Yuki.T/ 田畑勇樹

職業:国際協力NGO職員。認定NPO法人テラ・ルネッサンス/ウガンダ駐在3年目。北東部…

Yuki.T/ 田畑勇樹

職業:国際協力NGO職員。認定NPO法人テラ・ルネッサンス/ウガンダ駐在3年目。北東部カラモジャ地域で農業支援に取り組んでいます。/ 職業的作家も目指しています。駐在日記として、この目で見た物語たちを文章で語っていきます。

マガジン

  • カラモジャ駐在日記

    ウガンダ北東部カラモジャ地域において農業プロジェクトに取り組む筆者の日記的記録

  • 世界に絶望しないための十万字クラブ

    • 2本

    カナダ北西の離島・ハイダグワイで先住民の営みを追う写真家の上村幸平と、ウガンダ・カラモジャ地域で農業支援に取り組む国際協力NGO職員の田畑勇樹による公開書信。それぞれの場所で全く違う職務に就きつつ、「本をつくる」という同じ目標を掲げる遠距離同僚として、不定期で文章を送り合う連載企画です。

最近の記事

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国際NGO職員としてアフリカで働きながら、職業的作家を目指す

0. はじめに25歳になった私のこれからについて。これまでやってきたこととこれからやりたいことを語る、少しながめの自己紹介記事になります。 最後にnoteを更新したのは2022年4月。現職の国際協力NGOに就職し、ウガンダに赴任する頃のこと。気合い十分に「現場の様子をどんどん発信していくぞ」という意気込みを記録していたと思う。 そんな意気込みとは裏腹に、その後の私はほとんど表舞台で文章書かなかった。現場で揉まれるなかで、良くも悪くも視野が広がり、尖ったメッセージの中から

    • マンゴーの繊維を受け止めて【カラモジャ日記 24-05-10】

       5月に入った。待ちに待ったマンゴーシーズンの到来だ。  日本でマンゴーを買おうと思ったら、いくらくらいかかるんだろう?検索をかけた僕は、率直に言って驚いた。1kgあたり、数千〜数万円だって?  ウガンダ北部 (僕が暮らす特定地域) は、マンゴーが非常に豊富な場所だ。巨大な桶一つに山盛りに積まれたマンゴーが、なんと2,000ugx (≒ 80円) 。破格中の破格。  町のいたるところにはマンゴーの大木が立ち並び、雨季の強い風が熟しかけた黄色い果実を揺らしている。路上では

      • マラソンとトウモロコシ 【カラモジャ日記24-04-27】

         4月の半ば、10日ほどの休みをとって久々の海外旅行に出かけた。  僕は基本的に短期間の旅行とか旅というのがあまり得意な方ではない。それは僕自身が"観察"に重きを置く性格である上に、新しい環境に心身を馴染ませるのには少々時間がかかるタイプだからだ。  それでも結果から言うに、今回の旅行はいいリフレッシュになった。もちろん土地に馴染み、ステイが楽しくなってきた頃には帰国する必要があったのは残念だったけど。  新年度の初めというこの時期に休暇をとったのには、二つの理由があっ

        • ある傷を負った少年との再会 【カラモジャ日記 24-04-05】

           乾燥した飢餓の大地に、集中的豪雨が降り注ぐ。ついにカラモジャにも、恵みの雨をもたらす限定的雨季がやってきた。僕たちはイギリス人に負けないくらい、天気の話をする。雨は僕たちの生命線だからだ。  雨は基本的に喜びの種だけれど、一つだけ厄介なのが副産物としてうまれる道路状況の悪化だ。未舗装路は豪雨によって秩序を失い、深い凹凸がところどころ思い出したかのように現れる。  そんな不規則な凸凹をかわしながら、僕たちは支援対象者が暮らすコギリギリ村に入っていく。  今週から僕たちは、

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        国際NGO職員としてアフリカで働きながら、職業的作家を目指す

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        • カラモジャ駐在日記
          8本
        • 世界に絶望しないための十万字クラブ
          2本

        記事

          ウガンダ生活10度目の病院にて【カラモジャ日記24-03-30】

           頭は痺れを感じ、身体の節々が軋むように痛む。血管の隅々にまで電流が流されたかのような細くて鋭い痛みだ。腸内には、風船から空気の抜けるみたいに高い音がピューと鳴り響き、10分おきに活火山が噴火するかのような爆発的な下痢が襲ってくる。  僕の身体は、明らかに正常ではなかった。 【1:00am】  やれやれ。病院に行くにも夜の闇はあまりにも深すぎた。ミネラルウォーターとともにパナドール2錠を飲み込んで、僕は夜が明けるのを待つことにした。なんとかベッドの上で目をつぶったけれど

