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フェノロジーカレンダーとは?

令和5年11月28日
同志社女子大学の麻生美希先生をお招きして、「フェノロジーカレンダーとは?」お話しいただきました。
麻生先生のご専門は「都市計画」。
文化的景観が残るところをどう活用していくか
「地域の人にとっての豊かな生活」を実現するため、
調査、分析して地域の姿を見る。
そして、地域の課題に計画(デザイン)で応える研究をされています。


「フェノロジーカレンダーとは?」

地域の自然と人の営みを表わした生活季節暦。
動物や、植物の生きる周期、自然と人の営みをカレンダーに掲載したもの。特に、農業や漁業は、どの時期に何をするかが明確にあるので、それらを軸にする方法もある。
エコツーリズム*をやっていく中で、どの時期に何をするのかをまとめたのがフェノロジーカレンダー。


エコツーリズムとは、地域ぐるみで自然環境や歴史文化など、地域固有の魅力を観光客に伝えることにより、その価値や大切さが理解され、保全につながっていくことを目指していく仕組みです。観光客に地域の資源を伝えることによって、地域の住民も自分たちの資源の価値を再認識し、地域の観光のオリジナリティが高まり、活性化させるだけでなく、地域のこのような一連の取り組みによって地域社会そのものが活性化されていくと考えられます。取り組みを進めていくことで、「私が変わる」
自然の美しさ・奥深さに気づき自然を愛する心が芽生え、
地球環境問題や環境保全に関する行動につながっていく「地域が変わる」地域固有の魅力を見直すことで、
地元に自信と誇りを持ち生き生きとした地域になる「そしてみんなが変わる」
私たちの自然や文化を守り未来への遺産として引き継いでいく
活力ある持続的な地域となる
まさに今、私たちが、未来のためにできる取り組みのひとつです。

環境省ホームページ より

「フェノロジーカレンダーに何を記載する?」


▶岩手県二戸市の例

積雪量に注目。気候的なものをふまえながら自然の中で、どういったものが見られるか?観光客に見てほしいではなくて、自分たちの記録。
お正月に何を食べるのか?
郷土料理・保存食・里の恵み(種まき・開花・収穫の時季)に注目。冬の保存食の習慣・山の恵み・漆・などが二戸市の特徴。
国産漆の大半を二戸で作っている。また、アカシア・トチ・広葉樹の花の時季も記載しているのが特徴。

ポイント1 「いつ」体験できるかという情報を記載する


「フェノロジーカレンダーで何ができる?」


ポイント2 暮らしの中に埋もれている資源を共有できる。


当たり前すぎて認識できていないことを共有する。
食などがテーマとなることが多く、子どもからお年寄りまで共有できるので誰でも参加しやすい。
調査するにあたって裏面に特筆すべきこと、食と産業に関わるトピックなどを記載して一つのパンフレットにできる。
ダウンロード出来るようになっている。

▶北海道美瑛町の例
人が、自然に働きかけながら生活・生業を営むことによって形成された景観=文化的景観という
裏側にPRしたいことを書いていると、見え方が身近になる。
地域の魅力とは?
①    自然(気象、地形、湧水、動植物)
リスが庭先に遊びに来る身近な動物。火山がある十勝岳は、標高も高い。
エゾナキウサギ 
十勝岳が噴火した堆積物、そこに水が通る。波状丘陵が見える、美瑛を象徴する川の写真を載せる。

▶佐賀県伊万里市の例 
カブトガニが産卵しにくる場所。
カブトガニは一度つがいになると離れないことから、伊万里の人が結婚する時カブトガニの話をする。伊万里ならではの文化を記載。
②    生活の知恵(郷土料理、年中行事、)
▶美瑛町の例
冬季の保存食が重要。床下に保存する場所がある。畑で作物にシートをかけ、積雪すると野菜が腐らない、保存できる生活の知恵。
ジャガイモを作る時に種芋を越冬させるところから出来た知恵。
冬が長い特徴。
出稼ぎも特徴。スキーのインストラクターや、裂けるチーズ・ソーセージ・トマトジュースの加工場が各字にある。
それらは、冬の暮らしを豊かにしている。
北海道は漬物の種類が多い。ニシン漬け・醤油漬け・小麦粉・パン粉漬け・ありとあらゆるものが保存される。
釣り名人がいて、観光客は「ヤマベ」が食べられないけれど、地元の人は自然を享受している。 

▶伊万里市の例
押し寿司の型がどの家にもある。
鶏の炊き込みご飯、鶏専門店がある。鶏を飼っていて、料理をふるまう
鶏文化。
「いもねえ」サツマイモと古くなった餅をついてたべる。正月明けにつくる。これは、表には出てこない食べ物。
③    歴史・文化
神社の祭礼行事
▶美瑛町の例
秋祭り、秋に種を撒いて目が出る「麦」をお供えする。
▶伊万里市の例
地域によって方言が違う。佐賀藩と鍋島藩の境界で地域の文化が違う。
④    産業(農産物や海産物、特産品、伝統工芸品・・・)
▶美瑛町の例
「美瑛牛乳」美瑛だけで作った牛乳が給食で出てくる。他地域と混ざってない。美瑛だけで加工をしているものがある。
「美瑛豚」ブランド豚は、誇りをもって作っている。
「カルビー」と提携している。ポテトチップスは製造番号で分かる。
種芋を越冬させる、ジャガイモをねかす。芋は寝かした方が美味しくブランドになっている。
⑤    ひと(さまざまな分野の名人や達人)
▶美瑛町の例
芋を作っている名人がいる。

ポイント3 地元の人が語った言葉で作るのが重要!


