見出し画像

真夏のシティ・ポップ名盤 定番30枚

Prologue

僕は「...旅とリズム...旅の日記 by 栗本斉...」というブログを持っていて、あまり更新していないとはいえ、かれこれ17年ほどの歴史があります。その中で常時アクセスされている記事の筆頭が、シティポップに関するもの。

真夏のシティ・ポップ名盤 定番10枚
真夏のシティ・ポップ名盤 定番10枚 PART2

1本目は2012年、2本目は2018年ですが、いずれもいまだに読んでいただいているようです。そこで、これらの原稿を手直しして再編集し、さらに数作品加えて表題の記事にして残しておこうと思います。

さて、ここで紹介する30枚は、70年代から2010年代まで幅は広いですが、真夏に聴きたいという共通項でセレクトしてあります。もともとシティ・ポップは夏やリゾートが似合う作品が多いですが、その中でもアルバム全体でその感覚を味わえるものを選びました。定番から変化球まで様々ですが、どれも汗ばむ季節を爽やかに過ごせそうな音楽ばかり。ジャケットも考慮してありますので、見た目でもそれなりに楽しめると思います。では、ペパーミント・ソーダのようなシティ・ポップの世界へ!

1. 鈴木茂『LAGOON』(1976)

画像5

鈴木茂といえば、はっぴいえんどの傑作群だったり、ソロ第1作目の『BAND WAGON』における和製ローウェル・ジョージ的なスライド・ギターのイメージが強いかもしれないですが、その後のソロ作品にも聴きどころは満載です。とくにお気に入りなのが、2作目のソロとなる本作。全編ハワイで録音されているので、リゾートっぽい空気感がたっぷり詰め込まれています。「LADY PINK PANTHER」や「TOKYO・ハーバー・ライン」といったメロウかつレイジーなヴォーカル・ナンバーはもちろんですが、ファンキーな「BRANDY WINE」でさえも、どこかブリージンで心地良さ抜群。

2. 西岡恭蔵『南米旅行』(1977)

画像5

なんといってもタイトルがたまりません。実際にメキシコ、バハマ、ニューオーリンズへ旅した時に作られた楽曲が集められています(あれ?南米ではなく中米ですね)。白眉はなんといってもメロウ・ソウルの傑作「GYPSY SONG」。関西ブルース・シーンの名グループ、ソー・バッド・レビューの面々やスティールパンの名手ロバート・グリニッジなどがバッキングしていることもあって、少しアーシーなところも味わい深い。ボサノヴァ風の「KURO'S SAMBA」やカリビアンな「DOMINICA HOLIDAY」などを聴けば、身も心も弛緩します。

3. 南佳孝『SOUTH OF THE BORDER』(1978)

画像5

僕にとってこのアルバムは、夏をテーマにしたAOR作品の最高傑作だと確信しています。なかでも「プールサイド」での、男女の駆け引きを見事に描いた来生えつこの歌詞の世界がとにかくオトナ。「日付変更線」、「夜間飛行」、「終末のサンバ」といった和製ブラジリアンの名曲もたっぷりなのもいいですね。坂本龍一をはじめとするYMO人脈が、フュージョン・テイストのバッキングに徹しているのもかっこいい。池田満寿夫の版画を使ったジャケットもリゾート気分をそそられます。

4. 松任谷由実『紅雀』(1978)

画像5

ユーミンの夏の名盤といえばやっぱり『PEARL PIERCE』なのでしょうが、個人的にはこの松任谷姓になって初めてのアルバムも外せません。一般的にはもっとも地味な作品なんていわれているようですが、グルーヴィーでメロウなサンバ「私なしでも」は名曲。ジョアン・ジルベルトにインスパイアされたという「地中海の感傷」におけるボサノヴァ風アレンジのひんやりした感触もたまりません。フォルクローレ・テイストの「ハルジョオン・ヒメジョオン」もあり、ラテン色も濃厚です。

5. 吉田美奈子『LET'S DO IT -愛は思うまま-』(1978)

画像5

4つ打ちのディスコ・ビートに乗って爽快なサウンドが弾ける「愛は思うまま」から、日本人離れしたセンスが炸裂する傑作。実際、本作はバリー・ホワイトなどとタッグを組んでいたジーン&ビリー・ペイジがプロデュースしたLA録音作。デヴィッド・T・ウォーカーやグレッグ・フィリンゲインズなども参加しています。やはり「海」や「愛の炎」といったグルーヴィーなナンバーが印象に残るのですが、バラードの「影になりたい」ではゴスペル風の荘厳な歌声を味わえます。