          ウガンダ生活10度目の病院にて【カラモジャ日記24-03-30】

          愛しき牛と消費される牛、貨幣経済と貧困の出現 #2【カラモジャ日記 24-03-23】

          この文章は #1 に続くものである。 https://note.com/tabatytabaty/n/n90d5fef442c6 「貨幣経済の浸透だよ。誇りだった牛は市場で売り飛ばされる牛になった。そして、貧困の時代が始まった」  彼の表現はいささか文学的すぎて、僕はその意味を咀嚼するのに時間がかかった。そんな混乱した僕の目をじっと覗き込んで、ブライアンは長い話を始めた。 「ずいぶん昔のことだ。僕が小さかった頃('90年代後半か)、親からは周囲の民族間で、激しく牛を強奪

          愛しき牛と消費される牛、貨幣経済と貧困の出現 #2【カラモジャ日記 24-03-23】

          愛しき牛と消費される牛、貨幣経済と貧困の出現 #1【カラモジャ日記24-03-17】

           ここ数週間、雨季の到来を告げるような規則的な雨がカラモジャの大地を湿らせた。住民たちは天を信じて、ソルガム(カラモジャにおける主要穀物)の種を畑に蒔き始めた。  しかし、彼女たちの作付けが終わるのを待ち伏せしていたかのように、雨はピタリと降り止んだ。それからというもの、乾燥した強い風が吹き荒れ、雲ひとつない晴天の日が続いている。まるで反時計回りに時間が進んでいるみたいだ。乾季に逆戻りしたのかもしれない、と誰かが言った。 * * *  僕たちが活動するカラモジャは半乾燥地

          愛しき牛と消費される牛、貨幣経済と貧困の出現 #1【カラモジャ日記24-03-17】

          一粒の種から広がる物語 【カラモジャ日記 24-03-07】

           マニャタ*をくぐると、早朝から満を持して集まってきた住民たちの姿があった。乾いた牛皮の絨毯の上で、リーダーの女性が今シーズンに販売した野菜の売上を数えている。他のメンバーはそれを取り囲むように座って、積み重ねられた現金をまじまじと見つめていた。 (*マニャタ:カラモジャの人々が暮らす木塀に囲まれた小屋。木塀の隙間にある背の低い入り口をくぐるようにして敷地の中に入るのが通例)  乾燥して海老せんべいみたいになった牛皮の絨毯の上では、大量の札束やコインが焼けつくような太陽

          一粒の種から広がる物語 【カラモジャ日記 24-03-07】

          痛む手のマメ、満たされる心 【カラモジャ日記 24-02-28】

           雨の匂い。土の匂い。牛糞の匂い。十日ぶりに足を踏み入れた畑は、新しいシーズンの匂いに満ちていた。  ナタパル村の住民たちが、野菜を植えるために畑の準備をしている。今日の主な作業は野菜の苗を植えるための畝作り。そして土を肥沃にするため、畝に牛糞堆肥を混ぜ込んでいくことだ。  住民たちは、今日も賑やかに歌いながら鍬を振りかぶる。農作業はいつだって重労働だけれど、彼女たちはまるで答えを知りながら問題を解くかのように、スムーズに畑を耕していく。  細いながらもたくましい腕が規

          痛む手のマメ、満たされる心 【カラモジャ日記 24-02-28】

          平和の根源、意志の再確認【十万字クラブvol.2】

          前略  2月21日水曜日の午後8時。冷蔵庫で冷えていた白ワインの残りで口を湿らせながら、君が紡いだ言葉たちを一文字一文字、大切に味わうように読む。今朝君から届いた書簡の開封だけを楽しみに、僕は今日一日を懸命に生きたんだ。嘘じゃない、掛けたっていい。  手紙をありがとう。  率直に言って君のメッセージはいつも、僕にさまざまな感情を与える。勇気、平和、愛、中立、焦り、嫉妬。味のある桂馬の手筋で相手を翻弄するプロ棋士みたいに、君は人の心を揺さぶるような言葉を巧みに操る。それは

          平和の根源、意志の再確認【十万字クラブvol.2】

          新卒NGO就職、ウガンダ駐在に至るまで

          4月1日より、認定NPO法人テラ・ルネッサンスに入職しました。4月下旬からは、活動国の一つであるアフリカのウガンダに駐在します。 学部新卒のNGO就職、ウガンダ駐在ということで、ここまでの経緯を振り返ってみることにしました。 きっかけと大学生活のこと高校生の時に観た「こんなところに日本人」というテレビ番組。「インパラの朝」というノンフィクションの本。 それらから、自分にはまだ知らない世界がたくさんあることを知った。 なかでもアフリカという地域は、日本とはかなり違ってい

          新卒NGO就職、ウガンダ駐在に至るまで