司令塔目線から見る、無策の弊害~日本対モンゴル レビュー~[W杯二次予選]

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皆さんこんにちは。こんばんは。おはようございますの方もいるかもしれません。ですので、おはようございます。次から辞めます。このノリ笑

今回は日本代表。カタールW杯二次予選のホーム開幕戦となるモンゴルとの一戦。いつもなら他のJリーグや欧州サッカーの試合の分析と同じように分析していくのですが、先日のこのツイート↓

この投票にたくさんの反響やご意見を頂きました。投票結果を見ると、少なくとも僕のツイートや戦術分析記事を読んでいただいている方は欧州サッカーのレビューに興味を持たれていて、戦術的なレビューに関して言えば日本代表への関心は薄いことがわかりました。

僕の忘備録的なブログであればそんなこと一切関係なしに僕の書きたいことを書くんでしょうが、僕は多くの人の考えを聞きたい、多くの人と関わらせてもらった上で学びたい、という思いがあることもあって書いているので、この目標を達成するためには皆さんの意見に沿うことも必要だなと思いました。なので、今回はいつものように日本代表を分析するのではなく、少し目線を変えてみたいと思います。

タイトル画像とタイトルでお分かりの方もいるかもしれませんが、今回は「柴崎岳にフォーカス」して、柴崎目線から日本代表を考察していきます。

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序章 スコア&スターティングメンバー

日本 6 : 0 モンゴル
日本:22'南野 29'吉田 34'長友 40'永井 57'遠藤 82'鎌田

日本対モンゴル 1

完全に日本代表のことしか書かないのでモンゴルの方は省略しますが、日本代表はGK権田、4バックに長友、吉田、冨安、酒井、2CHに柴崎、遠藤、2列目に中島、南野、伊東の3人が並び、最前線は永井。いつもは堂安が起用されている右SHには堂安とは全く違うタイプの伊東が起用され、負傷で招集されていない大迫のポジションには永井が起用されました。システムはいつもの4-2-3-1システムです。

第1章 チームとしての戦いを簡単に振り返る

まずは柴崎ではなく、日本代表がチームとしてどのような戦いをしていたのかを簡単に分析します。

日本対モンゴル 2

上図がこの試合で何度も見られたシーンです。左サイドでポゼッションして相手を左サイドに寄せて、中島から一本で右にサイドチェンジする形。試合中も森保監督は「サイドを変えろ」という指示を出していたようですので、これに関してはある程度チームとして意識されていたことなんだと思います。

ですが、このプレーも完全に中島の判断に依存していました。中島がサイドチェンジ出来そうなタイミングでサイドチェンジしていて、チームとしてサイドチェンジをするためのメカニズムが構築されていたわけではありません。森保監督がトレーニングからコーチングして、意識付けをしていたことなのかもしれませんが、個人に依存していてとても抽象的だったなと思います。これだと中島がいなくなってしまうと出来ないプレーになってしまいます。現に中島のいない右から一発でサイドを変えるシーンはほとんど見られなかったと思います。

日本対モンゴル 3

また、基本的にずっと攻撃する時間が続いていて、押し込んでいたのですが、モンゴルは引いてスペースを消す守備をしながらも、マークの受け渡しが出来ておらず、受け渡さないのなら最初にマークしていた選手が追跡していく必要がありますが、それも行われていないという整備されていない守備をしていたので、この3点目のシーンのように、あっさりコンビネーションによって崩すことができていました。

はっきり言ってモンゴルとは結構力の差があったので、この試合に限っては好きなようにコンビネーション出来ていたな、と。ですが、いっつも言ってることですが、これがW杯で対戦するチームが相手となるとまた話が変わってくるわけで。そんなに簡単にコンビネーションで打開させてくれませんし、日本より個々人のレベルが高い国もたくさんあります。なので、この試合で綺麗に崩して6点取れた(言っても二つはCK)からといって浮かれている場合ではありません。

