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発刊順:57 愛の探偵たち

発刊順:57(1950年) 愛の探偵たち/小倉多加志訳

雪に閉ざされ、外界と隔絶した山の民宿にはそれぞれ面識のない客が数人泊まっていた。ラジオからはロンドンで起こった殺人事件のニュースが伝わってくる。そこへ電話が入った。警察からだ。ラジオ・ニュースの事件とこの民宿に何らかの関連がある、これからこちらへ向かうというのだ。果たして刑事はやって来たのだが・・・不気味なマザー・グースの調べに乗って起こる奇怪な糸に操られた連続殺人劇とは?あまりに有名な戯曲「ねずみとり」の原作「三匹の盲ネズミ」をはじめ、マープルもの4篇、ポアロもの2篇、クィンもの1篇を収める珠玉集。

ハヤカワ・ミステリ文庫の裏表紙より


「三匹の盲ネズミ」は、あらすじにもあるとおり、「ねずみとり」として1952年に劇化され、その後超ロングランで上演され続けた戯曲である。
元々は、クイーン・メアリの80歳の誕生日記念のためにBBC放送のラジオ・ドラマとして書かれた本作。
ラジオから聴く物語として書かれた前提で読むと、途中流れるマザー・グースの<三匹の盲ネズミ>をピアノで弾く場面とか殺人の手段による物音の演出、そして登場人物の会話など「音」が鍵となっているように読める。
 
表題作は唯一のハーリ・クィンもので、再びサタースウェイト氏も登場する。この2人が揃って事件を解決していく不思議な物語は、ポアロやマープルものとは違った独特な世界が描かれている。
神秘の力を持つクィン氏はあくまでも裏方に徹して、サタースウェイト氏を誘導していく。そのサタースウェイト氏も、表面意識では気づいていないが、ちゃんと証拠となるものを握っていて、クィン氏にそう指摘されるのだ。
 
ポアロ、マープル、クィン氏それぞれに個性がまったく違い、事件解決の方法も違うので、その違いを楽しめる1冊となっている。
タイプは違っても、どの探偵の心の深奥に、犯罪を憎み人間に対する「愛」がある・・・。
 

HM1-55 昭和61年9月 第14刷版
2023年2月3日読了

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