美瑛一は日本一。品質が高いので世界一になれる。と言う言葉が出てくる。
⑥    景観
美瑛町の特徴的な景観は、緑肥のために植えた草花と波状丘陵。 
景観と産業が結びついている。 
雪の中の動物の足跡の楽しみ方もここならでは。
2月の終わり、スノーバイクで雪の上に炭を撒く。炭を撒くことで早く雪が解ける。

自然・行事などから編集のコンセプトを考える
▶美瑛町の例
美瑛は2月から始まるカレンダー。農家さんの仕事が始まるのが2月。 



調査の仕方
▶美瑛町の例
農業委員会が開催される。委員会には、いろんな地域の人が集まる。そこでワークショップ形式でいろいろ聞く。
お雑煮は、一人ずつ聞くと、色んな地域から開拓に入っているので、ばらばら。和歌山から来た人が多い地域。
男性はあまり料理を作っていないので、地域にお邪魔して代表的エリア地域の人に聞く。
自然に詳しい人などに聞く。
まちの広報にお宝調査始めましたと回覧したが、まったく人も情報も集まらなかった。

▶伊万里市の例
公民館組織がある。公民館を一つ一つ巡って、人に集まってもらって聞き取りをしている。
おもしろいと思った資源は、農家さんならではの食べ方。塩田、塩づくり、
イリコの話、黒米の食べ方、上手く話が聞けないこともあるが、聞きに行くとおもてなししてもらう。

作成のプロセス


地域の人に協力を得る。地域の人が主体になって取り組む。
調査に入った学生は、町史を読んで下調べして、何を調べるか質問票を考え、調査をした。
調査後エクセルでまとめたものから、縦軸のテーマを決めた。
地元の言葉、キーワードを大切にする
タイトルをどうするか?
地域の固有の「自然」と「暮らし」との関係を探る。

フェノロジーカレンダーの活用


観光パンフレットに
▶美瑛町の例
観光客が写真を撮るために、入ってはいけないと知らずに農地に入ってしまうことが多発する。観光ボランティアがパトロールしているが、イタチごっこ。
観光パンフレットに、人の営み情報を入れる。どんな地域かわかってもらうために作ったのがフェノロジーカレンダー。
この地が、どういう苦労をしたのか、その結果の景観というのを見せるのに使われている。
▶二戸市の例
イベント開発 商品開発に活用
この時期に何が食べられて、何が見られるか?
食を楽しむエコツアーが組める。
住民は、観光振興とは距離を置いた方が住みやすい。
暮らすように訪れる滞在スタイル。
▶タイムアウト社の例 「〇〇でしかできない〇〇のこと」
どんな体験ができるのか?企画している。


ポイント4 場所×自然 を掛け合わせるとオリジナルが生まれる


▶北海道の例
神社にお参りする時、境内にエゾリスがいる。
エゾリスとお参りする。と言うように、地元の人が楽しんでいることを外から来たに人にお裾分け。
▶萩市の例
マップにしか落とせない魅力を、生活の中で細かな情報をマップに記し、観光客に楽しんでもらう
食文化をお裾分けする。

▶白川郷の例
観光のためにフェノロジーカレンダーを作るのでなく、白川郷の豊かさをもっと見てほしい発信をしている。
景色の美しさだけでない。Instagramの画像だけでは伝わらない。
豊かさとは何なのか?関係性を発信したいと、飛騨日日新聞を発行する活動をしている。
人が来すぎると、さばききれない。
白川村情報発信の仕方は、地元の人が誇りに思える発信の仕方、村を離れた人にインタビューしている。
パンフレットにも人の顔を載せる、地元の人の顔を載せるようになった。

ポイント5 多賀町の豊かさを発信する=観光客が来るではなく
再確認するもの

地元の方にも喜んでもらえるものに。
地域のこときかせてくださいと。

文化財は固い言葉
調査されると、少子高齢化のご時世に守っていかなければいけないのか、と思われてしまう。
守ることを必ずしも大事にしなくても良いと、確認することがそもそも大事。大切に守っていきたい人が一人でもいればいい。
そういう取り組みになっていければいい。

ワークショップ


観光マップではわからない情報がフェノロジーカレンダーにある。
多賀町は、多賀大社もあり、各字に神社もお寺もある信仰のまち。
家にひとつお地蔵さんがあるのは、珍しい。
フェノロジーカレンダーの
活用方法は、記録として残すもので、作りっぱなしの地域もある。
つくるプロセスも、つくった後もを考えながら出来ると良い。
▶竹富島の例
カレンダーに方言が1個づつある。
家紋・道具の名前などのカレンダーも。
家の瓦が特徴で、シーサーの顔のタオル作っている。

祭が見られる動画QR、写真、信仰のつながりを見せる。 

▶白川郷の例
多賀町では、お正月は、参拝j客でオーバーツーリズムになっている。
尾崎さんは、地元出身。「結いの精神」があり、世代交代するまち、次に回していく慣習がある。
SNSでは伝えたいことが伝わらない。きれいな景観だけでは、人の息遣いが見えない。納得感、地元の琴線に触れるものをフェノロジーカレンダーで作りたい。

これから多賀町のフェノロジーカレンダー作りが始まります。
多賀町の豊かさを発信する=観光客が来るではなく地元のことを再確認することにつながるきっかけとなることを期待しています。
また、地元の方にも喜んでもらえるものを、住人の皆さんと作り上げていく工程を楽しみたいと思いました。

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