6. 大橋純子&美乃家セントラル・ステイション『沙浪夢 SHALOM』(1978)

画像6

全体的にファンキーな楽曲が多い大橋純子ですが、このアルバムその中でももっともテンションの高い楽曲が揃ったといえる一枚。パワフルな歌声はもちろんですが、バックを支える美乃家セントラル・ステイションのプログレッシヴな演奏能力の高さを思い知らされる作品でもあります。ラテンとファンクを合体させた「季節風便り」や「SPANISH WIND」などのカッコ良さに悶絶させられつつも、ソフトな「SUMMER DREAMIN'」やニュー・ソウルっぽい「JUST FALLIN' IN LOVE」にもグッときます。

7. 竹内まりや『UNIVERSITY STREET』(1979)

画像7

ユーミンとは真逆で、溌剌とした夏のイメージ。それも大学生の夏休みって感じで、とにかく甘酸っぱい。「想い出のサマーデイズ」や「ブルーホライズン」あたりは爽やかな涼風のようですね。もちろん山下達郎のコーラスがところどころに登場し、色鮮やかなイメージを作り上げています。アメリカン・ポップスやAORテイストのアレンジも、彼女の声にぴったり。ヒットした「ドリーム・オブ・ユー~レモンライムの青い風~」も収められています。春の卒業シーズンから夏の終わりまで聴けますね。

8. ブレッド&バター『Late Late Summer』(1979)

画像8

ブレバタは元祖シティ・ポップといわれることもある湘南の兄弟デュオ。本作はアルファに移籍して最初の作品で、彼らのなかでもメロウネスが突出した一作といえるでしょう。とにかく「SUMMER BLUE」における細野晴臣のアレンジ・センスはすごいとしか言いようがありません。タイトなビートと浮遊感のあるシンセを従えたメロディアスなサマー・ソングは、まさに夏のアンセム。ボサノヴァ風の「渚に行こう」や、Le Mistral名義で発表してヒットしたディスコ調の「青い地平線 - BLUE HORIZON」など、どれも涼風が感じられる曲ばかりです。

9. 岩崎宏美『Wish』(1980)

画像9

歌謡曲からシティ・ポップへの返答とでもいうのでしょうか。岩崎宏美と筒美京平のコラボレーションが、もっとも濃密に結実したアルバムかもしれません。歌手としては少しヒットから遠ざかりつつあった時期ですが、初の海外録音ということもあってクオリティは申し分なし。とりわけメロウな「Street Dancer」は色褪せることのない大傑作。エレピの音色とともに情感豊かに歌い上げてくれます。「Kiss Again」や「Rose」などアダルトな雰囲気が素晴らしく、筒美京平のピアノをバックに歌う「Wishes」も必聴。

10. 大貫妙子『Aventure』(1981)

画像10

大貫さんといえばドラマの主題歌にもなった「夏に恋する女たち」が定番。ただ、アルバム単位だとこれがもっとも夏に聴きたい作品かな。打ち込みとサンバが融合した「Samba de mar」には、とにかくテンションが上がります。こんなにヨーロッパの香りが濃厚なブラジリアンって他に聴いたことがありません。「La mer, le ciel」のソフト・ボッサ路線も心地良いし、まるで60年代の映画を観ているような3拍子の「グランプリ」も素晴らしい。なにより、“アヴァンチュール"というアルバム・タイトルにドキドキさせられます。

11. 伊勢正三『スモークドガラス越しの景色』(1981)

画像11

かぐや姫時代はどうしてもフォーク的なイメージでしたが、ソロになってからの作品はフォークとシティ・ポップが絶妙に融合した独自の世界観を生み出していました。この3作目は、その中でももっともアーバンでメロウな一枚。波の音に溶け込むようなコーラスワークが美しい「Sea Side Story」、スローながらもスタイリッシュに決めた「スモークドガラス越しの景色」、西海岸風のアコースティック・チューン「グラフィティの部屋」など、全体的に漂うけだるさも癖になります。

12. 伊藤銀次『BABY BLUE』(1982)