守備に関しては、ほとんど守る時間が無かったのであまり深く言及することは出来ませんが、モンゴルは攻撃においても未熟なので、大して問題は生じていなかったかなと思います。ロングボールも吉田と冨安がしっかり競り合いに勝ち、2ndボールを回収出来ていました。

第2章 [柴崎岳] トランジション

ではここからは柴崎のプレー分析をしていきつつ、柴崎に注目して分かったチームの問題点を書いていきます。

守備に関しては柴崎もほとんど書くことなかったので飛ばしまして、まずはトランジションから行きます。

日本対モンゴル 4

攻撃でタクトを振るい、パスでチャンスメークするイメージの強い柴崎ですが、この試合ではNT(ネガティブトランジション)で素晴らしいプレーを見せていました。上図に示したように、奪われた瞬間にとても素早く切り替えて、前方へのパスに早い出足で反応してインターセプトし、自分たちの元にボールを取り戻していました。この局面でのプレーを見ると、柴崎の危機察知能力の高さが読み取れますし、NTへの意識の高さやコンディションの良さも伺えます。

特に53:02のボールロストした後に1stプレッシャーをかけた遠藤に連動してゲーゲンプレッシングをかけ、パスをインターセプトしたシーンなんかは良いシーンです。そのほかにも、サイドに出て行ってパスをインターセプトするシーンもあり、行動範囲の広さも見せました。

恐らく泥臭いプレーを苦手としてる印象を持たれている方がいるのではないかなと想像しますが、確かにフィジカルコンタクトが強い選手ではなく、カンテ(のよう)ではありません。しかし、切り替えの局面での地味な仕事でもチームに貢献できる選手です。

しかしチームに目を向けると、柴崎のプレッシャーに対しての連動性が欠けていると感じました。柴崎だけで何とか出来てしまっていたのでこの試合では問題が生じていませんでしたが、柴崎だけの単発で行ってしまうとさっきのチーム攻撃の章でも書きましたが、よりレベルの高いW杯で対戦するようなチームと対戦した場合はそのプレスを交わされてカウンターを喰らってしまいます。もし「他の選手が連動してゲーゲンプレスをかけるのはリスキーだから辞めたほうがいい」という考えに至るのなら、柴崎もプレッシャーをかけに行かないほうが良いのでしょうし、リトリートするべきなのかもしれません。ですが、日本代表はリトリートしたところで引いてもフィジカル勝負で負けるわっていう話になるので、奪われてNTになったら全員が連動してゲーゲンプレスをかけて即時奪回からのショートカウンターを狙う戦い方の方が適していると思います。ですからチームとして柴崎の方向に合わせるべきかなと。

そしてPT(ポジティブトランジション)では、

日本対モンゴル 5

相手がロングボールを蹴ってきて、CBが相手FWと競り合った時にきっちり2ndボールを拾えるポジショニングをしていて、2ndを拾って次に繋げる準備がきっちり出来ていました。

第3章 [柴崎岳] 攻撃

ではこの章では柴崎の攻撃のプレーを分析します。

まずは、この章の目的とは少しずれるのですが、試合の中で見られたシーンを紹介します。

日本対モンゴル 9

まず良いシーンから。40:25のシーンです。4点目が決まった直後のモンゴルのキックオフからのプレーですが、モンゴルが後ろに下げるのではなくいきなり突っ込んできたところを遠藤が奪い、冨安に渡り、永井に縦パスが入ります。ここで柴崎はススッとポジションを上げて、永井の落としを受けれるポジショニングをしています。そして永井からの落としを受けてレイオフを成立させ、南野へスルーパス。しかし南野がオフサイド、というシーンでした。

多分このシーンで柴崎は、南野や伊藤がいて、永井から落としを受けたらどっちかにスルーパスを出せる、というところまで考えていたと思います。彼の首を振る回数というのは尋常ではないほどですし、常に周りの味方・相手のポジションの情報を仕入れているので。

