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話題のヘルプマークのお話【ヘルプマーク類似グッズトラブルについての考察】

タイトルのトラブルはご存じの方も多いかと思う。

つい先日、仕事で関わりのある事業所で急遽必要となったヘルプマークを役所へ取りに行き、その時のことをInstagramに挙げたばかりの時期だった。旬の話題に便乗したわけではなく、思いがけず時期が重なってしまったのには苦笑した。


COCOLOLA公式Instagramより


私にとっては仕事柄、ヘルプマークとのご縁は深く長い。
ただ、世間一般にまだ浸透されていないということはよく言われており、公共交通機関などで不条理な対応をされてしまったという嘆きをたびたび耳にする。

例えばヘルプマークをつけて優先席に座っていても「若いのに座るな」と怒鳴られたり、帰る場所を見失いほうぼう彷徨っていても誰も気にかけてくれないなど、世間的には「謎のアクセサリー」くらいの認識を脱し切っていないのは事実。

それでも、マークの中に収納されているカードには「困った時の連絡先」や「緊急事態の時の対応方法」などが書かれており、当事者にとっては一人になった時でも不安を和らげてくれるアイテム、場合によってはこれにより命を救われることにもつながる。

特に重要なのが、目に見えにくい障害や病気を抱える人たちである。
私の関わるクライエントはそのような方も多かったので、必要に応じて常備するよう促している。鞄に下げるのが嫌なら鞄の中にしまい込んでいたって良い。必要な時に取り出せば、必ず危機から救われるだろう。先述の公共機関のトラブルなどはそのような一見何も障害もないように見える若者に起きやすい出来事である。



そんなヘルプカードに類似したグッズをCDの特典として利用したのがアーティストの「椎名林檎」。

このトラブルについては説明するまでもないが、SNSを始め批判を受け販売元が対応を協議、CD販売の一時中止とグッズデザインの変更が決められる。
後に販売元会社より改めて「本グッズの製作には椎名林檎は関わっていない」という見解を示した。
この間、椎名本人からの発言などは一切ない(2022.11.3現在)という状況で批判は止むどころかさらに炎上し続けている。


知らないという方は「椎名林檎 ヘルプカード」で検索すれば、あと数年はこのニュースが検索されるであろう。


当然我々福祉業界の間でもこのトラブルは話題になった。
ただ、私も含め比較的淡々と動向をとらえていると感じられる。
大体このような炎上事案は当事者や関係者以外の「部外者」がなぜか勝手に油を注ぐ傾向がある。


今回のトラブルの何がまずかったのか。
もちろん類似商品を出すことで、本来必要としている先述のような方々の「援助」に支障が出るからこそである。

持論にはなるが、今回の批判はよくある炎上要因となりがちな「思想」「権利」などではなく「実害」につながるものである。しかもその実害を受けるのが心身的・社会的にハンディキャップを抱える方々であるということは確かに問題ととらえるべきであろう。

だからこそ、批判を受けた際に一刻も早い対応を求められたが、企業気質ならではの一時的な言い逃れ「対応を協議中」というお知らせから数日間も経過してしまった。
結局ヘルプマーク発案元の東京都などから要望を受けたことにより、上記の対応に至ったわけである。
これらの流れから、「炎上の処理」に労力を費やす一方で日々起こりかねない「実害」への意識が足りなかったという点は否めない


椎名林檎について。
私はファンとまでは言わないけど、どちらかというと好きなアーティストだ。
彼女のように、独創性のある表現力や独自の世界観をパフォーマンスできるアーティストは日本では希少だ。
ここ数年は大晦日番組に出たり五輪の音楽を担当するなど、なんか「ありきたり」になってしまったのは残念だが、彼女の才能は疑うまでもない。


椎名本人が関わったか否かは置いといて、今回のグッズに関しては、おそらく彼女風に奇をてらったというよりも、単にヘルプマークのことをよく知らなかったのだろう。

今更ではあるけど、初めに批判を受けたときに椎名本人が「知らなかった。すぐに変更するね、ゴメン!」と言ってさえくれればそれで終息したと思われるし、「さすが椎名林檎、潔い」とかえってそのイメージが向上したかもしれない。
それを曖昧に収めてしまおうとグズグズ間延びしてしまったのは企業の大人たちの失態と言えるのではないだろうか。

余談ではあるけど現代社会は「イメージ戦略」がとても大事。
一度そのイメージが汚されるとなかなか元さやに戻れないことも多い。
特に著名な立場になった時には「やっかみ」も含め、慎重丁寧かつ迅速に対応が求められる。生きづらい時代には違いない
自分自身も事業を興している立場上、気を緩めずに活動していきたい。



とはいえ、私も含め多くの福祉関係者は本音を言うと「ヘルプマークを知ってもらう良いきっかけになった」とちょっとだけありがたい面も感じている。
冒頭述べた通りヘルプマークは一般の人にとってはまだまだ「未知」のアイテムである。さすがに今回の件によってこれまで以上に多くの人の目にこのマークが映り込んだものと思われる。

まさに「災い転じて福となす」である。

これにより、少なからず「生きづらい世の中」がほんの一部でも和らいでくれればと、妙な気分で期待してしまうのである。



せっかくなので件のアルバム、発売されたら聴いてみたい。
様々な諸事情を抱え込んでしまったが、音楽には罪はない。おそらく素晴らしいアルバムであろう。
これもご縁の一つだ。

そして、いっそのこと椎名林檎が今後ヘルプマークの広告塔になってくれればなお嬉しいなんて、淡い期待(妄想)も抱きつつ、なにより「目に見えない生きづらさ」を抱える人たちの不安が少しでも解消されることを心より願っている。

最後までお読みいただきありがとうございました。皆様のお役に立てるようなコラムを今後も更新してまいります。ご縁がつながれば幸いです。 よろしければサポートお願いいたします。