画像12

どちらかというとブリティッシュ・ロックなイメージの人なので、一般的に夏とは結びつかないかもしれません。でも、このアルバムに収められた冒頭の2曲は外せません。とくに「Baby Blue」の高揚感に溢れるメロディとキラキラしたE.L.O.のようなアレンジは、至福のひととき。続く「雨のステラ」は、夕立の間にでも聴くとはまりそうなメランコリックなミディアム・チューン。夏のドライブにも使えるので、村田和人の諸作と一緒に揃えておきたい一枚です。

13. 佐藤博『Awakening』(1982)

画像13

フロントマンというよりも、アレンジャーやティン・パン・アレー周辺のセッションなど、スタジオ・ミュージシャンというイメージが強い人ですが、ソロ作品もなかなか侮れません。本作はリンドラムというリズムマシンを駆使した、当時の最先端のサウンド。こういうのはすぐに古臭くなりがちですが、山下達郎がソリッドなカッティング・ギターで参加した「SAY GOODBYE」や、松木恒秀のメロウなギターのオブリガートが気持ちいい「I CAN'T WAIT」などセンスのいいアレンジのため、当時の清涼感はまったく色褪せません。

14. 杏里『Heaven Beach』(1982)

画像14

「CAT'S EYE」や「悲しみがとまらない」といった大ヒットを飛ばしまくる前年に発表された隠れた名作。このアルバムで初めて角松敏生をソングライターとして起用。ディスコ風の「二番目のaffair」からメロウな「Last Summer Whisper」へと畳み掛けるような展開で一気に引き込まれます。また、小林武史によるメロウ・ボッサ「Resolusion」、杏里自身によるバラード「Heaven Beach」も聴きどころ。彼女の夏のイメージはここから始まったともいえます。

15. 東北新幹線『THRU TRAFFIC』(1982)

画像15

作編曲家としてよく知られている山川恵津子と、山下達郎バンドにも一時期在籍していたギタリストの鳴海寛によるユニットが、唯一残したアルバムです。いわゆるAOR風のサウンドを取り入れた良質なポップスがてんこ盛りの傑作。山川節炸裂の「Up and Down」のような溌剌としたナンバーもいいのですが、個人的には鳴海寛のセンシティヴな歌声が聴ける「心のままに」や「ストレンジ・ワイン」などがツボにハマりました。コーラス曲やインストも充実していて、夏の海辺でぼんやりとしながら聴きたい一枚です。

16. 角松敏生『ON THE CITY SHORE』(1983)

画像16

アーバン・コンテンポラリーに辿り着くまでの角松さんも、初期の頃は街よりもリゾートが似合うサマー・チューンがたっぷりありました。この3作目は夏路線の最高傑作といえるでしょう。佐藤準や青木智仁など最高のスタジオ・ミュージシャンを配して、きらびやかなサウンドを構築。ミディアム・メロウな名曲「BEACH'S WIDOW」や、せつないバラードの「LET ME SAY…」などその後のライヴの定番曲も多く、この人にしか出せない独特の色気を感じます。ジャケットに写っている女性も意味深で気になりますね。

17. 村田和人『ひとかけらの夏』(1983)

画像17

お気に入りのシティ・ポップを挙げていくとどうしてもメロウなものに偏ってしまうのですが、そうではなく暑い季節にテンションを上げていくのならこの作品に限ります。とくに山下達郎がプロデュースし、マクセルのCMソングとしてヒットした「一本の音楽」は、窓をあけっぱなしにして夏の風を受けながら聴くには最高のドライヴィング・ソング。他にも、「Summer Dream」や「やさしさにGood-bye」、「ニコニコ・ワイン」のようなメロウネスに包まれたキャッチーなナンバーに酔えます。

18. 山下達郎『BIG WAVE』(1984)

画像18

達郎さんはどれを選んでもいいくらいなのですが、ここでは思いっきりベタに真夏のアルバム。サーフィン映画のサントラですが、観たことはありません。というか、なかなか観る機会ないですよね? それはともかく、英語詞に徹した洋楽志向のアルバム自体は最高に素晴らしい。もともと大貫妙子に提供するはずだった「THE THEME FROM BIG WAVE」の爽快感と、多重コーラスが際立つ「I LOVE YOU」の清涼感、そしてビーチ・ボーイズの渋いカヴァー曲などバラエティに富んでおり、夏にずっと聴いていたい作品です。

19. 大滝詠一『B-EACH TIME L-ONG』(1985)

