飯島 隆博(弁護士・NY州弁護士)

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税制適格ストックオプションの権利行使価額に関する通達案を読む

喧々囂々であった信託型ストックオプションや有償ストックオプションに関するQ&Aについてはまた別稿といたしますが、5月29日に国税庁からスタートアップ関係者向けに説明のあった、税制適格ストックオプションの権利行使価額に関する通達案は、これまでの税制適格の権利行使価額の設定からみるとパラダイムシフト的なものといえますので、少し検討してみたいと思います。 (速報的に記載するものであり、正確な内容を踏まえて随時調整をすることをご容赦ください。実際の検討の際には、別途税務アドバイザー等

    • インドでは「政府が」スタートアップ向けコンバーティブル・ノートの転換期限を最長5年から10年まで延ばしたらしい……ってどういうこと?

      日本でも、スタートアップの資金調達として浸透してきた、コンバーティブル・エクイティ/ノート(ボンド)。 むしろ、日本におけるシード期のスタートアップの資金調達手法としては、一般名称的な「コンバーティブル・エクイティ」(株式=エクイティに転換できる証券)よりも、Coral Capitalさんがひな形を提示している、日本法の下で新株予約権の方式により設計された「J-KISS」という名称の方が浸透しているかもしれません。 (経済産業省はコンバーティブル・エクイティ/ノート(ボン

      • 「ストック・オプションを発行しているけれど、M&Aで買収されるときどうしよう」―(2)時価発行型有償ストック・オプション/信託型ストック・オプション

        (1)税制適格ストック・オプションとM&Aについてはこちら。 2.(時価発行型)有償ストック・オプションSOの発行時に、その時価(オプション・バリュー)を払い込む、いわゆる時価発行型有償ストック・オプションは、その成り立ちからして、税制適格のデメリット・限界を乗り越えようという側面も持っているものです。そのため、M&Aの場合には比較的シンプル・有利な課税上の取り扱いを受けられるのが通常と思われます。 (1)ストック・オプションの行使時(株式の取得時) すなわち、まずSO

        • 「ストック・オプションを発行しているけれど、M&Aで買収されるときどうしよう」―(1)税制適格

          新株予約権を用いたスタートアップの役職員・外部協力者向けのインセンティブである、ストック・オプション(SO)は、現在よく使われている類型として、税制適格ストック・オプションや、時価発行型有償ストック・オプション、いわゆる信託型ストック・オプションといったものがあるかと思います。 いずれも、スタートアップが成長してIPOをするのであれば、特段の問題はなく、行使条件を満たせば、粛々と行使してもらって(信託型ストック・オプションの場合はその前に具体的に役職員に交付するプロセスが入

        税制適格ストックオプションの権利行使価額に関する通達案を読む

          「優先株式のメリット」は、ストック・オプションにおいて活用されているのか?―(2)実例編

          「いわゆる『優先株式のメリット』は、ストック・オプションにおいて活用されているのか?」という点について、(1)理論編は、こちら。 普通株式と、優先株式の価格差が、役職員向け税制適格ストック・オプション(と思われるもの)について、活用されているのか、という点についての実例の確認です。 先に結論を申し上げておきますと、ざっくり、以下のような感じかと思っております。 普通株式と優先株式の価格差を用いて、税制適格ストック・オプションの行使価額を適正に下げて、役職員に対するイン

          「優先株式のメリット」は、ストック・オプションにおいて活用されているのか?―(2)実例編

          「優先株式のメリット」は、ストック・オプションにおいて活用されているのか?―(1)理論編

          以前、Coral Capitalブログで、justInCase代表の畑さんが、2021年12月に上場した企業32社のストック・オプションについて調査した結果を公表されておられました。IPO時の発行率に加えて、行使価額の多寡をもとにしたSO価値率についてもまとめておられ、専門家を含めてスタートアップの資本政策について検討される方にとって実態を知るための貴重な資料になると思い、私も大変勉強させていただきました。 データを見ていて、ふと、スタートアップの資本政策、特に優先株式によ

          「優先株式のメリット」は、ストック・オプションにおいて活用されているのか?―(1)理論編