このシーンは、柴崎のサッカーIQの高さを知るのに適しているシーンだと思います。

では改善点も挙げておきましょう。

日本対モンゴル 7

攻撃時、柴崎は相方の遠藤と縦関係になります。遠藤は積極的に攻撃参加し、柴崎は後方に残ってバランスを取る。この関係でプレーしていました。その中で見られたのが↓

日本対モンゴル 8

この図のように、柴崎も遠藤も上がってしまって、中盤をガラ空きにし、相手のカウンターのための広大なスペースを与えてしまうシーンが3度ほど見られました。柴崎も回数は少ないとは言え何度か上がっていくシーンがあったので絶対上がらないというわけではなく、40:25のように機を見て攻撃参加するスタンスでしたが、その「上がるタイミング」に関して遠藤とコミニュケーションを取ることが出来ていなかったんじゃないかなと思います。

しかし、最近柴崎は橋本とコンビを組むことの方が多かったので、これから遠藤とコンビを組む回数が増えていけば、改善されるでしょう。

ではここからがメインです。

最初にパスソナーをご覧ください。

柴崎岳 10

これは前後半通じてのフルタイムでのパスソナーですが、CHながらもとても広範囲に顔を出してパスを捌いている事が読み取れます。中でもセンターサークル付近が飛び抜けて多いのですが、僕がここで気になったのは、直線的な前方へのパスが無いことです。センターサークル付近から前方へのパスとなるとライン間にポジショニングしているアタッカーへの縦パスということに基本的にはなりますが、その縦パスが出ていない、ということです。トータルの69本のパスの中でセンターサークル付近の6つのエリア(パスソナー図で分割されている)から配給された47本のパスの内、2本しか前方には配給されていません。つまりほとんどのパスは横もしくは後ろへのパスだったのです。試合を見ると、その2本のパスも近くの味方に渡したもので、この試合、柴崎はライン間に縦パスを1本も配給していません。この数字は、柴崎にしては意外な数字だと思いますし、この数字が表していることには絶対に意味があると思います。

なぜなら、柴崎はパスでチャンスメークする選手ですよね。確かに「柴崎らしい」パスというのは3本ほど見られましたが、柴崎の鋭く、正確で精密な縦パスをチームとして活用しないという手段はないと思います。もちろん、アジアカップの分析などで書いたように、スペースが無い場所に無理に打ち込むのは良くないですが、逆に全く縦パスを使わないのも良くない。ここで浮き彫りになるのは、

「柴崎のパスを活用するメカニズムの不足」

です。これに関して、もし選手が頭の中で「やろうとしていること」があるのなら良いのですが、これまで書いてきた通り原則がほとんどない状態で日本代表はプレーしていますし、柴崎から縦パスを引き出そうとする動きをアタッカーが見せたわけではないので、これに関しても「原則を落とし込んでる途中」ではなく、「メカニズムを考えていない」状態で、選手の頭の中にそのメカニズムはない、と僕は推測します。

ですので今回は「柴崎を生かすメカニズム」を提案したいと思います。

第4章 柴崎を活用するメカニズムの提案

前章で説明は済ましたので早速行きましょう。

まず一つ目。

日本対モンゴル 10

永井が裏を狙い続けることで相手CBの重心を後ろに向けさせ、ラインを押し下げさせる。そして長友が高い位置を取って相手SBに長友を気にさせる。この2段階によってライン間ILに立つSH中島(トップ下の南野でも良い)を浮かせます。そしたら柴崎であれば容易に縦パスを打ち込むことができますよね。そのコースを相手MFに切られるのであれば、中島が微妙にポジションをずらせば良いですし、CBや遠藤との「遊びのパス」によって相手を引っ張り出して背後を空ける、という方法もあります。