画像19

大滝さんといえば『ロンバケ』なんでしょうが、僕にとってはこのアルバム。もう25年くらい毎年のように聴き続けていますが、いまだ飽きることはありません。本作は、「カナリア諸島にて」や「ペパーミント・ブルー」などに代表されるリゾート・テイストの楽曲を集め、それぞれの曲のイントロに『NIAGARA SONG BOOK』として発表されたインストの一部を付け加えたという企画盤なのですが、これがよく出来ているのです。発表当時、雑誌「FM STATION」のインタビューで「約60分なのでタイマー代わりにも使えます」なんて言ってたのが印象的。

20. 松田聖子『The 9th Wave』(1985)

画像20

聖子ちゃんもリゾートテイストの名曲がたっぷりありますね。「セイシェルの夕陽」、「Sleeping Beauty」、そして個人的には一番大好きな「小麦色のマーメイド」と、それだけで何枚もコンピレーションが作れそう。アルバム単位でいえば、『ユートピア』と並ぶ夏の名盤が本作。松本隆が外れた結婚直前の作品ですが、尾崎亜美や原田真二といったソングライターに恵まれ名曲揃い。シングル・ヒットした切ない「ボーイの季節」や、気だるい夏の午後を思わせる「夏の幻影」にはじんわりきます。

21. 二名敦子『WINDY ISLAND』(1985)

画像21

歌謡ポップス系だったのが、リゾート・ポップに路線変更してブレイクしたシンガー。前作『LOCO ISLAND』は佐藤博が全編をアレンジした傑作でしたが、こちらは芳野藤丸が全面バックアップしています。ベスト・トラックは佐藤健が曲を手掛けたミディアム・グルーヴの「Icebox & Movie」ですが、当時大人気だったカシオペアの桜井哲夫と野呂一生が、それぞれ「PH-8」と「Ocean Wind」という佳曲を提供。ハワイのバンド、パブロ・クルーズとの共演曲もあり、ジャケットも含めてコンセプトが徹底された力作です。

22. 1986オメガトライブ『Navigator』(1986)

画像22

もちろん杉山清貴時代のオメガトライブもいいのですが、カルロス・トシキがヴォーカルに抜擢されてからは、さらにリゾート路線を追求。ヒット・シングル「君は1000%」が収録されていますが、それよりもちょっとブラコン風のサウンドで冒頭を飾る「Blue Reef」や、ミディアム・テンポのリズムが心地良い「North Shore」などに惹かれます。新川博、椎名和夫、船山基紀といったアレンジャーによって、全体的に80年代的などこか無機質な質感も、今となっては楽しめます。

23. 杉真理『MADE IN HEAVEN』(1991)

画像23

『ナイアガラ・トライアングルVol.2』参加以降の80年代のアルバムが評価されることが多いですが、ポップ職人として今も変わらず質の高い傑作を作り続けています。なかでも、もっとも夏らしい作品が本作。アコースティック・ギターがざくざくと刻むリズムときらびやかなアレンジに彩られた「未来世紀の恋人へ」から、早くも楽園の音楽が聞こえてきます。続く「青い楽園」はウォール・オブ・サウンドとエキゾチック・サウンドが混じり合うスウィートなポップス。南佳孝にも通じるの穏やかな雰囲気は、リゾートのひとときにぴったりです。

24. 今井美樹『A PLACE IN THE SUN』(1994)

画像24

この人の夏のアルバムといえば、『Bewith』や『AQUA』も捨てがたいのですが、1枚選ぶとなるとこのアルバムでしょうか。一般的には布袋寅泰が手がけたバラードの名曲「Miss You」が収められていることで認知されていますが、アルバムのキーマンは坂本龍一。クールなボサノヴァ・ナンバーの「Martiniqueの風」はどことなく大貫妙子にも通じるものがあります。また、上田知華が作曲し、坂本龍一がアレンジしたバラード「海辺にて」もしっとりといい雰囲気。そしてなぜか映画音楽風のインスト「Watermark」で締めるという構成も圧巻です。

25. 具島直子『miss. G』(1996)

画像29

発表当時も高く評価されていましたが、今も熱心なファンを持つシンガー・ソングライター。 ブラック・ミュージックのテイストが香るサウンドと、アンニュイな歌声とのマッチングは奇跡的ともいえます。とにもかくにもたゆたうようなグルーヴを持つ名曲「CANDY」に尽きますが、どこかセンチメンタルで憂いを感じさせる「Melody」や、スウィート・ヴォイスにとろけそうになる「Love song」など名曲が揃った大傑作。プロデューサーの桐ヶ谷ボビーは、もともと本名の桐ケ谷俊博でデビューしており、兄の桐ケ谷仁もシティ・ポップ的な作品を残しています。

