画周りの方にとっては当たり前のことだと思いますが、経理畑だった私には発見です。

つまりオリジナルで評価制度そのものを設計するのは「車輪の再開発」。時間のないスタートアップがまずすべきは、いくつかある型から自社にあった型を選ぶことでした。

NOINは某メガベンチャーの制度を少し変えて4年間運用してきましたが、評価制度に課題を感じてました。その課題は自社に合う型を選べてないことが要因のひとつでした。

スタンダードは3つの評価項目

本によって言い回しや若干の定義の差はありますが、評価項目は以下の3つです。

・実績評価
・能力評価
・バリュー評価(情意評価)

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これらの項目のどこを重視するかに会社の文化や業態特性が出ます。つまりオリジナリティはここで出ます。また一般論として給与は能力評価の要素が強めで、賞与は実績評価の要素を濃く反映させることが多いです。この使い方をしたかったからこそ、当社は2021年4月より賞与制度を導入しています。

評価シートの構成と実態のギャップ

あらためて確認してみると、過去の評価シートは実績評価が軽めで、能力評価中心の構成になっています。たしかにベースにしたメガベンチャーの制度としては納得です。会社の看板やプロダクトのパワーが強かったりするからでしょうか?実績ではなくスキル重視のシートです。たしかにー。という感じ。

じゃあそれがNOINにハマってるかというと、実際の会議の会話を思い出すとハマってなかったです。ずっと感じていた違和感はこれだ・・・!無理やり評価してる感あったもん。フィードバックしにくいわけだ。

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採用、昇降級、昇格はちょっと目線が違うよという話

少し話はずれますが、社員または採用候補者の方を評価する際に見るポイントは、各フェーズで違うよという話もここで簡単に整理しておきたいと思います。もちろん会社によって違うと思いますが、私はこんなイメージです。

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他社事例に当たりまくって解像度を上げる

さて実際に評価制度を考えるにあたり、友人知人にも協力いただきました。会社名を上げたりきりがないですが、社内や社外の方々に色々事例を聞いて他社の良いところや考え方、そして運用方法を学んでいきます。
キーエンス、リクルート系数社、CA、グノシー、ジェイエイシー、JTB、ユーザーベース、グリー、弁護士ドットコムなどなど。貴重なお話しをしてくださった方々、ありがとうございました!

うちはスタートアップだけど、事業モデル的に個々のパフォーマンスによって事業の大きな進捗は望めません。社内的には大きな声で言えませんが、個人実績に大差はないと考えてます。そのため実績評価せずにスキル重視の評価制度です。

みたいなご意見もいただき大変参考になりました。大手企業が実績よりもスキル重視なのはイメージついてたんですが、「スタートアップ=実績重視」というわけでもないという事例は非常に気づきを得られました。

実際に経営会議にかけて意思決定をしていく

評価制度、特に評価シートの改定に伴いいくつかの意思決定をしていきます。

論点①実績評価と能力評価の割合をどうするか

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等級により細かく割合を分けるケース(MAX7段階ぐらいの事例がありました)があるようですが、細かい設計は一旦不要と判断し、管理職相当のグレードを基準線に評価の割合を2分割しました。当然ハイグレードの方が実績を強く求められる設計です。管理職なのに「実績は微妙だったけど、スキルはあります」なんて無理だよねっていう話です。

論点②バリュー評価の割合

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今後はバリューについては独立してしっかり評価すしたいし、大事にしていきたいよねということで項目を追加することにします。バリューの割合を20%にしたのは特に根拠はないです。運用しながら調整していきたいと思います。

論点③バリューの再定義の見送りについて

「評価項目は作るけど今はバリューの作り直しはやらない。これは下半期の宿題にする。」という意思決定をしました。ノインのバリューに関しては、今もあるのですが評価に使いやすい形ではないので、評価用にもう少し噛み砕く必要があります。とはいえ何も評価しないというわけではなく、NOINとして良い行動になってるかどうか、言語化できてないなりにある当社の文化を基準に評価をしたいと思います。

論点④各部の評価基準の具体化、独立を認める

実績やスキルの等級別の基準を全社で作ってはありますが、当然全職種に適用するため抽象度が高い状態です。「グレードごとのレベルの目線が合えば各部で具体的なものを作って運用して良いよね。」という意思決定をしました。ちょっとこれだとわかりにくいと思うので管理部の実績評価表の実例がこちら。

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管理部の大まかな職種について作成してます。管理系のほぼ全職種作ってますが、まだ専門職のニーズがない領域は、勉強も足りてないので解像度が低いです。これを実際にメンバーに開示しながら都度修正しながら運用してます。まだ管理部と広告事業部ぐらいしか作れてませんが、開発部の作成にも着手しているので、下半期中にリリースまでいけたら良いなと思ってます。

論点⑤実績評価における外部要因の扱い

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これは個人的には面白い論点でした。外部要因の変化による達成などを評価に加味するのかしないのかという議論です。わかりやすい例でいくと、広告営業におけるラッキーパンチや、メディアでの想定外のバズによるMAUの増加などです。我々は今回これら外部要因を評価の際に排除しない。つまりラッキーパンチで達成した場合も、「達成」と評価するということを決めました。ラッキーパンチを評価する理由としていくつか理由があがりましたが、私の中では以下の話が1番納得感がありました。

「スタートアップはお金に限りがあり、時間に追われているという特性上、外部要因による未達を許容できない。コロナみたいな外部要因ですら、変化を利用してうまく達成をしなければならない。もし外部要因を未達要因にする余地があればいくらでも逃げてしまえる。そして外部要因を未達要因として認めないなら、ラッキーパンチも達成要因として認めないとフェアじゃない。」

外部要因の扱いについては、当初の私の想定と逆の意思決定になりました。ある意味、社内で統一見解が取れてなかったので、議論できてよかったなと思います。例外として例えばリーマンショックや、重大な事故を起こした時など、会社予算そのものを大幅に下方修正することになった際は、個人の目標も相応に見直しをしたいと思います。

最後に…

いかがでしたでしょうか?ぶっちゃけそんなこともできてなかったんかいという内容ではあります。4年前に戻って最初からこう作れてればな・・・。っていう後悔はいっぱいあるんですよ!新しいことを学ぶたびに反省しかない。

ちなみにこの記事についてCOOの千葉にレビューしてもらったところ、仕組みを整えたのは事実だけど、実際にうちの評価制度がイケてるかどうかで行くと、一部の部署はマネジメントが足りてなくて適正な評価が受けられてない人がいる(少なくとも当事者はそう思ってておかしくない)から、イケてるわけじゃないよねという指摘をもらいました。

そうなんです。この観点も超大事で、結局仕組みを整えてもそれを使うのは人で、評価者であるマネジメントの採用や育成が非常に重要なファクターです。まだマネジメントが足りてない部署がいるので、候補者を口説くの頑張っていきます!そのための情報発信でもあります!

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