そして、次に提示する二つ目も解決策になり得ます(縦パスが無理だったらサイドを変えてしまう、という意味で)↓

日本対モンゴル 11

この試合の日本代表も見せていた攻撃「サイドチェンジ」です。そのサイドチェンジをロジカルに行うという提案です。個人に依存するわけではなく(もちろんキックは依存するわけですが)、サイドチェンジしやすい環境を作るということです。左サイドでポゼッションして相手を左側に寄せて右サイドにスペースを空けたら、逆SHの伊東はバックドアを狙います(相手逆SBの死角からDFライン裏を狙うという意味です)。そしてSBの酒井は幅を取れる高さまでポジションを上げる。こうすれば、出し手側には伊東(裏)と酒井(幅)という二つの選択肢がもたらされますよね。そうなったら出し手は伊東、酒井の動き出しに対する相手の対応に対応する、という後出しジャンケンが可能になります。これが一つだけだと後出しするための選択肢がありません。

そして中島ばっかりが個人の判断でサイドチェンジしてるように見えましたが、メカニズムを確立することで中島だけでなくサイドチェンジを蹴れる柴崎がサイドチェンジすることも出来ます。そうなれば相手にしたら中島を消せば良いって訳でも無いですし、中島は左サイドですが、柴崎が右に流れてパスをもらえば右から左へのサイドチェンジも再現性高く行えるので、ボールサイドで詰まったらサイドを変えまくる攻撃も可能になります。

このように、チームの絶対的な「司令塔」である柴崎をもっともっと活用するプレー原則、メカニズムは必要不可欠だ、とこの柴崎のプレー分析をして思いました。

総括

チームとしての戦い
・中島が左から右に何度もサイドチェンジしていた。
・サイドチェンジは森保監督も指示していたようで、チームに意識づけされていたのかもしれないが、まだまだ抽象的で、中島の判断に完全に依存していた。
・モンゴルの守備は成熟されていないので、コンビネーションであっさり崩すことが出来た。
・伊東が躍動したが、これも相手に依存している部分が大きい。
・W杯で対戦するようなチームだと全く話が変わるので、6-0で勝ったからといって浮かれてる場合では無い。
柴崎岳 プレー分析
[トランジション]
・NTでは、素晴らしい切り替え、危機察知能力を発揮した。
・何度もパスをインターセプトしてカウンターの芽を摘んでいた。
・しかし、チームとしての連動性に欠けている
・PTでは、CBの競り合った2ndを拾えるポジションに常に立っていて、しっかり2ndを拾った後のプレーのために準備していた。
[攻撃]
・40:25 ボール奪取後、ライン間に入っていってレイオフを受け、スルーパス。
→柴崎のサッカーIQの高さがよく分かる。
・CHの相方である遠藤と同じタイミングで攻撃参加するシーンが複数回あり、コミニュケーション不足が読み取れる。
→しかし、最近は橋本とコンビを組んでいたので、これから遠藤とコンビを組む回数が増えれば改善が期待できる。
・69本パスを配給された中のセンターサークル付近から配給された47本の中でライン間への縦パスは一本も配給されていなかった。
・↑から分かるのは、「柴崎を活用するメカニズムの不足」だ。
柴崎を活用するメカニズム

・永井が裏を狙い、長友が幅を取ってCB,SBを釘付けにしてライン間ILの中島(南野)を浮かし、そこに縦パス。
・縦パスのコースを相手MFが消してきたら、中島がポジションをずらしたり、遊びのパスでそのMFを引っ張り出して背後を空けたり、②も解決策(ボール側が無理だったらサイドを変える)となる。

・逆サイドの伊東は相手SBの死角から裏抜け。酒井は幅を取れる位置まで上がる。
・複数の選択肢を出し手が獲得する事で、後出しジャンケンが可能に。相手の対応に合わせて適切な方にサイドチェンジを送る。
・サイドチェンジするメカニズムが確立される事では中島の判断に依存しない。
・中島に依存しないので、右に柴崎が流れてパスを貰えば、右からサイドチェンジが可能。中島と柴崎でサイドを変えまくる攻撃をすることが出来る。

最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!リクエストがあればツイッター(@soccer39tactics)のリプライ、下のコメントにでもお書きください。

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