26. MOOMIN『In My Life』(1998)

画像30

レゲエのリズムはシティ・ポップの味付けに使われることがよくあるのですが、レゲエ・シーンからストレートにシティ・ポップ的なアプローチで来るというのは、当時かなり斬新でした。とくに山下達郎の「WINDY LADY」を大胆にカヴァーして話題になりましたが、それ以外の楽曲もレゲエにとらわれないポップな出来栄え。ファンキーなグルーヴに乗せて甘い声で歌う「FEEL ALRIGHT!」、ソウルフルなコーラスが気持ちいい「TIME IS ON MY SIDE」、DEV LARGEの繊細なアレンジが光る「夏の終わり」などは、他のシティ・ポップ・チューンと並べても遜色ないはず。

27. paris match『type III』(2002)

画像25

シティ・ポップというよりもアシッド・ジャズ以降のポップスといったほうがいいのかもしれませんが、とにかくparis matchの作品もグルーヴィーでメロウなナンバーの宝庫。代表曲でもある冒頭の「Saturday」におけるドライヴ感、スウィング・アウト・シスターみたいなおしゃれ感満載の「Deep Inside」、そしてオマーの名曲「There's Nothing Like This」へと畳み掛けるような展開にノックアウト。「the day i called it a night」のようなラテンを取り入れたスキャットもかっこよく、猛暑でもかなり涼しくさせてくれます。

28. 畠山美由紀『Wild and Gentle』(2003)

画像26

Port of Notesの名盤群も聴き逃がせませんが、ソロとしてシティ・ポップ度が高いのはこの2枚目のオリジナル・アルバム。4組のプロデューサー兼アレンジャーが参加していて佳曲揃いですが、どうしても冨田恵一が手がけた3曲に耳がいってしまいます。特に極上メロウ・グルーヴの「罌粟」は、いつまでも終わってほしくないと思うほど素晴らしい。切なくも爽快なグルーヴィン・ポップを展開する「海が欲しいのに」や、ミドル・オブ・ザ・ロードのバラード「真夏の湿原」も見事で、真夏はもちろん夏の終わりまでリピートし続けたい一枚です。

29. 一十三十一『CITY DIVE』(2012)

画像28

流線形のクニモンド瀧口がプロデュースを手がけたヒトミトイのアルバム。80sディスコ・テイストの作品を発表しているドリアンなども参加し、完全にあの頃へのオマージュになっています。なんといっても冒頭の「DIVE」のセクシーかつクールなかっこよさに痺れますが、メロウな「人魚になりたい」やシンセ・ポップ風の「サマータイムにくちづけて」なども聴きどころ。80s風のシンセサイザーの使い方もセンス抜群で、全体的にレトロなんだけれど斬新というか、新しさと懐かしさが同居した心地良さに満ちた作品です。

30. ナツ・サマー『Natsu Summer & Dub Sensation』(2018)

画像29

シティポップ・レゲエというジャンルを打ち出しているナツ・サマーのセカンド・アルバムです。こちらもプロデュースはクニモンド瀧口ということもあり、80sへのオマージュと思えるラヴァーズ・ロックが満載。スティールパンの音色を効果的に使ったバンド・サウンドが特徴で、ロックステディ調の「ロング・ホット・サマー」やカリブ色が濃厚な「ジャパニーズ・レゲエ・ウーマン」など、清涼感のある歌声に似合った名曲が目白押しです。

**********************

Epilogue

というわけで、真夏に聴きたいシティ・ポップの名盤を30枚挙げてみましたがいかがでしたか。まだまだ真夏に聴きたいシティ・ポップはあるのですが、まずはここに挙げたアルバムをぜひじっくりと聴いていただきたいと思います。

シティ・ポップの概要や歴史などを知りたいと思ったら、少し前のものではありますが、僕が書いた下記の記事も読んでみてください。

さらに深く知りたい方は書籍や雑誌もぜひ!いずれも僕が関わっています。

それと、夏モノだけではないですし、ここにあるアルバムを全部網羅していませんが、Spotifyで70~80年代に特化したシティ・ポップのプレイリストを作っていますので、よかったらこちらもお楽しみください。

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?