自炊

自炊のススメ

先日、料理人の友人(元ウチのスタッフ)と話をしていた際、彼が言った一言に大きく頷いた。
「俺、CPって言葉を使う客が嫌いです。1,000弱でもCPとか言うお客さんいますよね?もう来ないで良いなって思います。」
俺は頷きすぎて、顎が爪先に当たりそうだった。
彼の店では、オムライスもハンバーグも¥1,300で、連日大混雑。この界隈で結構な有名店となり、某雑誌の表紙も飾るまでになった。
そして、こうも言った
「個人店で安売りを売りにしている店って、それまでの自分の経験とか修行とか、それまで学んだ努力を安売りしている訳ですよね?プライドも何も無いんですかね?」
本当それな。頷きすぎて顎がブラジルに飛び出たわ。

海外で見た飲食

シンガポールに住んでいた頃、「ホーカー」という所によく行っていた。
まあ、屋外形のフードコートで屋根はあるが、エアコンは無い。
水もないので自分でペットボトル等を買う。サービス料も払わないので愛想もない。でも安い。
例えば日本人に人気のチキンライス、有名な天天という店なんかだと、
中サイズで5$、大サイズで7.7$、シンガポールドルなので、中サイズは¥400、大サイズでも¥600位。男性なら大だろうし、色々食べたい場合は小か中を頼んで、他のストールで何かを買う。
食器はプラスチックの「やっすいやつ」だし、自分で運ぶ。エアコンは無いので、なんせ暑いうえ、テーブルは結構汚い事もある。

食器の回収はオレンジの服を着ている清掃員がバケツに「ドカドカ!」っと入れたり、ワゴンに乗せたり。場所によってはセルフで片付ける場所があったり。ドリンクを買うので、ドリンクを含めれば、最低でも$6~$7=約¥500〜¥600が最低ライン、普通に食えば¥700は越えるだろう。

これが普通の店舗となると、話が変わる。
もちろん、ファーストフードなどのセルフ業態はサービス料不要だが、
サーブしてくれる店舗の場合、ほぼ全ての店でサービス料がかかる。
もちろん、基本の価格も割高になるのは言うまでもない。
メニューの横に ++ や +++ と記載されているお店では、
++ = サービス料10%+GST7%がかかる
+++=サービス料10%+GST7%+税金1%がかかる。
「物価が高いシンガポールならでは」という訳ではなく、これがタイに行っても同じ様に、ドアがあって冷房がかかっていれば、サービス料若しくはチップが必要とされる。

日本はどうだろう。
消費者の誰もが、自宅でエアコンも水道も無料で使用しているならば、理解出来なくも無いが、飲食店に入った途端にそれらは「無料」になってしまう。一時、某シェフの店で水が有料しかなかったと騒がれた事があったが、それも店の考えだし、嫌ならば行かなければ良い。それだけである。

外食を使い分ける

この様に、他国では価格に差がある事で、顧客側は使い分けをする。
あまりお金をかけたく無い場合、お金がない場合はホーカーで済ませる事が多く、どうしてもこの店のこれが食べたい!という時は目当てのレストランへ行く。これって普通だし、凄くわかりやすいと思う。
日本もこれで良いと思うんだよね。
いっそ道路使用許可も昔に戻し、屋台を大量に出せる様になると良い。安い店はそれでやれば良い。

今の日本ではマックなどのファーストフードと街中の料理店の差がない。
これはオカシイ。
ホーカーみたいな外で食べる物、安売りは大手チェーンの牛丼などに任せてしまい、個人の飲食店はランチでも¥1,200とか¥1,500とかを最低ラインにしようよ。

間違いなく日本の飲食は世界一なんだが、このままでは無くなってしまうよ。

誰もが美味しいものを食べる為に、誰かが犠牲になっている

飲食店ってブラックの代名詞。長時間労働で給与も良くない。
結果、求人大変だよね。
俺もそう、銀座キャンドルをやらない理由、一番は求人。
「SALON1950」の料理人が実家の都合でやめる話が出た時、求人か。。。と真っ先にそれが頭をよぎった。掲載無料なんてサイトもあるけど、まず来ない。見つけられないくらい小さい募集記事がサイトのず〜〜〜〜〜っと下の方に掲載されたって、誰も辿り着かない。
結局は資金力ありき。
自分一人でやろうか?なんて事も考えた。キャンドルを望んでくれている人は沢山いるから。でも、同じ事を死ぬまで続けれるかな?って考えたら、やはり一人でやるっていうのは楽しそうじゃない。
だからやめた。

知名度があってもなくても、この単価の飲食ってやっぱりきついし、この単価じゃないとお客さんが来ないのであれば、職人ビジネスは楽しくない。
結局は飲食人の犠牲の上で成り立っているのが、日本の低単価飲食。
時代が変わり、働き方は多様化して、日本人はそんな環境で働かなくなった。だからこの数年でマクドナルドやコンビニなどでは大勢海外の方が働いているよね。
ヘタな日本人よりよほどちゃんと働くだろう。
アメリカでラーメン店やれば、単価1,500円とか2,000円は珍しくない。
ラーメンに限らず$10以下の店なんてほぼない。
人件費が高い?原価が高い?いや、そんな事ない。つまり、日本の飲食は儲かりにくいという事。

飲食店は一斉に値上げするべき

牛丼など、安売り業態は安売りで良いんだけど、個人店はもっと強気に全員が値上げするべきだと思う。もちろん、消費者からすれば安いのは嬉しいけど、このままじゃ日本の飲食がダメになるよ。お金払えないならコンビニでも牛丼でも立ち食いそばでも食べれば良い。それ位強気に飲食全体がならないと「1円でも安い所を求める客」は変わらない。というか、いなくならない。
一斉にする必要もある。だって、安い所に客は流れるから、ちょっと高単価なやつやっても難しいんだもん。
飲食店単価向上委員会が欲しい位。
きちんと利益が出る様な飲食店ならば、バカッターあげる様なお馬鹿ちゃんも雇用しないで良くなるだろうね。
そして、個人店がバンバン伸びていかないと、美味しさのブラッシュアップが出来なくなってしまうよ。
でね、ランチでそんな金額を払えない人は、毎日安い店に行くか、自炊をすれば良いよ。
安売り店も嫌だ、でも美味しい料理を食べたい。
だったら自炊しようよ。今時幾らでもレシピは出てくるし、何だって作れるでしょう。
飲食店の1/3から1/2位で原価は収まるよ。
ステーキだってさ、某ステーキ屋で『1g 6,6円!』とか言ってるけど、
100g 660円でしょ?そこそこ良い肉買えるよ。

自分で作って自分で食う、つまり自炊する事で安あがりで、変なクレームとかCPとか言われる飲食店も減る。自炊すれば、調理工程を理解出来るから、飲食店スタッフにも、もっと優しくなれるんじゃないかな?
そんな時間無いとかやめてね、そんな時間を飲食店は使って、あの低価格で提供しているんだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?